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白神岳転じて、いきあたりばったり温泉&スキー旅行
田代 昭夫

山行日 1996年3月17日~20日
メンバー (L)田代、江村(皦)、飯塚、高木(敦)、山沢

 3月16日(土) 曇り
 一路、東北道目指し荻窪駅を22時30分に出発。週間予報によると天気は下り坂である。

 3月17日(日) 雨
 十和田ICより能代を通り日本海に出る。朝飯、朝キジをしに能代駅に寄るが以前やってためし屋が休みだった。八森にて朝から営業している魚屋兼寿司屋を見つけて入る。イカ丼800円を食べ満足して黒崎に向かう。
 ちなみにイカ丼800円の内容は、どんぶり飯の上に甘めに味付けした塩辛状?のイカがたっぷり乗っており、その上に卵の黄身が乗っかり海苔がふりかかっているものであった。更におまけとして茶碗蒸し、イカの塩辛、みそ汁、おしんこがしっかり付いているのである。寝不足気味で朝から食べるにはボリュームがあり過ぎるが旨かった。
 10時、黒崎より林道に入るがすぐ雪のため通行不能になる。今日の予定を検討するが天気の状態が悪い。予報によると今日、明日は、前線の通過に伴い海、山共に大荒れのもよう。大雨・洪水・強風・波浪・融雪・雪崩注意報がでている。ようするに、どうしようもないのである。一人下山して来たので様子を聞くが稜線は風が強く、立っていられないぐらいとのこと。そうこうしていると激しい雨が降ってきて車に逃げ込む。快適なブナ林の中のスキー山行の予定が、初日から雨にうたれてずぶ濡れになるのもどうしたものか?予定の日数はまだあるし・・・・・。遥々東京から700キロも走ってきて諦めきれずにいると、誰とはなしに去年の笹内川のおり泊まった十二湖温泉の話が出てきた。もうこうなると気分は温泉マーク一色である。結局、海岸線を昼までうろついてから貸切り状態の十二湖温泉の大広間にてやけ酒を飲みながら昼寝の時間となってしまった。

 3月18日(月) 曇り
 ふとんにもぐり込んだまま天気予報を聞き、諦めてまた寝てしまった。朝からしっかり風呂に入り、8時に旅館を出て、とりあえず五能線松神駅の待合室を占領して朝飯のラーメンを食べる。目の前に日本海が見えるが、シケ状態で白波が立っている。かすかに見える山の方は昨夜の雪で真っ白になっている。今日の天気もこれから夜にかけ荒れるらしい。
 結局今回の白神岳は諦め、次の予定の乳頭山に行くことにする。時折青空が戻ってきて気持ちが揺れるが白神岳方面にはどんよりした雲がかかっている。米代川も濁流となっており、だいぶ雪代が入っているようだ。途中、阿仁のマタギナガサの工房(鍛冶屋?)を見学させてもらった。現在もマタギをやっているという主人の話を聞き、一同とりあえず感心する。

 ○マタギ山刀(小)¥17,000
(大)¥24,000

  (カスタムナイフメーカーの相田義人氏のデザインらしい)

 ○マタギナガサ  ¥20,000~¥30,000
  (サイズによる)

 いずれも切れ味が鋭く手にしただけで、人が変わりそうである。何でも、ビートたけしから撮影用に注文があったが、ふざけた人間には譲りたくないということで断ったらしい。
※それぞれ注文してから3ヶ月位かかるらしい。
 (西根打刃 0186-22-2207)

 昼には田沢湖スキー場のゲレンデスキーヤーと化したが、強風の為リフトが1本しか運転していなかった。2~3本滑っただけで、寒くて早々に退散し、孫六温泉に向かう。(今年から黒湯も通年営業するらしい?とのウワサを聞いていたが、やっぱり営業してなかった。)
 乳頭温泉には、鶴野湯・妙の湯・大釜の湯・蟹湯・黒湯・孫六湯とあるが、黒湯と孫六湯以外は車で簡単に行ける為スキー客や観光客が多いようだ。建物も温泉ホテル風の立派な物になっており、一昔前の雰囲気はなくなってしまったようだ。黒湯と孫六湯だけは僅かに昔の湯治場の雰囲気を残している。これも近い将来カタカナ名のホテルに替わり、厚顔無恥なわがままオババと黄色い声のキンキラネーチャンがあふれるのかと思うと・・・・・・。
 田沢湖高原国民休暇村の駐車場に車を置き、30分で孫六に着いた。早速テントを張り明日の天候回復を祈って、飲みだす。やっぱり畳の上より雪景色の中、天幕で飲む酒の方が旨い。今までの鬱憤を晴らすかのように、各自メートルを上げ酒をほとんど飲み尽くしてからシュラフにもぐりこんだ。

