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田代山~帝釈山
水田 洋

山行日 1997年6月21日~22日
メンバー (L)荻原、水田、清水

 田代山は栃木と福島の県境にあって、山頂に広大な高層湿原を展開する。しかも、奥深く延びた林道が県境を越える手前に登山口があるため、登り始めてわずか1時間で、高山植物の咲き乱れる山頂湿原に到達する。さらに、山頂には小さいながらも、快適な避難小屋があり、込み合わなければゆっくり食事がとれ酒が飲める。強いて難点を挙げれば、山頂に水場がないことくらいである。
 けだし、田代山とは『山登り初体験ギャル』(飯塚氏あたりにオヤジと突っ込まれそうだが・・・)にピッタリの山なのである。「こんな山、(三峰では)若い男三人で行って何するんじゃい。」というのが四方田氏の言である。彼もまた、今回の山行の賛同者であったが、京都に転勤になってしまい残念至極であった。
 今回は、久々に自分がリーダーでない山行なので、非常に気楽である。例会初リーダーである荻原氏が、電車の時間は調べてくれるし、タクシーの予約はしてくれるし、重い荷物は持ってくれるしで楽ちんこのうえない。
 おまけにラッキーなことに、我々が登りはじめた21日(土)の午後からグングン天候が回復してきたのである。さすがに有名山だけあって中高年ハイカーが多かったが、皆日帰りである。小屋には、我々のほか1パーティー4人しかいない。4時前から早々と宴会を始める。しかし、そこは料理のできない男ばかり、つまみはほとんどカワキモノ、「山菜の知識でもあれば、ネマガリやフキのおひたしぐらいできようものを。」と悔やんでもしょうがない。(実際、地元の人達は登山口のある林道に、山に登るのではなくて山菜採りにきていた。)ビールに始まりワイン、泡盛、焼酎と飲み込む、飲み込む。翌日は4時起床のはずがだれも起きれず、5時の起床となった。

 22日(日)はさらに晴れ上がって、ほとんど夏山を堪能した。帝釈山は思ったより遠かったが、すこぶる展望がよい。遠く越後三山まで見えるが、さすがに白い部分が多い。本格派ヤブ男の荻原氏は、黒岩山方面の樹林で黒々とした稜線に熱いまなざしを向けている。どうやら近いうちに、帝釈山から黒岩山を越えて尾瀬までの縦走を目論んでいるようだ。その折には、私もぜひ同行させていただきたいものだ。
 ところで、帝釈山からの戻りの途中、右斜め前方でガサガサと大きな音がした。小屋で同宿したパーティーが登ってきたと思っていたら、結局だれとも擦れ違わない。それに登山道は左前方へと続いている。暫くたって「さっきのあれって、やっぱり熊かな~。」と荻原氏と顔を見合わせてしまった。
 下山は木賊温泉に向かう。空は夏模様だがまだ6月なのだろう、風は涼しい。林道に出てからも温泉までが長い。木賊温泉は温泉とはいっても普通の山間の集落である。大きな旅館は少なく、多くは農家が民宿をやっているようだ。我々は川っぺりにある公衆浴場に入るがここがなかなかの風情である。清流の脇に石造りの浴槽を二つしつらえ、屋根を掛けてあるだけなので、湯に入って熱くなったら、素っ裸のまま川で泳げる。ただし、男女のしきりは一切ないので妙齢の女性は厳しい状況におかれるだろう。料金は一人200円を維持費として料金箱に投入するシステムである。
 さて、これまたラッキーなことに公衆浴場で一緒になったオッチャンが、鬼怒川温泉まで車で送ってくれるという。どうも鬼怒川温泉の住人らしく、帰るついでなのだそうだ。前回の十枚山に続いて地元のオッチャンの世話になってしまい、田舎の人情の厚さには感謝の至りであります。
 夏場、うちの会の山行は沢登りが主流になるんだけども「尾根も捨てたもんじゃないな。」と思わせる良い山行であった。「荻原氏にはこれからも、自分の個性を生かした例会を期待したい。」と最後は委員長らしく結んでおこう。


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