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編集後記

 このところ毎年、賑わいの去った初秋の山へくるまで遠出しているが、今年は山陰の山をいくつか登ってきた。
 大山、蒜山、三瓶山、吾妻山、氷ノ山などを廻ったのだが、今回の山旅には、実は、もうひとつの重要なテーマがあった。
 それは何かというと、『妖怪』なんですね。今年の2月に安達多良に登って以来、わたしはすっかり妖怪にハマッてしまったのです。山陰を選んだのも、境港の『水木しげるロード』に並んでいる数十体の妖怪ブロンズ象を見に行きたかったからなのであります。イヤ~、興奮しましたね。水木しげるのゲゲゲの鬼太郎や妖怪画に登場する妖怪たちは、殆どがフォークロアに取材したもので、その姿形も伝統的な資料、例えば江戸時代に描かれた妖怪百科、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』などに登場するもののアレンジが結構ある。そうした、これまで絵画でしか具象化されていなかった妖怪たちが立体像として出現したのだから、にわか妖怪オタクとしては見に行かないわけにはいかないではないか。その日はたまたま日曜日であったので、子供連れやらアベックやらがゾロゾロいて、一体一体写真を撮るのに苦労したが、始めから終わりまで全部二度見てから、少し離れた水木しげるの実家も探しあてるなりして、水木ワールドのベースとなった土地を少々垣間見てきたのでありました。
 妖怪に関しては、もうひとつ収穫があった。江戸時代に書かれた実録本『稲生物怪録絵巻(いのうもののけろくえまき)』は、妖怪本の傑作中の傑作だと思うが、その舞台である広島県の三次市と(石碑がある)、その著者稲生武太夫(いのうぶだゆう)が妖怪の総大将山ン本五郎左衛門からもらった小鎚と彼の墓がある広島市の國前寺も訪ねてきた。三次市では同市教育委員会が今年1月に発行した稲生物怪録の研究書を、また國前寺でも独自に出版した研究本を入手することができ、大満足であった。ちなみに、『稲生物怪録絵巻』は現在小学館から出版されています。

(服部)

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