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正月合宿・光岳~聖岳
その2 光岳~聖岳の稜線をゆく
飯塚 陽子
小幡 信義
箭内 忠義

山行日 96年12月28日~97年1月1日
メンバー (L)服部、飯塚、小林(健)、箭内、小幡
【 】=執筆者

【飯塚】
12月28日(土) 快晴
 JR八王子駅にAM9:00集合。メンバーは、服部氏、小林もみぢ氏、箭内氏、小幡氏、飯塚の5名。いろいろな事情で、今年の正月合宿参加者はこの5名のみという、なんとなく寂しいスタートとなった。
 それでも快晴の中、服部リーダーの車で一路南アルプスの登山口、易老渡に向けて出発。
 この日の中央高速はガラガラで、快調に飛ばし続け、15:00には易老渡に着いていた。
 運転手のお二人(服部氏、箭内氏)、お疲れ様でした。
 すでにテントが一張張ってあったものの、我々もすばやくテントを張り、いつもの宴会態勢にはいる。そしていつもの宴会を更に盛り上げてくれたのが、もみぢさんのスペシャルメニュー"スッポン&ふぐ鍋"で、これには一同大満足。
 そして、一番食欲旺盛だった小幡氏は、この後スッポンの威力が下山日まで続くのであった・・・・。

JR八王子駅(9:20) → 易老渡(15:00)

12月29日(日) 快晴
 易老渡をAM6:00に出発し、まだ暗い登山道をヘッドランプをつけて登っていく。
 最初の一本はなんでこんなにきついのだろうか・・・・と毎度のことながら今日もそう感じずにはいられない。
 うっすらと積もっていた雪も、標高2,000mを超えたあたりからかなりの積雪が見られるようになり、易老岳手前の稜線にAM11:00に到着。ちょうどテント一張分のスペースを発見し、設営を済ませ、ここから光岳へ向けて出発。
 ほとんど空身だし時間的に余裕もあるので、往復4時間位で行けるだろうとハイキング気分ででかけたのだが・・・・やっぱり甘かった。
 ラッセルはほとんどないのだが、長い長い道のりであった。
 左前方にピカピカ光るイザルヶ岳が見えているのが一向に近づいてこないのだ。最後の登りにうんざりしかけた頃、光岳頂上に到着。「あー遠かった!!」全員一致の感想。
 しかし光岳からは、富士山がすぐ目の前に聳え、まわりは雪の着いてない山々の連なりがひろがり、南アルプスの最南端の雰囲気があった。
 さて、長かった登りを今度は足早に下山にとりかかる。最後は必死に下山し、日没寸前に幕場に到着。
 近くて遠い光岳であった。

易老渡(6:00) → 易老岳稜線幕場(11:05~11:50) → 光岳(14:30~14:45) → 幕場(16:55)

【小幡】
12月30日(月) 晴れ
 昨日の夜は、ついつい調子にのって飲み過ぎたようだ。目覚めと同時に気分悪し、朝飯も喰気力もなく、うとうとする。もう少し眠りたいと思いながらも他の4名はパッキングをさっさと済ませテントを出て行く。今日も快晴だ。しかし自分は頭痛にて最後をとぼとぼついて行く。
 7時20分、易老岳をあとにする。数パーティーがせんこうしている為トレースはついており、ラッセルの苦労もなく第一のピーク、茶臼岳に向って歩を進める。途中、飯塚さんが作ってくれた朝飯のビーフンを口にほおばる。「うーん、中々旨い」少し元気が出て来たようだ。
 左前方には今回の縦走最後のピーク、聖岳がそびえ立っている。まだまだ先は長い。今日も長丁場になりそうだ。
 出発して2時間、茶臼岳の山頂に着く。遠く富士山をバックに記念写真となる。
 第二のピークに向い、10時50分、茶臼を出発、稜線上は誰も歩いていないようだ。聖平小屋が小さく左前方に見えているも、まだまだ上河内を越えていないと思うと、ついつい無言になってしまう。その中で只一人、小林さんだけは元気のようだ。今日も先頭をきって、ぐんぐん歩いて行く。すごい体力の持ち主である。「本当の山ヤだ」と感心してしまう。うわさには聞いていたが、日頃のトレーニングの自信がいかされているのだと思う。一度、『もみぢ』さんで飲ませていただきましたが、山の中での小林さんの方が印象が強く、とても好感をもてました。
 特に危険な箇所もないけれど、今日も長い一日になりそうだ。テントを出発してから、7時間、やっと今日の最後のピーク、上河内岳(2803m)に到着、本日の幕営地もあと下りのみ、早くテント内でのんびりくつろぎたい気持で一杯だ。明日の予定は聖岳のピストンのみ、一度下見に行っているのでそんなに苦労することもないだろう。長い一日も無事に終りそうだ。
 聖平着、16時、ここまで来ると、さすがに人が多くなった。小屋の中は混雑している。小屋の脇に幕営。テント内へ入りほっと安らぎを覚える。こんな時とても幸福感で一杯である。今日は反省し、酒は少し抑えめにしておこう。

