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集中山行 上越朝日岳
その2 大源太川北沢本谷~丸ノ沢左俣~朝日岳
金子 隆雄

山行日 1996年9月14日~16日
メンバー (L)金子、水田

14日(土) くもり後雨
 越後湯沢からタクシーにて林道終点まで入るつもりでいたが、運転手が道をよく知らないらしく大源太橋で降りたが林道終点まではほんの少しだった。
 入渓点まで登山道をしばらく歩くことになるが雨上がりで靴がびしょ濡れになるので渓流タビに履き替えて行く。登山道が二度目に沢を横切る地点から溯行を開始する。
 今年の大雪のせいか流木が堆積して汚い感じで水量も少ない。3mの滝を左岸よりへつって越えると七ツ小屋裏沢が左岸より出合う。ここで二人の釣師に会う。迷惑をかけないようにそっと追い越す。小滝群をシャワークライムで越えていくとやがて沢は右に大きく曲がり12mの滝が現れる。問題無く右側から越えてしばらく行くと三俣となる。正面は見晴台ノ沢、右は30mの滝を出合いに架ける七ツ小屋沢、本谷は10mと15mの滝を落として左より出合う。
 右のリッジを慎重に登って薮に突入しトラバースして沢床に降りるが、リッジは外傾しておりなかなかいやらしい。後ろからお助けコールがかかりお助け紐を出す。続く7mチムニー滝はシャワークライムを嫌って右から簡単な高捲きで越える。続く6mの斜めになったナメ滝は左の水際を登るがヌルヌルで滑りやすい。水流の中なら滑らないだろうと思ったが水の中も滑るので慎重に越える。
 午前中なんとかもちこたえた天気も崩れだして雨となる。右岸より涸れ沢が合流してくる所で行動を打ち切り泊りの準備にかかる。この沢は河原がまったくないので幕営するのに適した場所はない。わずかなスペースに半分はみ出しながらも1~2人用のテントを張る。火を起こし一杯やっていると本降りとなってきたのでテントに逃げ込む。ここは中州のような場所なので増水したらひとたまりもないが、かなり上流まで来ているのでそれほど心配もせずに寝てしまう。

〈コースタイム〉
入渓点(10:30) → 七ツ小屋裏沢出合(11:00) → 三俣(12:20) → B・P(13:20)

15日(日) 晴れたりくもったり
 昨日からの雨は朝には止んでいたがまだガスがかかっている。今日は長丁場なので気合を入れて6時少し過ぎに出発する。
 3段15mの滝は、1段目、2段目を簡単に越えて最上段は途中まで登って左のブッシュ帯に一旦上がる。そこから落口へトラバースしようと思っていたが、我相棒はこんなとこ行くのぜったぁ~い嫌だとのたまうので止む無くそのままブッシュ帯を高捲こうとしたが、岩壁に阻まれて上へ上へと追い上げられてしまうので元の所に戻る。ザイルを出してトラバースして滝の落口を対岸へ渡る。ザイルに引かれてやって来た相棒から出た言葉は「どうってことなったすね」だって。
 この先は問題となる所もなく水が涸れると草付きのスラブとなる。左のヤスケ尾根に上がって登山道を5分くらいで大源太山へ着く。
 下降する大畠ノ沢を確認後、七ツ小屋山へ続く登山道を下り見晴台手前の最低コルより大畠ノ沢へ下る。この沢は薮に覆われた涸れ沢で出合いに着くまで水は流れていなかった。単調な下降に嫌気がさしてきたころ出合いに着く。我相棒は少々バテぎみで遅れるようになってきた。
 北ノ沢を下降すること10分くらいで丸ノ沢出合いに出る。しばらく平凡な流れを行くと釜を持った5mの滝の前で釣師に会う。足音を立てないで近づいてしまったのでずいぶんと驚かせてしまったようだ。この滝を右から越すとゴルジュとなり中には滝が三つほどあり直登は無理なので左岸から高捲いて20mの懸垂で沢床へ戻る。左岸のガレを過ぎると右俣が出合う。右俣は水量が極端に少なく苔むしている。
 右俣出合いから小ゴルジュとなり3段9m滝は右俣側から越える。小滝をいくつか問題なく越えていくと左俣が出合う。当初の計画では本谷を溯行することにしていたが、相棒がバテバテでついに泣きが入ってしまい短くて易しい左俣にルート変更する。それでも今日中に稜線に出ないと明日の朝日岳への集合時間に間に合いそうもない。幸いに服部パーティが稜線上にいて無線連絡ができているので、適当なビバーク場所があれば今日の行動を打ち切るつもりで左俣へ入る。
 左俣は滝の連続でビバーク適地はなかなか見つからない。滝は多いが困難なものはなく快適に高度を上げていく。相棒も大休止の後元気を取り戻し、清水峠まで行こうということになり先を急ぐ。水が涸れて薮が両岸から覆いかぶさりトンネル状になってからも忠実に沢形を詰めていくと池塘のある草原に飛び出て終了である。
 登山道までは30mほどの薮コギで達する。
 服部パーティの待つ清水峠へは登山道を歩くこと30分ほどで到着する。濡れたものを広げて乾かそうとしたが既に日が陰ってきていたので全然乾かない。今日は行動時間が長くかなり疲れたので酒もほどほどにして寝ることにする。足を伸ばして寝れるのが嬉しい。

〈コースタイム〉
B・P(6:15) → 大源太山(8:30) → 大畠ノ沢出合(11:10) → 左俣出合(13:35) → 稜線(16:10) → 清水峠(16:50)

16日(月) 快晴
 快晴の空の下、服部パーティより1時間遅れで出発する。沢で濡れたものが乾いていないので荷物は少しも軽くなっていない。登山道を黙々とただ黙々と登る。汗が滴り落ちる。今日はほんとうに暑い日だ。
 ジャンクションピークで先行した服部パーティ、ナルミズ沢を溯行してきた田代パーティと合流し朝日岳へと向かう。朝日岳のテント場では湯桧曽本谷を溯行してきた湯谷パーティが朝から宴会をしているではないか。ザックから残っていたウィスキーを取り出し仲間に加わる。
 酒もなくなったころ解散となり野田さんと田代パーティは宝川へ、残りは白毛門経由で土合へ下る。途中笠ヶ岳への登りにかかる前の平坦な所で我パーティの相棒水田委員長が足を捻挫してしまう。かなり辛そうだったが土合までは自力で下山したが、無理が祟ったのか完治までには1ヶ月近くかかりそうだと後で聞いた。
 水上で風呂に入り私とゲンさんは電車で、他のメンバーは車で家路につく。

〈コースタイム〉
清水峠(7:00) → 朝日岳(9:30) → 土合(記憶にないので他のパーティの記録を参照)

北沢本谷溯行図
丸ノ沢左俣溯行図

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