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平成九年三峰神社参拝
その3 錦繍の雲取山
小山 重彦

山行日 1997年10月18日~19日
メンバー (L)田原、小山

 10月17日(金)
 菅原邸をベースキャンプにするため、田原会長(以下『翁』と呼ぶ)とお伺いしたが、そこは、うっそうとした樹木に囲まれた静かな住宅街で、都心では珍しい贅沢な平屋造りの建物であった。夜分にもかかわらず、夫人の手料理と一夜の宿と寝具(寝袋)を提供していただき、十分に満喫した夜を過ごさせていただいた。

 10月18日(土)
 早朝、菅原さんに車で奥多摩湖まで送って頂き、昨晩からお世話になりっぱなしで、誌面をもって菅原ファミリーに感謝申し上げます。
 初めて観る奥多摩湖を観ながら、鴨沢の廃校の小学校から翁と登り始めた。雲取山は標高2070mもあり東京の屋根と言われいるが、平野ばかりと思っていた東京にこんな大山脈があるのにはビックリする。私の家族がいる福岡は山ばかりであるが、最高峰は英彦山でわずか1200mである。さらに九州本土の最高峰は九重山で1791mなのだ。東京は大都会と大自然に恵まれて本当に良か所ばい。
 朝靄のなかブナ原生林を歩いていると、カラン、コロンとアチコチで妙な音がする(鬼太郎の歌ではないようだ)ので、よく見ているとドングリがころげ落ちているのだ。このリズミカルな音を聞いていると、唱歌の『ドングリころころ』はこんな情景で作られたのだろうと想像した。
 昨晩の深酒にもかかわらず軽快なフットワークでズ~と先を行く翁は、元気すぎて、時々、雄叫びをあげるのでビックリしたが、それは『モ~トウ~』と叫んでいるらしく三峰のコールサインであるとの事が後で判明した。私が分岐点で道に迷わないよう注意しているのだろう。
 紅葉したブナやカエデが美しく、登山道にたくさんの落葉が積もりジュウタンのようで歩きやすい。初めて見る、珍しいプロペラ型のカエデの実が落ちている。本当に紅葉の綺麗な日は2、3日しかないのだが、その1日に我々は来たようだ。この綺麗な紅葉を観て、翁曰くこれぞまさしく『錦繍の秋』であると表現た。(金の糸で刺繍した様なキラキラとした美しさの意味だそうだ)
 登るにつれ、太陽に近づきだんだんと暑くなってきた。夏に戻ったようだ。空は雲一つ無い日本晴れで、どこまでも真っ青な空が広がり、太陽はぎらついている。広い尾根をたどり私はやっとこさ雲取山頂避難小屋にたどり着く。周辺はオバサン軍団で賑わい、マラソンで駆け登って来る人やマウンテンバイクで登って来る人達でいっぱいだ。(さすが東京ばい。)翁はこの暑さにもめげず、うまそうに酒をちびり、ちびりとズ~と呑んでいる。(本当に酒が好きなんだ。)
 頂上を少し下って雲取山荘に着いた。チェックインし一段下の大部屋の奥に荷物を置き、誰もいない炬燵にひっくり返ったが、そこに東京と埼玉の県境があるそうだ。翁は相変わらず酒を呑んでいたが、しばらくしてオバサン軍団がドッと押し寄せて、大部屋がごった返してきたので、翁の知人である山荘の主人新井信太郎さん(山では有名な人なのだ)のご好意で、ゲストハウス雲取ヒュッテに移動した。古い建物でガラガラに空いている。
 夕方近くに、別ルートで来た水田さん、藤井さんが、『モオートー』コールと共にドカドカと階段を駆け上がり合流となる。それから、賑やかな酒宴である。
 今夜は明る過ぎるほどの満月である。狼の遠吠えは聞こえず、鹿が近くでキュン、キュンと鳴いている。遠く新宿の町明かりが見えている様だ。
 明日は、三峰神社へ『三峰山岳会の過去2年間事故が無かった事を感謝し、これから2年間の登山の安全祈願』参拝である。続きは前号の三峰神社詣でをご覧下さい。


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