 最後に、テント内ではいつも話好きで、一寸、下ねたの話が多かった小林さん(私はとても楽しかったですが・・・・)、テント内では大いに酒を飲み干し、飲べい同志として4日間過ごしていただいた箭内さん、紅一点、飯塚さん、来年の正月も又、一緒に行きましょう。リーダーの服部さん、2回の下見、車の運転、何の心配もなく、順調に山行を終えたのも、緻密な計画と、強い意志があったればこそと思います。5日間、ありがとうございました。

易老岳幕場(7:20) → 希望峰(9:10~9:15) → 茶臼岳(10:30~10:50) → 上河内岳(13:40~13:50) → 聖平(16:00)

【箭内】
12月31日(火) 晴れのち薄曇り
 さて、今日はいよいよ聖岳だ。残念なことに服部リーダーが風邪をひいたらしく、体調を崩してしまった。そのため、一人寂しくテント番となってしまった。服部さんは以前聖岳に登っているので無理して登らなくても不満は残らないようだった。俺もテントでのんびりしたいなと内心強く思ったが、天気もいいし今日で山にいるのも実質最後だと思い仕方なく行くことにした。
 今日も4時起床、6時出発だ。29日、30日、31日とこのペース。やはり服部リーダー隊は気合いが入っている。冬山の原理・原則にのっとっている。余程山が好きなのか、早く終えて山を下りたいのか、はたまた早くおかあちゃんに会いたいのか、それは定かではない。
 荷物は、水に行動食、それに巻紙だ。空荷のようなものだ。アイゼンをつけ非常用にザイルを持つことにした。6時頃はまだ薄暗いが、人が思いのほか入っているのでトレースがばっちりあり歩きやすかった。
 今回の年末山行は、行動が早い。山岳マラソンパワーのもみぢは雪の登山道をスタコラサッサと走るように進む。強力パワーの小幡さんは、「山はいいなあ、岩はもっといい」と叫びながら雪をけちらしながらグングン行く。いつも必ず何か絶対忘れず食べている飯塚さんは、ラブラブ気分でこれまた自分の体重をものともせず登って行く。みんなのパワーについて行こうとして無理をした私は山の初日に膝を痛めてしまい最悪。
 樹林帯を抜けると、どっしりとした大きな尾根の彼方に聖岳がドンと大きく聳えていた。この尾根も急登だが尾根を詰めた後の最後の高度差250メートルの登りは、壁をよじ登るようだった。
一歩一歩あえぎあえぎ登っていった。私は左膝が痛くて一歩がなかなかでない。痛さをかばうため不自然な歩き方をするので左足のアイゼンが何回もはずれてしまう。その度雪を削り、平にしてアイゼンを付け直した。上を見上げると快晴の青空の中に頂上がみえた。そして、もみぢが急登を先行者をも抜かしスタコラサッサと駆け上がっていた。さすが山岳マラソンパワーはすごい。飯塚さんもいつも必ず何か絶対忘れずに食べているラブラブパワーでもみぢに続いていた。もちろん小幡さんも飯塚さんのお尻を追いかけ続いていた。
 もみぢたち先頭部隊が頂上に着いたあと30分程遅れてやっと到着。快晴青空で景色はバッチリだった。しかし、風が強いのでもみぢさんたちは寒さでふるえていた。早々に下ることにした。
 下りの出だしは、うっかりすると滑落しそうな斜度だ。慎重に下りる。急登を下り大きな尾根までくると、昨日会った大学院生に会った。単独で縦走している人だ。巻紙を落とし、もみぢが拾ってあげたのでたいへん感謝していた。もみぢは更に自分の巻紙をプレゼントした。みみぢが「頑張って下さい。東京にきたら家によって下さい」と言って別れた。その大学院生は富山だか石川県だかに住んでいるのだが、2月にもみぢの店に来たと云うことだ。山での縁というのも捨てたものじゃないと思った。
