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魚野川大高沢
金子 隆雄

山行日 1997年8月30日~31日
メンバー (L)金子、藤井

 6月に例会山行で行ったが台風の影響で敗退してきた大高沢へ再度行くことにした。前夜に車で野反湖まで入り、駐車場にテントを張り寝る。星が出ているのに遠くで稲光がしている変な天気だった。この夜というか朝はとても寒くてほとんど眠ることができなかった。あまりに寒かったのでテントの中に転がしてあったフライを被ったら少しはましになった。

8月30日 晴れ
 ほとんど眠れないまま予定通り五時に起きて朝飯を食べて出発準備をする。白砂山への登山道を途中まで辿り、切明への道へ入る。分岐には立派な道標が有り迷うようなことはない。この道は地図では難路となっているが、立派な道で歩きにくいということはない。
 しばらく登り下りを繰り返し、1748mのピークから先は下るだけとなる。山毛欅の大木が目立つ気持の良い道をしばらく辿ると渋沢ダムに向けて急下降となる。朽ち果てた小屋が見えたら約30m程手前に左に入る踏跡があるのでこれに分け入るとすぐに魚野川本流の河原に降り立つことができる。
 河原で沢装備に身を固め溯行を開始する。水量は前回来たときとさほど変りないが、かなりの出水があったようで、千沢出合いにあった中州は跡形もなく、また前回大イワナが釣れた淵も埋ってただの浅瀬になっている。しばらくは右に左にと徒渉を繰り返して行くとやがてゴルジュとなる。ここのゴルジュはたいした苦労もなく全てへつって通過することができる。
 一旦ゴルジュが途切れ、再び小ゴルジュに入ると間もなく右岸より高沢が釜を持った2m程の滝で出合ってくる。ここまで全く魚影は見なかったが、ここで泳ぎ去る魚の姿が見えたので竿を出してみることにする。私は釣りを兼ねて本流の大ゼン10mを見に行くことにした。高沢出合いから10分程上流にその滝はあった。沢幅いっぱいに水を落とし深い釜を持ったなかなかに豪快な滝だ。右壁に太い倒木が架かっていてこれを登れば突破できそうな気もするが、滑りそうなのでここはやはり捲いた方がいいんだろうきっと。
 大ゼンも見たことだし引き返して藤井さんが戻るのを待って今日の泊り場を探しながら高沢に入る。出合いにも幕場はあるがあまり奇麗でなさそうなので上流で探すことにした。出合いから20分程溯った右岸台地の薮を刈り払いタープを張って今日の泊り場とする。高沢は流木が多いので薪に不自由はしないが、なかなか豪勢には燃えてくれない。
 夕食を終えて一息つくと昨夜ほとんど寝れなかったせいか、二杯目のウィスキーを飲み終らないうちにウツラウツラと船を漕ぎ出してしまったので今日は早めに寝ることにしてシュラフカバーに潜り込む。

8月31日 曇り
 昨夜早く寝たわりには早起きできなかった。だがそれ程急ぐこともないだろうと思いのんびりと朝飯の蕎麦を茹でてから食べて出発する。天気はすっきりしないが今日一日はなんとかもちそうだ。
 私はこの沢に過大な期待を抱いていたようだった。だがそれは幻想にすぎなかったようだ。流木に被い尽くされた流れは溯行の興味を半減させ、もう一度来てみたいという気には到底なれない。
 右岸から、いずれも出合いに50m以上の滝を落とす枝沢を二本見送り、左岸のガレを過ぎてしばらく行くと二俣となる。ここまで本流に困難な滝はない。左俣は中高沢でカモシカ平へと詰め上げている。右俣が目指す大高沢で詰め上がると大高山へ出るはずである。大高沢の出合いには60mの大滝が架かっているはずだが、出合いから見る限り5m程の貧相な滝しか見えない。崩れてしまったのだろうかと思いながら取り敢えず登ってみると、その奥にその滝はあった。垂直の壁を伝うことなく水は天空を舞いながら落ちる豪快な滝で、この沢で唯一の見所と言っていいだろう。
 この滝の直登は不可能で、左岸の踏跡を辿って高捲く。踏跡は途中不明瞭な所もあるが、それほど苦労することもなく落口に降り立つことができる。高捲きの途中で見える中高沢の多段の滝も迫力がある。
 大高沢に入ると水量がぐっと減るが、流木の多さは相変わらずだ。2~5mの滝を四つ越えると右岸からルンゼが合わさっているが、ここは左岸からのガレの押出しで埋っている。更に8m、7m、2段8mの滝と続きナメを過ぎると最後の7m滝となる。滝はザイルを使うような難しいものはない。
 水が涸れるとすぐに両岸から薮が覆い被さり背丈を越す笹の薮こぎとなる。大高山から北東に派生する尾根を目指して延々と薮をこぎ、この尾根に乗ったら方向を真南に変えて大高山目指して更に薮をこぐと三角点から1mもずれないで登山道上の大高山ピークに飛び出した。大高山は標識や三角点がなければそれと判らない、登山道の一通過点にすぎないようなピークだ。
 大高山でしばらく時間を過ごし下山にかかる。以前、野反湖から大高山を目指した当会パーティの報告によると、カモシカ平から先は薮がひどくてとても進めなかったそうで、我々も下山を心配していたが奇麗に刈り払われていて多少歩きづらいところはあるが問題はなかった。道はダン沢の頭までは整備されているそうだ。
 高沢山、エビ山を経て過ぎ行く夏を惜しむかのように咲いている高山植物を愛でながら野反湖へと下る。

〈コースタイム〉
30日野反湖(6:20) → 魚野川(9:15~9:40) → 高沢出合(11:10~13:20) → B・P(13:40)
31日B・P(8:05) → 大高沢出合(9:30~9:45) → 大高山(13:40~14:20) → 野反湖(17:35)
大高沢溯行図

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