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魚野川本流
水田 洋

山行日 97年8月14日~16日
メンバー (L)水田、荻原、尾崎、四方田

 夏はやっぱり沢旅がいい。今年は同行者に恵まれ、かねて思いが募っていた魚野川本流に決めた。四方田氏がわざわざ京都から参加してくれ頼もしい。
 初日は入渓点までのアプローチである。早朝に上野駅を発ち、長野原・草津口から野反湖へ、ここから山道に入り4時間ほどで到着だが、京都に行ってからまともな運動をしたことがないという四方田氏はバテ気味である。
 降り立った所は渋沢ダムの上流、魚野川が滔々とした流れを造っている。河原にテントをはり、尾崎氏は釣りに出掛けるが収穫はなく、焚火しながらチビリチビリと飲る。空は雲が多いが、山行中の天気の崩れは無さそうだ。
 二日目が本山行のメインである。膝位の徒渉を腰をドッシリ構えて幾度となく繰り返す。途中、釣師がいて様子を聞くと、ここから先もかなり人が入っているとのこと。成果の方は釣れて当たり前といった口ぶりである。
 千沢を分けると間もなくゴルジュとなり、へつりにへつるが、泳ぐ元気がなく左岸を高捲く。この後は、河原歩きが続くが、周囲の森は深く、美しく退屈しない。大ゼンは右側を簡単に越える。黒沢出合を過ぎて、魚止ゼンが現れる。川幅いっぱいに水を落し、豪快である。左壁がツルツルで一見登れそうもないが、ザイルを出して慎重に越える。ザイルを出したのは後にも先にもここだけである。
 魚止ゼンからは川幅いっぱいのナメが続き、最も美しい所である。等間隔にナメ滝が現れ、微妙なバランスが楽しめる。暑ければ泳ぐのもいいだろう。奥ゼン沢を分けて暫くで、小ゼン沢出合を迎える。手前右岸に絶好のテントサイトがある。まだ昼過ぎだが、予定通りここに泊まる。
 時間があるので、各人思い思いに過ごす。尾崎氏は釣に精を出すがまたも坊主。しかし荻原氏に代わった途端に、岩魚が二尾立て続けに引っ掛かる。一尾は骨酒、一尾は焼いて食った。焚火と夕食の準備もでき、飲み始める。いつも思うのだが、沢の中で泊まるというだけで何でこんなに楽しいのだろうか。
 最終日は下山後、東京に出るまでが長いので早発ちする。今日はピーカンだ。小ゼン沢を過ぎて庄九郎大滝を左岸からの大高捲きで越えると、ゴウトウと呼ばれる巨岩帯になるが、文献に出ている程ではない。南ノ沢との出合は、青い空が広くて気持ちいい。ここまでくると源頭の雰囲気がある。
 支沢を分ける度に水量が減り、源頭の稜線もチラチラと見えてくる。最後の休憩で水を補給し、強烈な根曲竹のヤブに突入する。沢形が蛇行しながら続いているが、左右から笹が覆い被さり、中腰での歩行は疲れる。それでもヤブのエキスパート荻原氏がぐいぐいと進んでいく。蜜ヤブ帯に入って30分を過ぎるが、登山道にまだでない。傾斜が緩いのでどのあたりが稜線かがわかりづらく、気ばかりあせる。ひたすらガサガサやっていると左側が明るいので良く見ると登山道である。モートーを叫びながら遡行完了を喜び合う。
 下山途中の赤石山は岩峰となって突き出ており、頂上を渡る風が心地好い。大沼池は夏休みのファミリーが、大勢ハイキングに来ていた。バスで湯田中に出て温泉でサッパリする。ローカルな長野電鉄に乗り継いで、長野駅から帰京した。予備日を使わずに済んだので明日は日曜日、ゆっくりと洗濯できるのが嬉しい。

〈コースタイム〉
 14日野反湖(11:15) → 渋沢ダム(15:20)
 15日渋沢ダム(5:30) → 高沢(7:40) → 黒沢(8:35) → 小ゼン沢(12:20)
 16日小ゼン沢出合(5:00) → 南ノ沢出合(8:15) → 稜線(11:10) → 大沼池入口(15:00)

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