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大菩薩峠集中
その3 白糸ノ滝から丹波大菩薩路を行く
服部 寛之

山行日 1999年6月5日~6日
メンバー (L)服部、福間、山沢、小山

 予定では、小菅村の川久保から牛ノ寝通りに上がって大菩薩峠へ行き、小菅大菩薩路を経て川久保へ戻るつもりでいたのだが、成り行きで白糸ノ滝から丹波大菩薩路へ上がって峠に至ることになった。
 また予定では、服部に福間さん・山沢さんのハーレム風山行となるはずだったが、直前になって小山氏が「まぜて」と電話してきたので、まぜた・・・。この件についてのコメントは差し控えたい。
 実は予定では、5日は奥多摩の澤ノ井酒造の「ままごと屋」さんに寄ってゆば会席を上品にいただこう(ジャージはいてるけど)ということになっていたのだが、そこに急遽約1名がまざることになったのである・・・。この件についてもコメントは差し控えたいが、美味なる料理に全員舌鼓が鳴りっぱなしであったことは記しておこう。また山沢さんの舌鼓は美味なる酒にもすこぶる上品に共鳴していたことも記しておく。上品な酒は呑まない者にとっても悦である。
 ゆば会席を堪能してくるまに戻ると、からだ全体に溢れていた上品をむりやりジャージの中に押し込めて山ヤの顔となり、小菅村に向かう。村内の川久保から高指山に上がる辺りにどこか幕を張れるのではないかと考えていたが、小菅村は想像していたよりも町並みが密で、はばからずに幕を張れるところなどありそうにない。ここは南北両側に山が迫って教科書に出てくるような典型的な日当りの悪いの山村であるが、しかしそこは二十世紀末のニッポン、道路は舗装が行き届いている。幕場を求めて林道を進むが良さそうな場所は一向に現われず、とうとう白糸ノ滝の大広場まで来てしまった。せっかくなので滝を見物する。戻っても場所はなさそうなのでこの広場を幕場と決め、明日のコースは牛ノ寝通りを行ったのでは時間がかかりすぎて昼までに峠に行き着けなくなりそうなので、ここから丹波大菩薩路の追分に上って稜線を行き、帰路は峠から小菅大菩薩路に下りてくるまに戻るコースに変更した。その夕は山沢さんが滝のところで採ってきた水菜の天幕会席であった。日が暮れて間もなく、後ろのヤブでヨタカが鳴いた。(鳥の方のヨタカね。)

 翌6日、上天気のなか出発する。この広場の端から上の稜線の追分まで径がついている。昭文社のハイキングマップ(大菩薩連嶺)には破線で示されて「整備されていない」とあるが、登ってみると樹の切屑もそのままに整備が終わった直後で、非常に歩き易い登山道であった。
 1時間で稜線に出、一本とる。地図に丹波大菩薩路と記されたこの道は、ここから北へ折れて丹波へ向かっている。東へ稜線沿いに小栃山へも続いているようである。セミの声に負けじと、頭上でキツツキが忙しく仕事を始めた。
 腰を上げて間もなく、このコースをとって正解であったことが分かった。森が美しいのである。その上すこぶる歩きやすい。楽しく、心安まる森の径である。
 ノーメダワという分岐で一本。日本語らしくない響きだが、どういう字を書くのだろうか。「マ・メール・ロワ」という曲を連想する。仏語でマザーグースの意の楽しい曲だ。
 再び腰を上げて行くと、前方から中年の男性が現われた。今日初めて行き交う登山者だ。日向沢ノ頭というピークを越えて下りてゆくとフルコンバ小屋跡の分岐に10人くらいのパーティーがたまっている。聞くと、小菅村の中学校の先生たちで、今日は全校挙げてのマラソン大会だという。全学年45名男女混合で、校庭を出発して林道から山道に入り、大菩薩峠まで片道12キロを往復するという。山村の学校はこんなことして鍛えているのかと、いささかびっくりした。その先にも要所要所に先生たちが組になって立っていた。足元に蚊取り線香を焚いて用意の良い先生もいる。そして目指すゴールの大菩薩峠には、テーブル上に水やら果物やらが準備されていた。誠にご苦労さんである。
 峠の看板付近は数10人の登山者で賑わい、見渡す嶺への稜線上にはさらに大勢の登山者の姿があった。さすが人気の大菩薩。ある程度の人は予想していたが、これほどとは思わなかった。休憩していると、ほどなく一番走者がやってきた。男の子だ。先生たちの喚声が上がる。二番手も男子。三番手は女の子らしいが、そろそろ出発しないと時間までに嶺から戻ってこられなくなる。
 ぞろぞろ行き交う稜線を登ってゆくと、見たような顔が休んでいる。金子、藤井、荻原の各氏面々。やあやあと言っていると後ろのヤブからザックを背負った小幡氏がのっそり姿を現して「おうおう」
 雷岩を越えて樹林に入ってゆくと、今度は遊佐さん、続いて野田さんと会う。大菩薩嶺で人込みを避けて少々休んでから、峠に戻ってくると、下の方から田原氏の声だけが上がってくる。「こんなに離れていても聞こえるんだものねぇ」と顔を見合わせながら下りて行くと、案の定みんな集まって始まっていた。もうだいぶ呑んでいるようで、田原氏を中心に盛り上がっている。やはり山で仲間に会うのは愉しいものだ。ビールやら原口さんの鍋やらをいただいて約1時間宴会らしきことをして「今日はどうもご苦労さまでした」と散会とした。
 我々はそれから予定通りのコースを辿ってくるまに戻り、途中風呂を探しながらも結局あきらめ、JR八王子駅で解散した。皆さんお疲れさまでした。


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