トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ291号目次

平成八年春山合宿 苗場山及び剱岳周辺
その4 剱岳をバックに山スキー隊

山行日 1996年5月3日~6日
メンバー (L)箭内、山沢、飯島、渋谷

 【渋谷】
 5月2日夜、9時55分の急行加賀にて、翌朝5時48分に富山に到着。6時17分の富山地鉄の急行で立山まで。ここまではまず順調。しかしここから美女平までの立山ケーブルがなんと4時間待ち。さすがに連休は人でいっぱいなのでした。
 ドピーカンの天気の中、ロータリーわきに銀マットをひいてひたすら待つしかない。そこで山沢さんが山菜探しを決断。頷き後について行く私たち。橋を渡りちょっと入った裏山?でコゴミをとってくれました。・・・・とそこへ地元のおじさん通りかかる。ハイ、おじさんにズーム。「何がとれたんですかぁ。」「すごーい。」「少しあげるよ。」「ありがとうございます。」「どこから来たの?」「東京です。」「そうかそうか、じゃこれも持っていきなさい。」というわけで私たちの手には袋いっぱいのコゴミとオマケにふきのとうまで握られていたのでした。だから富山の人って好き。このケーブルを待つ長~い時間の間に、別所さん、中村さん、松谷さんの3人に嬉しい遭遇もしたのでした。
 やっと11時20分発のケーブルに乗り、高原バスに乗り継いで室堂へやっと到着。待ち時間が長すぎて観光気分になっていたけれど、とり敢えず今日はテント場予定の剣沢小屋までたどりつかねば・・・・。雷鳥沢を登り、別山乗越の剣御前小屋へ着いたのがすでに4時。もう一息の下りは荷物を背負っているからと、雪がバリバリに凍っていたのとで、かなりつっぱりながらの膝の痛ーい滑りとなりました。剣沢小屋前の幕場4時半着で、疲れないけど長い1日に幕。

 【箭内】
 5月4日(土) 快晴
 5時起床。7時出発。テルモスに熱い紅茶を入れ、剣沢を登っていった。シールは良くきくし天気も良い。快調に進み、40分程で別山乗越に着いた。今日のメインディッシュは真砂沢だ。雪がクラストしているとせっかくの滑りが楽しくないので剣御前小屋で時間調整のため小休止。缶ビールをとりあえず購入する。
 10時滑走開始を想定し8時30分頃小屋を出発。稜線に沿い別山を目指す。稜線には雪がついていないのでスキー板はリュックに付けて行った。2800メートルあたりまで登ると別山の頂上を捲くトラバース路があったのでそこを進んだ。雪がなく、これは楽だ、頂上まで登らなくて得をしたと思ったら、急峻な谷に雪がついている場所を通過しなくてはならなくなった。飯島さんが先頭で行くが、滑落したら、露出した岩にあたり血だらけになり数百メートル落ちていくのかと想像したら怖くなった。おまけに最後は下降しなければならない箇所があり、はいつくばる様に下りていった。アイゼン、ピッケルなし、その上、板をかついでいたのでヒヤヒヤものだった。風が全然なかったのでその分安心して行動できてよかった。
 別山と真砂岳のコルには9時50分到着。予定通りだ。先行パーティーが5~6人居た。やはり真砂沢は人気ルートの一つなのだなと思った。早速シールをはずし、期待に胸を弾ませて真砂沢に滑り込んで行った。(板をつけたままシールをはずしている写真が雑誌にのっていた。かっこいい!と思い、ためしてみたらすこぶる簡単にはずせた。誰でもできることが分かった。)最初は急傾斜のため斜滑降。あとは自由自在。想像以上に雪質が良く、ザラメ状態。いやはや楽しいの何のって、気分爽快。山沢さん、渋谷さん、飯島さん、そして箭内も自分の思い思いのシュプールを描き、快調かつ豪快に滑っていった。どうだ見てくれこの滑りといった気分だった。やっぱり立山剱に来てよかったとしみじみ思ってしまった。
 真砂岳のコル高度2750メートルから剱沢出合1750メートルの高度差1000メートルの大滑降。あんまり楽しいので、早く出合に着いてしまうのはもったいないので、途中でコーヒーブレイク。枝沢の上にデブリが積もったような雪穴がボツボツとあいている上でガスコンロを取り出した。山沢さんが「そこはあぶないからこっちに来てやってください!」と言っているのを無視してコンロを組み立てようとしたら、部品が指先からポロッと落ち、そのまま雪の穴の中にころがっていってしまった。掘って探したがとうとう見つからずじまい。山沢さんの助言を素直に聞いていればよかったとしみじみ反省。結局コーヒーはなし。テルモスの紅茶を飲むことにした。
 さて、沢も下部になるとやや狭くなり両岸が迫ってくるようになった。部分的にデブリの跡や木の枝が散在するようになってきたなと思ったら剣沢との出合いであった。いやはや満足、満足!
 出合いで三峰のテントを探したら田代さんが一人、のんびりとテント番をしていた。「ヤァーヤァー、ドーモ、ドーモ」でお茶などご馳走になり、ゆったりと気分になったところでテン場まで剱沢を登り返した。思いのほか遠いなと感じてしまったのは、楽しい思いをした後だからなのか。剣沢小屋の幕場に着くと、ほどなく「たしかに」の朝岡さんがひょっこり顔を出した。元気に山を楽しんでいるようだった。
 夕方から八ツ峰に行ってきたという別所さんのテントで大宴会。別所さんにビールおいしいつまみをたらふくごちになった。満腹、満腹。

