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那須 三斗小屋温泉
中西 恵子

山行日 1997年2月8日~9日
メンバー (L)大久保、服部、箭内、城甲、中西

 三峰に入会して3回目、「えっ、そうだったの?そんなんじゃ連れてくるんじゃなかった」山行でした。

 7日(金曜)の夜、大久保さん、服部さん、箭内さんと品川駅に集合して、服部鬼太郎号で出発しました。湯本温泉の「殺生石」を向こうに見るキーンと冷たい空気の駐車場で一泊。ドライブの疲れを癒そうと深い眠りにつくはずが、ブレスレス、エンドレスのおおいびきと、凍るような寒さでぜんぜん眠れませんでした。ああ、テント泊。

 翌朝、元気な城甲さんが合流しました。城甲さんてしらふの時もそうでない時もおんなじしゃべりかたなんですね。
 バスで中腹の那須岳スキー場まで680円。よいお天気で、ピーコック・ブルーの空に那須の山々の稜線が、完成度の高いシルクスクリーンのように映っていました。雪の上にちょこっと覗くこま犬の頭をなでなでして出発。
 峰の茶屋という峠で休憩。このあたりはほとんど雪がありません。「ほら、聞こえるだろう。硫黄が吹き出している音だよ」
 耳を澄ますと、石ころだらけの茶臼岳の峰の向こうから、飛行機のエンジン音のような響きが聞こえてきます。
 あんまり天気がよいので、朝日岳まで登ることになりました。アイゼンをつけザイルで結ばれて、わけのわからない私は、気が付くと山の急斜面を歩いていました。
 朝日岳のてっぺんで、
「中西さんの初雪山登山おめでとう」
「ありがとうございまぁす」
「誰かカメラ持ってないの?」あっそ。
 頂上付近は風がとても強くて雪がとばされてしまうのだそうです。雪がくやしそうに風のかたちをぐぐっと残していました。
 休憩のあと、朝日岳から熊見曽根へと下り、雪の中を隠居倉へと縦走しました。先頭は城甲さん。箭内さんが「疲れたら交代しますよぉ」を連発していました。そうか、ラッセルの先頭をいくのは、そんなにおもしろいのか。
 雪の量が中途半端なため、低木が顔を出しているところを歩かなければなりませんでした。重たい雪の中でかわいい蕾をたくさんつけた、細いかよわい枝を傷つけるのはとても心が痛みます。
 ずいぶん雪の中を歩いたような気がします。温泉の硫黄のにおいが漂っているのに気がつくとすぐにその姿が視界に入ってきました。城甲さんの速度ががぜん速くなりました。温泉すなわち酒だ、とどなたかがおっしゃっておりましたが、なんてわかりやすい。
 ころがるように斜面をおりて、三斗小屋温泉の大黒屋へ到着しました。雪を落として中に入ると、黒光りした大黒柱のある田舎の古い家を思わせる宿です。常連客の大久保さんにはとても愛着のあるところのようで、もし大黒屋が人間だったら、腕を大きく広げて「おお、また会ったな」といって肩をたたきあっているところでしょうか。
 お風呂は透明でちょっと熱くすごく気持がよいです。女性客が少なくて思いきりくつろいでしまいました。だからといって7回もお風呂に入った箭内さんは、理解の範囲を遥かに超えます。部屋に戻って、
「お風呂で養護学校の先生と話してたんですけど、なかなかの美人でしたよ」というと、おおぉというどよめき、
「でもご夫婦でいらしてるみたい」と付け足すと、ああぁというためいき。こ、こいつら。
 大黒屋に着いたのはまだ3時頃でしたが、酒とつまみがでてくるでてくる。服部さんのイスラエルのワイン(ヘブライ語で説明書きがある)とか、水筒に日本酒やブランデーが・・・・。宿でおいしい食事がでるっていうのに、餃子とワンタンのスープはつくるし、でっかいハムは炒めるし、ちゃんとラー油やこしょうまで持参して。ちなみに部屋ではコンロ使用は厳禁でした。
 いつもはどんなおはなしをされているのか存じませんが、今回は服部さんの「民族的解釈によるユダヤ人に関するカルチャー、プリン付き」、箭内さんの「教育界に対する政治的圧力への涙の抵抗」など大変興味深いトピックの連続でした。

 翌日も天気に恵まれ、峰の茶屋を通って下山しました。途中、「延命水」という名の湧き水が冷たくてとてもおいしかったです。
 みなさん、マイペースな新人に気を使っていただいた(と、信じたい)ようで、お疲れ様でございました。また、経験しないとわからない技術やマナー、癖や好みなど、いろいろ教わりました。ありがとうございましたっ。


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