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新年山行・湘南平
服部 寛之
山行日 1999年1月24日
参加者 田原、原口、播磨夫妻、中村、鈴木(嶽)、浅野、藤居、堀田、広瀬夫妻、小幡、菅原夫妻+子供2名、服部、他6名 (計21名+子供2名)

 湘南平は、神奈川県平塚市のビーチ沿いに連なる丘陵中の一ピークで、ローカルな場所ながら地元では誰でも知ってる桜の名所あんどデートスポットだ。山頂(180m)はその名の通り平らで広い公園になっており、テレビの電波塔と展望台がそびえ、フィールドアスレチックの遊具が備えられている。ドライブウェイが山頂まで延び、平塚駅との間にバスの便もあり、水洗トイレ・水道はもちろん、小さな売店やレストランまである。晴れていると、丹沢や箱根の峰々、その背後に一際大きく秀麗な富士山、そして相模灘の青い広がりの彼方には伊豆の山並みや大島の島影が浮かんで見える。夜もまた、同伴者を間違わなければ、闇に輝く街灯りがとてもロマンチックだ(と思われる。と書かざるを得ないところが哀しくもくやしい・・・・。)このように、ここは宴会酔眼派の山ヤにはうってつけの安心酩酊適地なのだ。著者にとってはその昔小学1年の遠足できたナツカシの地であります。記憶はほとんど残っていないが、お酒でも呑んでたのかな。
 今回は、高来神社の裏から丘陵をたどる小1時間のハイキングコースで登り、同じく小1時間のハイキングで大磯駅へ下りるコースで計画した。登山口のすぐ近くには会員の別所さん宅があるが、ご本人は赴任先の沖縄の地で泡盛片手に残念がっておられたかも知れない。
 ところがです。24日は朝から小雨。ちょっと北では雪になっているという。前日までさんざっぱら晴れの日が続いてたのに・・・・。こう運が良すぎるのも考えもんだ・・・・。
 といって考えていても仕方ないので、くるまに水を積んで9時に集合場所の平塚駅に行ってみると、田原会長はじめ藤居さん、バクダンさん、小幡氏、それにはるばる来たぜ山形からよの鈴木のモンちゃんら、すでに10数名が顔をそろえていた。会長はいつものごとくあたり一帯を仕切るかのような元気声でしゃべくっており、それにつられて皆のテンションも上がって行く。9時40分になって、歩きの連中は元気に出発。ぼくは体調がいまいちの藤居さんと一緒に、今回もまた社長出勤と思われる原口シェフを改札口でしばらく待つが、現われる気配がないのでホンジャマァとにわかにホンジャマ化してくるまで山頂に向かう。
 広い山頂広場に上がってみると、この天気なのでほとんど人影なし。「空いててちょうどイイや」とくやしまぎれにつぶやきつつ手分けして四阿求めて徘徊していると、ナンと展望台下のぬくぬくの休憩場に播磨さん夫婦がいた。「お早いお着きで!」 藤居さんもそこに呼んで、ぼくは引き続き四阿探索を続行する。すると今度は、広場の反対側の低い展望台の下で原口さんを発見。
「たまには早く来ようと思って来たんだよ」
 あまりの意外さに、ぼくは目の廻る思いでした。う~む、ノストラダムスも近いかっ・・・・。
 そこは展望台の床が屋根になっていて(わかりますね)、見たところ山頂唯一の雨がしのげる四阿的場所なので、原口さんは奉仕的精神で寒風のなか場所を確保していたのでした(敬礼!)。風上側にさえぎるものがなくそよつく北風が少々冷たいが、贅沢は言ってられない。そこを会場と決め、早々に鍋を並べお湯を湧かしはじめる。そうこうしているうちに菅原ファミリーと広瀬夫婦も駐車場から姿を見せた。やがて、播磨・原口両氏のモートーコールに応える声が聞こえ、
「やーやー」
「どうもどうもご苦労さん」
 と、平塚駅からのハイク組が到着した。
 あとはご想像の通り。マット広げて座り込むと、たちまち酒瓶がずらりと並ぶ。20人程と、天気の所為で参加者は減ってしまったようだが、皆、寒さに負けじとテンションも声も共に高く、ワイワイガヤガヤにぎやかに、酒杯が廻りつまみが廻り話が廻って目も廻ったかと言うと、これが寒くて寒くてぜんぜん廻らない。ぜんぜん廻らないからハカがいく。ハカがいっては墓穴だぞぉと、分かっちゃいるけど止められねえ。ここで止めちゃぁ山ヤがすたらぁ、と言ったか言わぬか知らねぇが、気温もしだいに下がりぎみ、ふるえる美味さの大吟醸、燗酒ならぬ寒酒だぁ。「どうでもいいけど鍋ま~だ?」と思ったところで「ハイ、お待ち!」、絶品キムチの鍋登場、となる。みんなでつついて次おでん。カニも恥じらうごった煮で、とどめを刺したら
「風呂行こう!」
 と、こうなって、2時半過ぎ、4台のくるまに分乗してイチロ二宮の温泉に向かったのでした。
 着いた先が「セドル健康ランド」。しょうがねえなあとは思ったが、この辺りに温泉はここだけみたいなのね。隣がパチンコ屋で、共通の駐車場は満車状態。パチンコと風呂とカラオケ ― ニッポン3大娯楽が一同に会したここは、片隅だけ盛りあがっていた湘南平とは大違いの盛況ぶりでした。風呂からあがって大広間に行くと、舞台の壁には第90何回だかの「大カラオケ大会」のはり紙が・・・・。歌は「1時間待ち」の表示。風呂とカラオケと飲み食いがセットになって「健康ランド」とは、日本人のヘルシー感覚ってこんなもんなのですかねぇ。全国的にきれいな野山つぶしつつ、一方でチンジャラジャラとカラオケ付き風呂酒会館がはびこる。そこに流れる唄はと言えば、恨み辛みに泪の演歌。なんか斜陽的なのよね、考え方が。この国の老人に若さや溌剌さが感じられないのも解る気がしますね。マイナス思考の国民性が築き上げた文化なんでしょうかね。プラス思考じゃないと楽しめないアウトドアとは、ある種対極にある施設じゃないかと思いましたね、こういうところは。
 ここでまたビールやつまみで飲み直しとなり、ぼくは初めてお会いする浅野さんとしばらくおしゃべりしてひと足先に帰った。後日聞いたところによると、そこで帰る人は帰り、さらに飲み足らない人は場所を移して飲んだそうです。
 今年の新年山行は、湘南の暖かな陽射しの下での鍋つつきのはずが生憎の雨天で近年では最も寒い宴会行となってしまいましたが、こういう方が記憶には末永く残るものなのですね。ですから参加した人は「ラッキー!!」と思いましょう。こういう思考が次の楽しみにつながるのでありますね。毎度のことながら、シェフの原口さん、美味しい鍋をありがとうございました。
 また、この新年山行のために宮坂、太田両先輩より御寄付をいただきました。一同に代わりまして御礼申し上げます。


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