 10時半頃聖平の幕場に戻った。服部さんがお茶を作ってくれたがメチャおいしかった。
 さてさて、これで光岳も行ったし聖岳も登ったし後は下山するのみ。早速テントを撤収した。まずは西沢渡まで長い長い登山道を下って行った。3人は快調に行くが、私は左膝の痛さに堪えかねて、15分程度遅れながら最後にのんびりのんびりと下った。
 西沢渡に着くと、そこには楽しいゴンドラがあり、それに乗り川を渡るようになっていた。鉄製の長方形の台がワイヤーにつり下げられていて、それに乗りロープを引っ張りゴンドラを動かし川を渡るのだ。これがめずらしく、すこぶる楽しい。おまけに遅れて着いたものだからみんなに引っ張ってもらいえらくらくちんだった。聖に着て良かったと思うほど気分は良かった。
 さて、西沢渡からは荒れた林道だ。林道を抜け、舗装されていない車道にでたと思ったらそこが便ヶ島だった。そこからまたトコトコ歩き、もう飽きたなと思う頃易老渡に着いた。今回の山行はかなり歩いたので易老渡に着いたときは、全身の力が抜けるようだった。
 車の横にテントを張った。夜はすべてが終わったので、ホットした気分になり残置しておいたワインや日本酒をゆっくり味わいながら飲んだ。「どれ俺もチョット飲んでみよう」と自分が持ってきたワインをもみぢが飲んだ。驚いたことに、あんなに話好きで、にぎやかで楽しいもみぢが、まるで死んだようになり一言も喋らなくなってしまった。普段お酒は飲まないが、飲むと死んだようになってしまうということが分った。「もみぢ殺すにゃ刃物はいらぬ、酒の一滴あればいい」なのである。
小幡さんは、一人テントを出て満天の星空に向い大きい声で歌を歌っていた。ああ!青春?
 君たちがいて僕がいての世界も今日で終わりかと思うと酒が温かく体にしみた。寝る場所はいびき隊と無声隊と別れて寝た。

聖平(6:00) → 聖岳(8:25(もみじ)~8:50(最終者)~9:00) → 聖平(10:30~11:409 → 西沢渡(14:45~15:05) → 便ヶ島(15:46~15:50) → 易老渡(16:15)

1997年1月1日(水) 晴れ
 明けましておめでとうございます。今日はゆっくり起き、雑煮をたっぷり食べた。二日酔いで頭は痛いが気分は絶好調。
 今日はひたすら東京に向い車を走らすだけだ。来る時は山間の山道を右に左に、いや、右上左下というように曲がりくねって走ってきたので、皆つわり状態になってしまった。しかし、帰りは余裕というか疲れ果てているというかつわり状態にはならなかった。
 途中、立派な角を持った鹿が道を歩きながら私たちを見送ってくれた。左足をひきずっていた。滑落でもしたのか怪我をしていた。おまけにリスまでもちょこちょこ出てきて見送ってくれた。
 諏訪湖サービスエリアで温泉につかり疲れをいやした。八王子には明るいうちに着いた。正月合宿では、事前の偵察・下見からルートの計画、車の手配と大変お世話になりました。おかげでたっぷり歩き、充実した山行になりました。
 夜、おふくろの家に行ったら親族がみな集まっていた。顔を出したら皆びっくりしていたが喜んでくれた。長男としての顔が十何年ぶりにたてた。

易老渡(7:20) → 八王子駅(15:00)


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