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甲斐駒ヶ岳
小幡 信義

65山行 甲斐駒ヶ岳 2965.8m
山行日 1998年3月21日~23日
メンバー (L)小幡、小山

3月20日~21日(金~土) 曇りのち晴れ
 いつもこの季節になると行ってみたくなる・・・・のは、自分の気持ちではなく、果たして今年も予定通り下山出来るか、自分の体力のバロメーターの山が甲斐駒である。入山者も少なく、雪山も充分味わえる山である。これから先、50代、60代になってもこの山はこの季節に行ってみようと思う。
 今年も例会を組み、昨年は3名で、最終電車ギリギリで何とか下山した。今回は一寸余裕をみて2泊3日の予定にした。メンバーは小山さんと自分の2名である。
 新宿23時50分、急行アルプスで辰野まで。ここで約1時間待ち、始発の電車で伊那北まで、5時19分着。下車したのは3名のみ。無人駅で、今回も待合所はカギが掛けてあり、バス始発まで約1時間、眠気と寒さで何ともやりきれない時間である。ザックの奥に詰め込んであった雨具を引っ張り出し、着込んだ後ザックの上で横になり、時間を待つ。
 6時38分発の始発のバスに結局3名のみ乗車し、うとうと眠りながら戸台口まで向う。ここから1時間で戸台へ、本日の幕営地の北沢峠までは先が長い。初日は夜行の寝不足でいつも気分がすぐれない。ただ黙々と歩くのみである。今年は雪が少ないと言われていたが、甲斐駒は昨年と変わらず雪は多いようだ。
 北沢長衛小屋着、16時30分。歩き出してから9時間、今回もよく歩いたものだ。小山さんも、かなりバテたようで、30分後にようやく到着。キャンプ地はテント一張りもなく一面雪に被われ、ひっそりとしている。今回もこの先自分たちの力でトレースをつけていかなければと思うと、明日が思いやられる。冬季小屋が開いていた為今回はテントを張らず小屋泊まりとする。1階は荷物が置いてあり、出かけている様で、僕達は2階を借りる事にし、ザック、くつの雪を払い、ミシミシする階段を上がり酒盛りの準備に入る。夜、ねずみが出るそうで、喰い物は整理しておいた方がよさそうだ。
 ただ広い為、熱が逃げてしまい暖かみが伝わって来ない。やっぱりテント生活の方がよいなあー・・・・。まずはビールで乾杯、この一口が一番幸福を感じる時間だ。それも苦しい、厳しい山行の後は尚更である。就寝20時00分。

3月22日(日) 曇り、山頂雪
 ここから先は誰も歩いてなく、かなり時間がかかると予想し、早めの出発とする。5時30分小屋を後にする。天気は曇、山頂はガスっていて見えない。仙水峠から駒津峰の樹林帯はやや雪が締まっていて歩き易かった。途中、トップを交替し、小山さんが急ピッチでトレースをつけて行く。昨年は前に出ることは一度もなかったが、1年間でかなり変わったものだ。後から歩きながら頼もしさを感じた。駒津峰からは一寸やせ尾根の為交替、誰も歩いていないバージンスノーの上に足跡を付けていくのは気持ちの良いものだ。
 山頂まであと岩稜を登るのみ、出発してから5時間強、疲労もかなりで2人は会話することもなく、ただ黙々と頂上を目指す。
 山頂に12時30分、ガスっていて視界ゼロの状態である。下山はトレースがあり、何とか目をこらしながら下降するが、途中よりトレースが消えて下山方向が分からなくなる。ガスの晴れるのを待つも天候は一向に変わらず、急斜面で場所も悪い、滑落すれば命はないだろう。思い切って下山するも何か自信がない。小山さんも心配になったか「元の所に戻ろう」と声を掛けてくる。仕方なくトレースのある場所まで又引き返し少しの時間待つ。何回も来ている山なのにどうしたんだ、と自分に問い掛ける。山頂に戻りテントを張った方がよいのか、思い切って下山してみるか、もう少しガスの晴れるのを待つか、色々と考えを巡らすが・・・・。
 同じ場所で40分時間がたつ。小山さんに「もう一度下りるよ」の合図を送り、急斜面にアイゼンを効かせ、又周りに目をこらし歩き出す。20~30m下山すると赤布が目に飛び込んで来る。僕は大声で「大丈夫、大丈夫、間違ってないヨ」と小山さんに声を掛ける。一寸緊張した時間であったが、何とか安全な場所まで降りることが出来、ホットする。
 五合目小屋、16時45分着。小休憩。ここで泊まってもよいが明日は午前中に帰りたい為重い腰を上げ頑張る。そろそろ薄暗くなり、小山さんとの距離もあく。出発してから11時間経つ。ひざがガクガクの状態である。懐電を取り出し夜道を降りる。遠くに町の明かりが見えるが、まだまだ先は長い。
 笹ノ平手前で幕営、18時45分着。4~5人のエスパースを2人では寒かった。食料も非常食の為ボリュームがなく淋しかった。アルコールは小山さんの残りのウィスキーをいただき何とか寝れる状態となる。

3月23日(月) 晴れ
 6時30分出発、白須バス停まで約3時間で到着。酒屋でビールとつまみを買い込みバスの中で今回の山行を回想しながらビールでのどを潤す。小山さん来年も行きますか?・・・・・・。お疲れ様でした。


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