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救助講習会 (徒渉訓練)
服部 寛之

講習日 1998年7月5日(日)
場 所 奥多摩・鳩ノ巣渓谷
講 師 山本信雄
参加者 田原、小幡、服部、金子、田代、大久保、箭内、藤井、小山、福間

 わが三峰では、夏期には沢の山行がめだって多くなる。そこで、今年の救助講習会はいつもとは趣を変えて、川の徒渉時の安全確保について講習を行なうこととなった。実質的には徒渉訓練である。
 例年講習は土日の2日間にわたり三角巾や搬送法を含め行なっているが、今年は日曜1日だけで徒渉訓練のみを朝早くから行なうことにした。
 前日土曜の夕方から夜にかけ、翌早朝に来る予定の福間さんを除き全員が青梅線鳩ノ巣駅に集合、鳩の巣荘の駐車場を左に下ったところの渓谷遊歩道の吊橋のたもとに幕を張り、川の音を聴きながらいつものごとく宴会。焚火をしていたら、通報されて警官がやってきたのには驚いた。やってきた警官の方も(峡谷の闇底で炎にメラメラあぶられた田原会長とその一味?を見て、と思うが)驚いたらしく、「火の始末をきちんとお願いしますよ‥、ごにょごにょ‥‥」と引き下がり、一件落着。
 “人間、第一印象が大事だ”とはよく云われるが、これは第一印象がはなはだしく効果を上げたTPOの事例と思われる。

 翌朝、6時半頃より吊橋の上流200mほどのところで講習開始。ここは右岸近くの川中に大きめの石がありその脇が大きな淵につづく瀬となっているところで、その川中の石にアンカーをとって、まずトップの確保とトップが流された場合の引き寄せを、二通りの方法で行なう。全員が確保者と流されるトップ役を交替で行なった。(途中で福間さんが合流。)
 次に、川幅いっぱいにザイルを張り、後続者に腰ザイルで確保されつつ張ったザイルにカラビナをかけて渡るという練習を行なう。全員途中でわざと流され、この場合のポイントであるゼルバンとカラビナをつなぐシュリンゲの長さを確認する。
 最後に、淵の上4~5mにボルトを打ってザイルを張り、チロリアンで渡る練習を行なう。腰のカラビナでぶら下り対岸の岩まで行って方向転換し戻ってくるのだが、終り近くなると腕の力が続かなくなる者が続出し、予想外にたいへんであった。これは遊歩道をゆく観光客の目をひき足をとめて見物する者が多かったが、「面白そう、私もやってみたい」と50代位のおばちゃんが申し出たのには驚いた。(もちろん、お断わり申し上げた。)
 11時過ぎに切り上げ、吊橋下の川原に残したテントに引き上げたが、連日暑い日が続いていたのにこの日は朝から降りだしそうな天気で、水に濡れると結構肌寒かった。そのため順番待ちの間には焚火で暖をとりながらの講習となってしまったが、チロリアン用のザイルを張る際など焚火の周りにはりついてザイルを張る手順等を覚えようとする姿勢に欠ける者が一部にいたのが残念であったと、後に講師から指摘があったので付記しておく。
 徒渉訓練は、私の記憶違いでなければ、三峰では過去10年間で初めてである。頭で理解しているのと実際にやってみるのとでは大違いで、参加者にとっては大いに勉強になったと思う。安全のための技術を使えるのと使えないのとでは、山での行動に大きな余裕の差を生じる。こうしたトレーニングの機会は積極的に活用して、会員個々人の、また会全体の登山技術を高めて行きたいものだ。
 焚火が恋しいと思わせた天候も、皮肉なことに、テントに引き上げてきた途端みるみる回復して、急に暑い陽射しが射してきた。その後、鳩ノ巣駅前の一心亭でひと風呂浴びて食事をし、解散となった。
 場所の下見のみならず講師として指導してくれた山本のゲンさん、誠にご苦労さまでした。多謝。
 尚、『岳人』1998年7月号に掲載されていた「わらじの仲間」会員による徒渉技術講座の記事のコピーを参加者に配り、参考とした。


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