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会津駒ヶ岳 下ノ沢遡行
福間 孝子

山行日 1998年6月13日~14日
メンバー (L)藤井、箭内、城甲、福間

 なんとか雨だけにはあいたくない、なんて梅雨のさなかにむしのいいことを考えつつ毎週沢にでかける、そんな人に私はなりたくない。

 この日も出だしはちょっと薄日なんかさしてなんとなくイイ感じの一日だった。入渓してすぐに竜門の大滝が右手よりドウドウと落ちてくる。下ノ沢3度目チャレンジのF氏に導かれて左岸を大捲きに捲く。「最初ざれざれ中がさがさ、声はすれども薮のなかかな」なんとなく不信感をだきつつも「ここがこの沢の最大の難関なんだよ~。」の落ち着きはらった声に、そうか、あとは大したことはないのかとひとりで勘違いしてしまった。そう確かに勘違いであった。
 いくつかの小滝をこえて行くのだが、なんとなく気持ちがわるい。滝も川床の石もみんなヌルヌルしている。もずくでも栽培してるのだろうか。そんなわけないだろ! と一人つっこみをしていたら、ズリっといちゃいましたね。濡れるわ痛いわで、いきなりブルーな一日へと突入してしまいました。お尻に流木をつき刺すはめになったJ氏とどっちが痛かったのかな。
 ブルーといえばシラネアオイの花が沢山のびのびと咲いていました。
 沢で出会う花はみんなみずみずしくておいしそう、いや可憐ですね。あとはキヌガサソウとか稜線ではもうチングルマが満開でしたけど、やっぱり今年はちょっとはやいですよね。
 下の二俣を過ぎると第2のゴルジュがはじまる。ゴルジュといってもあまり暗い感じはしない。ルート図では水線どおしにほとんどいけるようなのだが、水量が多いせいか何度か高捲く。ここの沢の高捲きルートは、ルートとは呼べないようなところなので、ここに行く方は心して行ってください。2ヶ所でザイルをだしてもらったんですが久しぶりにちょっとビビリました。ナイスミドルの三バカじゃなくて、え~と、え~と、さん、三、三銃士に助けられながら、姫はゴルジュに戻りましたとさ。(ごまかせたかな?)
 昼ごろからとうとう雨が降ってきてなんだか気が重くなる。雨具をつけなくても充分にびしょびしょだけど、寒くなってきたので雨具をつける。なんとか一日もってくれればと思ったけれど、そういうわけにはいかなかったようだ。
 第3のゴルジュの抜け口手前でとどめの大高捲(=薮こぎ)をやる。滝手前の左岸のルンゼ状のザレ場を直上し、そこから左の草付きへとトラバースしてそのまま薮へと突入して行く。傾斜は急だし、足はプルプルしてくるし、笹はだんだん太くなっていくし、とうとう根曲がり竹地獄にはまってしまった。時々モートーコールをかけながら行くが、皆それぞれいろんな所からコールがかえってくる。薮こぎは真っ直ぐ上に登っていくのよりも、トラバースの方が難度としてはグレードが一つ上のような気がする。やっと抜けでたと思ったら、ゴルジュの真上で降りることができない。そこで今度は今出てきた根曲がりの海の中にまた戻って下降することになった。もう身も心もどろどろ状態。なんとか全員無事に沢に戻り奥の二俣に着いたけれど、雨はだんだん強くなってくる。今日の行動予定はここで終わりだな。なんてちょっとほっとしていたのに、沢でのビバークはやめて今日中に下まで降りることになってしまった。ヒエ~。
 沢の途中にもあったけど稜線までのつめにも雪渓がでてくる。沢タビのキックステップに死んだはずの親指の爪がまだ生きてるぞと叫んでいる。最後の薮こぎにうんざりしたころ草原状の稜線にとびでる。稜線は雨、風共に強し。ずぶ濡れで駒の小屋にたどり着くと、親切な方たち(新潟人らしい)から熱燗と焼き軟骨の差し入れをいただく。あまりのみじめな格好に同情をさそったのだろうか。「同情するなら酒をくれ」と言ったわけではない。そういう目をしていたかもしれないが‥‥。一応、お返しに行者にんにくとクレソン(どちらも元手はかかっていない)を差し出してはおいたけれど。
 体の内側からあったまったところで重い腰をあげまたもや雨のなかズルズルの登山道を下る。これじゃ沢下りとおなじだね。なんとか日の明るいうちに車までたどり着き、桧枝岐で御風呂に入り、やっと人間らしくなったところでY氏御用達のテント場で快適な夜を過ごすことが出来た。
 なんだかんだ言いながら終わってしまえばやっぱり沢は楽しい。来週はどこを這いずっているのやら。


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