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編集後記

 このところ続いていた猛暑もきょうは一段落。窓から気持良い風が入ってきます。でも、あともう一雨降ったら梅雨明けでしょうか。西瓜とビ-ルのおいしい夏ですが、あの暑さには耐えきれません。梅雨の明けるまえから「早く秋にならないかなあ」と考えている私です。

(井上)

 この春頃、JR御茶ノ水駅西口前の『茗溪堂』が突然休業し、携帯電話などを売る店に変わってしまった。茗溪堂は3階が山の本のフロアで、普通の大型書店などではお目にかかれない結構“マニアックな”本が並んでいて、ボクのお気に入りの本屋だったのだ。山岳関係だけでなく自然環境やアウトドアものも揃え、また椎名誠とその仲間の本の常設コーナーもあって、この点もボクの趣向に合っていた。近くの明大生だったあの植村直己さんもここで山の本を物色したのかもしれないと思うと、何となく楽しい気分であった。その本屋が消えてしまったのは大ショックであった。
 ところが先日久しぶりに御茶ノ水で降りたら、『茗溪堂』が営業していたのである。携帯電話店の入口にあった案内に気付き、思わず3階へ駆け上がると、山の本のフロアはしっかり健在であった。うれしかったですねぇ。しかも前より明るい感じにリニューアルされている。ボクはさっそく以前のように居並ぶ背表紙を端から端まで全部読んで、面白そうなものを2冊購入しました。レジにいたお年を召した背の高い店員さん(店主?)に「お店小さくなっても山のフロアが残って良かった」と言ったら、すばらしくいい顔をしてすごく嬉しそうに微笑んだ。その表情には温かな人柄と「してやったり!」という自信がにじんでいて、こちらの心まで暖めてくれるような笑顔でした。
 売れ筋ばかりが並ぶ特色のない書店が多い中で、時流に迎合せず自分のポリシーを濃厚に出しているこういう本屋は貴重ですね。本屋は文化を育てる担い手たるべきだというのがボクの勝手な持論だけど、これからも山の本はここで買って応援しようと思う。山屋は山や沢ばかりでなくこういう本屋にも足を運んで大事に育てるべきであります。名前が“茗溪”堂というのも沢の瀬音が聞こえてくるようでうれしいじゃありませんか。

(服部)

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