 【山沢】
 2日目夜は、剱岳・八ツ峰を踏破してきた別所さんたち3人、真砂沢を滑ってきた我々4人、そして特別参加の朝岡さんたち2人の9人が別所さんのテントに入り、前日いただいたコゴミで山菜パーティーとなり、大宴会で幕を閉じた。

 5月5日、夜中、雪が降りだし風が強くなる。雪が頭を圧迫してきてなかなか眠れない。
 朝5時起床、グズグズしていると箭内リーダーが6時の交信でゲンさんに、今日は停滞の予定、と告げている。ゲンさん隊はハシゴ谷乗越はナダレの危険があるので、剱沢を上がってこちらの方へ向かってくるとのこと。テントへ声をかけてもらうよう約束して交信を終えた。
 ゆっくり朝食を摂っていると、今日帰る別所さんたちから、お先にと声がかかる。次に朝岡さんからも声がかかった。テント内にいると滴はポタポタ、銀マットのうえに水たまり、外は吹雪。我慢に我慢を重ねていたが、ほとんどのテントは撤収したみたいなのでテントから出てシャベルを持ってトイレに行く。30~40センチは積もっていた。雪の上を歩くと踏み跡にちょっとハイマツがのぞく、そこにすかさず雷鳥が食事にくる、雷鳥さんと1メートル位の距離で仲良くなった、まゆげが真っ赤でなかなかハンサムである。それでは・・・・とサービスしてシャベルで雪をかきハイマツをのぞかせてあげた。我々も雷鳥沢のテント場に移動することになり、ゲンさん隊を待つこととなった。10時頃、そろそろかなと出てみると、下から6人登ってくる、モートーコール、さっそく答えあり、遅れて1人、7人そろう。7人が剣沢小屋で休んでいる間にテント撤収、スキーにシールをつけて剣御前小屋へ向かった。小屋で休んでいるとゲンさん隊追いつき雷鳥沢を下っていった。
 我々は箭内リーダーのおつな采配で、明日朝雷鳥沢の新雪を滑ろうということになり、そのまま小屋泊まりとなった。
 小屋はありがたい、乾燥室がありビショビショのシールや雨具をみんな乾かせる。おまけに談話室に暖かくはないがコタツもあり、山岳雑誌・写真・マンガと思い思いにのんびりし、今日は休養日となった。
 思いは明日の御山谷、しかし風雪はますます強くなり、窓がアッというまに全部埋まってしまった。そして窓ガラスは曇りガラスのはずが、キラキラと結晶をつけた花柄模様に早変わり、テレビ(何とテレビがつくのです)では天気の回復は明日昼過ぎと言っている。フカフカフトンに寝ていながら、このまま小屋に閉じ込められる夢をみていた。

 【飯島】
 5月6日 第4日目
 昨夜からの風雪は今日午前中まで残る予報であった。目が覚めてからの外の様子は耳で聞く限り昨夜と変わらず風雪強しの状況に思えた。朝メシを食べ終えまじめに外の様子をうかがうと風は強いものの青空が見える。箭内リーダーさっそく小屋の人に情報を仕入れる。30cmの降雪、雷鳥沢を下るのは危険とのこと、尾根状の地点を下降とのアドバイスを得る。7:05出発する。まず小屋を出て雷鳥沢を真下に見て、右へ200m程度のトラバースをして尾根状の起点に向かう。この部分なかなか傾斜があり転倒したりすると真逆さま、どうなるかわかったものではない。緊張の中リーダーが行く。そして次々に飛行機が飛び立つように出て行く。ビデオに撮影したらいい所であるが、そんな余裕もなく安全地帯に逃げ込む。
 全員揃ってから、おもいおもいに下降する。雪質は新雪で時々足をとられたり、時折ガスもかかるが特に問題なく下に降り立つ。下降点はテントサイトをややそらし一ノ越方面に向かう地点とした。下は風もなく穏やかで陽射しも出てくる。シールをつけ一ノ越を目指す。高度を上げるにしたがい風が強くなり、稜線間近の数百米はクラストしていた。我々はなんとか小屋に逃げ込み一服つける。この時、「ラブ」を実践する箭内氏自宅にTELする。お茶を飲みつつ、あとはすべるだけナドと考える。
 御山谷の滑降は春の陽射しの中、なかなかであった。上部快適、下部ベタ雪で、途中お茶timeを入れ、黒四ダムまで楽しんだ。

 行動概要
 5:00起床
 7:00小屋出
 7:30雷鳥沢へ降りる
 7:50再び一ノ越へ歩きだす
 9:30一ノ越
 9:50
 11:50黒四ダム着
 13:00トロリー着

 東京帰りは20時~21時。途中薬師の湯に立ち寄った。

追記
 バーナーについては個人の好み等あるようであるが私個人としてはガスバーナーが好きだ。軽い、簡単、強力であるのが頼もしい。
 ちなみに5月のガス消費量2人で230g2日で1本が目安でしょう。


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ291号目次