 3月19日(火) 晴れ
 夕べのお祈りが効いたのか、天気はバッチリである。・・・・が、頭がガンガンする。今日はこのまま孫六停滞かと思ったが、後で何を言われるか分らないのでやっとシュラフから這い出る。
 9時30分、目の前の尾根よりシールをつけて取りつくが、けっこう急登である。おまけにクラストしている上に昨晩の新雪が10センチ位積もっているため、ズルズルと横滑りしてなかなか登れない。アリ地獄にはまったアリのようである。とうとう力尽きて沢にズリ落ちる者、木に捕まったままコアラ状態の者、スキーを脱ぎだす者など最初から先が思いやられる状態である。何だかんだと取り付きより100メートル位登るのに、1時間掛かってしまった。あとはブナ林の中をゆったりと登るだけなのだが、私だけは胃がむかつき、こみ上げてくる物を堪えながら登るが、時折黒湯から流れてくる硫黄の臭いも手伝って何度か吐いてしまった。
 田代平に出ると、樹氷原の向こうになだらかな山容の乳頭山が目前に広がっている。上部はテカテカと光っておりアイスバーン状態である。乳頭山の正式名は烏帽子岳らしいが、どちらに見えるかは個人の感性に任せるとして、私は乳頭山の方が好きだ。田代岱山荘にて昼食を兼ね一本取る。小屋は2年前に建て替えしたばかりで、まだ新しく快適だった。
 12時30分、小屋より真正面のピークを目指して歩きだす。この頃より風が強くなり地吹雪状態となる。手前の小ピークで様子を伺うが風はおさまりそうになく、斜面はアイスバーンと化しているため登りは何とかなるが、下りが心配である。特にテレマークには辛そうなので、乳頭山をバックに記念撮影をして下山することにする。
 あとは、滑り降りるだけである。見事なブナ林の中を縫って各自思い思いに滑る、気分爽快である。もったいないから休み休み滑るが、さすがに下りは速く30分位で孫六に着いてしまった。苦労した取り付きの急登はあっと言う間だった。下界は穏やかな小春日和と言う感じで昼寝するには最高である。あとはやることもないので、女性陣は孫六温泉を偵察に、おじさん2名はテントで残り少ないアルコールを摂取しながら、しばしボーッとする。
 しばらくして戻ってきた孫六温泉偵察隊の報告をもとに全員で鋭意検討した結果、最後の夜は温泉に浸かって布団で寝たいとの意見のもとに、あえなく撤収して孫六の湯治場になだれ込んでしまった。その後はいつものように残った行動食とつまみを消費すべく、酒とビールを仕入れ、最後の宴に突入していった。

 3月20日(水) 快晴
 8時、孫六温泉より帰途につく。46号線より仙岩トンネルを抜け一路盛岡ICを目指す。途中やけくそぎみに鷲宿温泉に寄り、だめ押しの露天風呂に浸かりさっぱりする。盛岡IC手前の国道沿いの焼肉屋に入り盛岡名物焼肉と冷麺にて今回の山行!?もとい温泉旅行の締めくくりをしっかりやってから東北道にて帰途についた。帰りの車中より見え隠れする東北の山々は、まだ雪をかぶり真っ白である。今年は例年より遅くまでスキーが楽しめそうである。

 今回の不甲斐ない山行は、天候の影響もさることながら目前の温泉の魔力に打ち勝てなかった、リーダー及びメンバー全員の軟弱な精神に帰するものが大であった。やっぱり山行初日より温泉に泊まると、ふやけてしまって歯止めが効かなくなってしまうのだ。反省・・・・。


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