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七色に燃える山
-初めての安達太良山行-
尾崎 秀朗

山行日 1996年10月19日~20日
メンバー (L)田原、(尾崎)、他4名

 夜露で草木が濡れる朝、僕は奥岳のゴンドラリフト乗場にいた。安達太良山に向かう為である。僕にとっては初めての秋山だ。山頂はどんな色づきを見せているのだろうか?期待に胸を膨らませてゴンドラに乗り込んだ。
 と、その瞬間・・・強烈な臭いが僕を襲った。「酒くせ~え!!」・・・・全身に軽い痙攣を覚えた。そう、隣のおじさんである。白い髭、愛くるしい眼差し、そして手にはペンキの痕。
 僕らが奥岳に着いたのは昨夜の11時であった。テントの設営が終わると、晩餐が始まった。豪華な鍋である。鍋を用意してくれたのは田原のおかあさんである。寒空には心身共にあたたまる。晩餐中、浜田山商店会の鈴木さんは自慢のカメラで撮りまくる。モデルがいいのであろう。宮川さん、小川さん、そして僕。・・・とにかく楽しい一時を過ごす事ができた。ところでこの晩、隣のおじさんはお酒を飲むことが仕事であるかのようにその特技を披露し続けた。僕らが寝床に就いた後もお酒を飲み続けており、しかたなく僕は彼が奏でる「ヨーデル」を枕詞に眠りにつくはめになった。
 ゴンドラが発車すると、辺り一面の世界が変わった。草木が色づき、僕らを輝かしく迎えてくれる。ああ、なんと見事な色の競演。僕は興奮を隠せずにいた。しかし、ゴンドラは無情にもその場から立ち過ぎていく。
 外に出ると小雨が降っていた。帽子を目深にかぶり山頂を目指す。間近に見る紅葉に感動していると雨があられに変わってきた。僕は寒いのが苦手だ。日頃の行いを省みつつ、耐えた・・・・・。
 山頂付近は岩場になっており、岩陰には少し雪が積もっている。そしてついに山頂へ到着した。感動、感動、でも寒い。鈴木カメラマンの下、記念撮影。「1+1=に~」・・・・。
 下りはくろがね小屋を目指す。途中の景色も素晴らしく、幾度となく立ち止まり見入った。小屋に着くとおじさんお勧めの温泉にすぐに入った。小屋の集会場が混雑していたのに比べ、浴場がガラガラで貸し切り状態であったのには驚いた。温泉に存在はあまり知られていないようだ。さすがはおじさんである。だてに山岳会の会長はしていない。
 温泉は硫黄泉で湯の花が香ばしい。おじさんはというとここでもやはり一杯。ヨーデルが聞こえてくる。ご機嫌な時はこれである。
 小屋を出る頃には晴天となり、安達太良山は一段と輝きを増した。気が付くと二人の女性が同行している。実は山小屋でおじさんがナンパしたのであった。「一緒にきのこ採らない?」はたしてきのこは採れるのであろうか?山道を少し外れて、きのこ狩りに向かう。旧道で最近人が歩いた形跡がない為、やぶがひどくて顔、お尻にむちが入る。とても痛いです。許してください・・・・。不安を覚えながらも付いて行くと、「あった、きのこだ」そこにはひとつまみのシメジが自生していた。ビニール袋に大事にしまう。しかし、それっきりであった。シメジの土瓶蒸しもいいかもね・・・・。
 その後無事に下山し、東北自動車道で家路に向かう。おじさんはお酒を大事に抱え、静かに眠っていた。おつかれさま。


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