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八海山
井上 淳子

山行日 1996年10月26日~27日(夜行発1泊)
メンバー (L)飯塚、城甲、福間、井上(淳)

 金曜日の夜、残った仕事を課長に押しつけて、急いで家に帰り、10時過ぎに上野駅に到着。駅は帰宅するサラリーマンでいっぱいだった。越後湯沢行きの電車に乗り込んでからも高崎付近まではサラリーマンが疲れた顔で乗っていた。「みんな遠くからお勤め大変ですねえ」と思いつつジャージ姿の4人はボックス席に陣取り、すっかり盛り上がっていた。越後湯沢駅に着いたのは午前2時半過ぎ。そこで駅寝だ。(これは、私にとって今回の山行の目玉の一つであった。)越後湯沢の待合室はなかなかの寝心地であった。
 朝、空はどんよりとしていた。天気予報も、タクシーの運転手さんも「今日は雪が降る。」と言っていた。「せめて、行動時間中はお天気がもちますように」と登山口の脇の神社で鐘を一発鳴らして出発した。
 コースは鎖場たくさんの屏風谷。もう紅葉は終っていると思っていたのだが、裾野のほうはなかなかきれいであった。登り始め1時間位は天気もそれほど悪くなく、紅葉をながめながらの快適な山登りであった。ところが、鎖場が連続してくる辺りから雨が降り始めてしまった。私は、天気が悪かったり、苦しくてただただ登り続けているようなとき、頭の中をある歌が延々と回り続けることがよくある。この日はなぜか河島英伍の「時代錯誤」。あのサビの部分がグルグルめぐる中、ズルズル滑る鎖場を、途中何度か押し上げてもらったり、引っ張ってもらったりして、なんとか登りきり、八海山避難小屋に到着した。
 避難小屋にはすでにスキー場のリフトを使って登ってきた人達がいたが、彼らはお昼ご飯を食べると下山していった。4人で使うには広すぎる避難小屋、とても寒かった。とうとう雪も降り始めた。ちょうどお昼頃に避難小屋に着いて「いったいどうやって時間をつぶすのだろう」と思っていたが、ひたすら食べて、飲んで、居眠りして、歌っているうちに夜の9時になった。まだ外は雪が降っている。少しでも暖かいようにと小屋番の人の部屋とおぼしき小部屋で4人で固まって寝た。
 翌朝、寝過ごした。急いで朝食をとって出発。雪が降ったので八ッ峰には行かず、迂回路を行く。雪はやんでいて、積雪は5センチ程だった。山頂付近は雪がつもっていて「冬」であったが、高度を下げるに従って暑いくらいの陽気になり、雪はすっかり消えてぐちゃぐちゃ道になった。やっぱり今日もズルズルとすべってしまった。
 昨日登り始めた登山口に下山。ふと山頂を見上げると白い岩、その下に紅葉、そして半袖姿の自分。さっきまで、雪の中にいたことがとても不思議なことのように感じた。この後、六日町で温泉とラーメンで山行の疲れを癒した。
 今回の山行は私にとって記念すべき入会第一回目の山行であった。ピークを踏むことはなかったが、駅寝あり、紅葉あり、雪あり、宴あり、温泉ありと、とても贅沢で楽しい山行であった。


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