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ナメラ沢 沢登り
福間 孝子

山行日 1997年6月21日~22日
メンバー (L)福間、井上(淳)、中西、木本、小堀

 大型台風7号の通過で天気はまずまずだが、今年はやけに台風の上陸がはやい。バスの窓下の川は怒涛のごとく黒く渦巻いている。こんな時期から台風に当たらなくても、と不安げな皆の目をよそに雁坂峠への道をたどる。いつのまにかりっぱな林道ができており驚く。山をずたずたにされ秩父の山も荒れてしまうのだろうか。
 午後1時に入渓。あえて沢で一泊ののんびり山行なので遊びながら行く。と思っていたが、遊んでいるのは私一人のようだ。しかも濡れている。
 静かな緑の空気の中を花とおじさんは進む。2時間ほどで幕営地点発見。さっそくみんなで整地作業にはいる。石を掘り返す、木を移動するなど、娘らは隠し持った怪力であっという間に立派なテント場をつくりあげてしまった。もちろん撤収の際にはすべて正しい位置に戻したのは言うまでもない。
 設営の後は薪ひろいへ花は山へと散ってゆく、ハラハラと。と、又もや目覚めた怪力であっという間に大木を積み上げてしまった。おそるべしツボミパワー。ここで焚火道30年の火付盗賊がその腕前を披露し、「ワシの作品の中でも2番目の快心作じゃよ。ワッハッハ、コボッ、コボッ」と煙の中で不適なムセ笑いをとばしていた。
 翌日完全遡行を完了。笹の中を上がっていくと青笹尾根に呼ばれてしまった。雁坂峠を選んでいればこんなことにならなかったのに。最初は踏み跡らしきものがあったのが、だんだんケモノ道になり、そのうちなにがなんだかわからないようになってしまった。まさに笹との格闘である。今度行くときは絶対にはずさないぞと思いつつ、二度と行かないだろうな。
 結局我々は、余裕の沢登りからあせりの沢下りまでドロドロになりながら沢のキビシさを体験し、もとの場所まで戻るはめになった。
 お約束の温泉もカットし、美しい思い出を残してあげようと思ったオババの願ははかなく消え、強く生きるんだよと娘らの背中にそっとつぶやいたのであった。


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