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聖岳偵察行1・伊那側からの偵察
服部 寛之

山行日 1996年11月2日~4日
メンバー (L)服部、勝部、藤井、小幡、高木(敦)

 今度の正月合宿に予定されている聖岳の偵察を、11月の初旬と下旬、伊那側(西側)と身延側(東側)の双方から行なった。
 一回目の伊那側からの偵察は、アプローチ、特に聖岳・易老岳の登山口のある遠山川沿いの林道の状況、ならびに聖岳のルート及び聖平等幕場の状況を下見することに主眼を置き、さらに、合宿のメンバーや日程の条件が許せばおもしろそうな池口岳のルーと状況を調べることも、日程に含めた。
 二回目は、何年か前の土砂崩れで通行止めとなっている畑薙湖への道路状況調べと、聖岳東尾根(冬期ルート)のルートの下見を目的とした。

 11月1日(金)の夜、JR八王子駅に集合、中央道を八王子ICから松川ICまで走り、伊那大島駅(無人)で仮眠する。かなり雨が降っている。
 翌朝、弱まってきた雨の中、上村へ向かう。伊那側から南アルプスへ行くには、天竜川と南アルプスにはさまれて南北に走っている伊那山地を越えねばならないが、喬木村から矢筈ダムを越え赤石隧道で稜線を東へ抜けて上村へ下る道を行く。途中、矢筈ダムの先で突然新しいループ橋ができていて驚いたが、帰路これを上がってみたら、そこから新しい『矢筈トンネル』(全長4km強)が上村の少し北側の程野までズドンと抜けていた。上村へはこれで行った方が断然速い。ループ橋周辺は工事中のようで、入口に料金所予定場所の表示があったので、そのうち有料化されると思われる。(尚、このトンネルから西側でところどころトンネルや道路建設の工事がされていたので、将来的には天竜川西側の国道或いは中央道につながる道ができるのかも知れない。)
上村からまず池口岳の登山口へ向かう。大島の集落から細い舗装路を上がって行ったどん詰まりの遠山さん宅で、池口岳のお話をいろいろ伺う(後気参照)。遠山さんは池口岳へのルートをひらいた人だ。池口岳は結局、その後の委員会で今回の合宿では見合わせることとなったが、遠山さん宅にはお話を伺ったお礼と将来登る時の布石として、日本酒を置いてきた。
 次に、聖岳の登山口へ向かうが、だがその前に置土産となってしまった酒を補充すべく上村まで戻って酒屋に寄る。時間がもったいないが、隊員の志気の維持のためには必要不可欠であることは、オレも身に染みている。遠山川沿いの林道は、途中の北又渡まで川沿いに行く道と山中の集落を回って行く道の2ルートあるが、最初前者を行こうとしたが、車幅いっぱいの狭い悪路のうえ雨も降っていてヤバそうなのですぐ引き返し、後者で行った。これは正解だった。後者は狭いが舗装された生活道路で問題ないが、前者は、後で便ヶ島の管理人に聞いたところでは、くるまがよく川原に転落する道なのだそうだ(ゾーッ!!)。
 易老渡から2km程奥に今は『便ヶ島』という、飯場のプレハブをそのまま利用した大きな山小屋ができている。くるまはここまで入る。林道は北又渡で舗装が切れた先もそれほどの悪路ではなく、雪の少ない正月あたりならばくるまは問題なさそうだ。ここに着いた時点で雨は止んだ。くるまをここに置き、今日は途中で幕場をさがすことにして出発する。西沢渡まではほぼ水平の道。西沢渡の丸太橋は流されていたが、荷物用の手動式ロープウェイで渡れた。これはおもしろい。
 そのすぐ先の廃屋を過ぎるともう平らなところは無く、ひたすら尾根道を登ってゆく。登山道はしっかりしている。天気もときおり雲の間から陽がさすくらいまで回復した。運転手兼リーダーがバテぎみとなったので、1900m位の緩傾斜となった辺りで倒木の間にようやくスペースを見つけて幕営する。

 翌朝は上天気。今日は幕をそのままにして空荷で登り、帰幕して時間があれば下まで下りることにして出発する。1時間10分で稜線の縦走路に出、まず聖平を見に行く。この尾根道との分岐点から聖平まではかなり下る。下りつくと平坦な野原のような場所に出るが、聖小屋へはそこから北へ道を3~4分たどる。ガスに巻かれると分かりにくい所だ。聖平には新しい大きな小屋が建っていて、すでに閉鎖してあったが、古い小屋は開放されており、幕場も多くよく整備されている。小屋の横に水量の多い沢が勢いよく流れていた。
 水を補給して頂上へ向かう。先程の尾根道の分岐点の先で、道はしばらく稜線の東側の樹林帯を行くが、やがて稜線へ上がったところでいきなり吹き上げる風にあおられ季節が変わった。崖っぷちの痩せた稜線道をしばらくたどると、頂上へのガレの急登となる。えっちらおっちらひたすら登ると頂上(前聖岳)へ登りついた。先程まではすっきり晴れていたのに、登っている間に山頂部はガスにつつまれてしまい、残念ながら展望は無し。山頂の南斜面に風をさけてお茶をわかすが、寒いので早々に下る。下っているとガスが切れて上河内岳~光岳~池口岳の稜線が見え、東には富士山も姿を見せた。
 結局、午後1時過ぎには帰幕したので、くるままで戻ることとし、4時過ぎには便ヶ島へ下りついた。管理人がいなければ小屋で宴会だあと思っていたが当てがはずれ、みんながっかり。幕場代も高めなので、易老渡付近まで移動し、林道脇に幕を張り宴会に突入した。この夜は、みんなあとはくるまで帰るだけという気なので緊張もとけ、一部メンバーの間に壮烈な舌戦バトルが展開されておもしろかった。ここに実況中継風に再現してもいいが、あとでいろいろ差し障りがでてきそうなので止めておく。
 翌朝は、若干1名が二日酔いでダウン。あとは記憶が薄れた者もいたようだがいたって元気で、久堅温泉で汗を流して飯田駅前で昼食を食い、飯田ICから中央道に乗って帰った。
 皆さん、ご苦労さまでした。

〈コースタイム〉
  2日 便ヶ島(11:25) → 西沢渡(12:10~12:25) → 1900m付近(幕営地)
  3日 幕営地(6:55) → 縦走路・尾根分岐(8:10) → 聖小屋(8:25~8:40) → 縦走路・尾根分岐(9:00) → 聖岳(10:50~11:10) → 幕営地(13:15~14:00) → 西沢渡(14:55~15:20) → 便ヶ島(16:00)

  八王子IC~松川IC(普通車) 4,750円
  飯田IC~八王子IC(普通車) 5,050円

アプローチ

便ヶ島

駐車料 1泊=1000円 2泊=1200円 3泊=1400円
幕場代 一人一泊 600円
小屋泊 素泊り=5000円 二食付=8000円
トイレ使用料 300円

便ヶ島~西沢渡

西沢渡~稜線縦走路分岐

聖平

前聖岳

池口岳

風呂


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