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栃ノ木川丹後沢
金子 隆雄

山行日 1999年7月17日~18日
メンバー (L)金子、藤井、小堀、小幡、高木(敦)、成田、(指崎)

 金曜夜に東所沢駅に集合し、2台の車に分乗して出発する。まだ梅雨が明けていないので天気が心配だが、とりあえず関越道で十字峡を目指す。六日町で高速を降りて、何度か道を間違えながらもなんとか2時過ぎに十字峡に到着した。駐車場にテントを張り30分だけと時間を限定して寝酒を飲んで就寝。

7月17日 曇り一時晴れ
 林道入口の車止まで車で移動し、三国川(さぐりがわ)沿いの林道を歩く。充分車が走れるような良い道だがゲートがあって車は入れなくしてある。
 約30分で栃ノ木川出合いの栃ノ木橋に着く。思ったよりも時間はかからなかった。ここより栃ノ木川の左岸に沿ってつけられた道を辿る。この道はよく整備されていて歩きやすく、かなり奥の取水口まで続いている。取水口に着くまでの途中の本流にはかなりの量の雪渓が残っている部分もあり、上流にも多量の雪渓があるだろうことが容易に想像できる。
 長い鉄梯子を下りきると取水口だ。建物のドアにはカギがかっていて通りぬけることができない。しかたなく脇を登って屋根に上がるが、屋根の上には建設資材が積まれていて下るための梯子を塞いでいる。荷物を担いだままでは不安定なので荷物は吊り下げて先に降ろしてから梯子を下る。ここが最初の難所だった。
 ここから溯行開始するが水量は多目で水はかなり冷たい。雪渓のせいだろう。本流を少し行くとS字状のゴルジュになり奥に4m程の滝がある。左岸にザイルをフィックスしてきわどいへつりで通過する。ゴーロとなった本流を進んで行くと程なく左岸より丹後沢が出合う。本流はここからゴルジュとなっている。
 出合いで一本入れてから丹後沢に入る。丹後沢に入るとすぐにゴルジュとなり、くの字形の二段の滝が行く手を塞ぐ。一段目は高さもなく右側をへつって楽に越える。そのままカンテ状の草付きを登って行くとハングぎみの側壁に押さえ込まれて上には進めなくなる。二段目の滝下に降りることは可能だが、二段目の滝は両岸垂直のトイ状で直登は不可能。ここはなんとかこのまま左岸を捲くしかないようだ。
くの字形の滝 藤井さんトップでザイルを延ばし右にトラバースしその後垂直の泥壁を直上し灌木帯に入る。藪をこいでかなり上まで登り露岩帯をトラバースし、再び灌木帯に入り下降する。この頃から日が差し始め汗びっしょりとなる。なにも藪こいでいる時に日が差し始めなくてと恨めしく思う。沢に戻った所は大滝の下で、くの字形滝に続く二段の滝も一緒に捲く大高捲きとなった。少し遅れていた小堀、小幡の両名がルートファインディングに行き詰まり立ち往生していてなかなか降りてこないので藤井さんが途中まで迎えに行く。高捲きのルートファインディングはなかなか難しい、教えて覚えるものでもなくやはり経験を積むしかないようだ。7名という大人数のパーティーなのでこの高捲きに2時間以上を費やした。
30m大滝  大滝は二条になっており右は30mほどの直瀑でなかなか見ごたえがある滝だ。登山大系ではこの滝は50mとなっているが私の感覚ではそんなに高いとは思えない。左は15mほどで水量は少なく貧弱な感じがする。ここは右岸の草付きを簡単に捲いて左の滝上に出ることができた。
 大滝を越えるとゴーロとなり、しばらく行くと沢は左に屈曲し、なにやら妖しい冷気が漂ってきている。目の前に現れたのはスノーブリッジだった。一番現れて欲しくないものが現れた出たのだった。
 スノーブリッジの手前は滝になっておりまずはこれを越えなくてはならない。藤井さんが右岸の倒木を利して這い上がり、ザイルを下ろしてもらい全員上のテラスまで上がる。
 スノーブリッジは出口が見えており、そんなに長くないようだが極端に薄くて潜り抜ける気にはなれない。下には崩れたブロックが散乱している。潜り抜けるのが嫌なら後は捲くしかなく、その可能性を探ってみる。ザイルを付けて、倒木にハーケンを打ち込み更に途中の岩にハーケンを1本打ち、頼りないブッシュに中間支点を取ってズリズリと右岸の草付きをトラバースして行き、どうにかスノーブリッジの端に辿り着くことができた。そのままスノーブリッジに沿って数メートルへつり、このままなんとか越えられそうだなと思ったのも束の間、スノーブリッジに穴が開いていて進めなくなる。草付きはえぐれていてツルツルで、ここをへつって越える自信は私にはないので諦めて戻ることにする。
 さて、捲きも困難となったら覚悟を決めて潜り抜けるかぁ、スノーブリッジ越しに今日の幕場に予定している二俣と思える切れ込みもすぐそこに見えているしぃ、と決断を下そうとした。が、待てよ、普段あまり深く先を読まない私ではあるがこの時ばかりは慎重に明日のことを考えた。ここに雪渓が残っているということは上部には更に多くの雪渓がある可能性が高い。簡単に越えられれば良いがそうは都合良くいかないのが常である。初心者を含む7名という多人数のパーティーであることを考え合わせると予定通りに下山できなくなる公算が大きい。それはマズい、絶対にマズい、私には前科が山ほどあるのだ。残念だがここは撤退だ、という結論に達しメンバーに伝えた。
 少し戻った所に幕場にできそうな所があった気がしたので下降することにする。登る時にザイルを出してもらった所は懸垂下降する。成田君にとっては生まれて初めての懸垂下降となるのでやり方を教え、上でもう1本のザイルで確保して降りてもらったがさぞかし怖かったことだろう。初めて懸垂下降して怖くない人などいるだろうか。懸垂の順番待ちをしていると上流の方から雪渓の崩れる大きな音が響いてくる、くわばらくわばら。
大宴会  少し下った右岸の河原を整地して幕場とする。河原なので増水したらちょっと困ったことになってしまうが、まぁいいでしょう。早速焚き火、ビールときて暗くなる頃には例のごとく飲めや唄えの大宴会。こんなことばかりやってていいんでしょうか。いいんです!

7月18日 雨
 今日は朝から生憎の雨、二日酔いぎみだが取りあえず起きて朝飯を食う。今日は下って帰るだけだからゆっくりの出発でいいやと、またテントにもぐり込む。もっと寝ていたかったが皆出発準備を整え終わり暇そうにしているのでこれ以上寝ているわけにもいかなくなり、渋々テントから這い出て出発準備をする。
 まずは大滝の下降から始まる。二条になった右の滝(上流から見て右)を懸垂下降する。登る時は気付かなかったがこの滝は二段になっていた。次の滝は左岸のヤブの中の灌木を支点にしての懸垂下降。真っ直ぐ下に降りると釜の中なので釜を避けて斜めに降りる。最後は右岸の頼りないブッシュを支点にしての懸垂下降。一つ滝を降りたらそのまま水流を横断し左岸のヤブをトラバースし最後の滝下に立つという変則的な懸垂下降となる。成田君も何度か懸垂を繰り返すうちに結構板についてきたようだ。
 最後の滝での下降で釜の中に沈んでいた流木にザイルが絡まり回収できなくなる。高木さんが胸まで水に浸かって回収に努力するがなかなか上手くいかなく、最後は三人がかりで流木を水から引き上げ、ようやく回収に成功した。
 本流のS字状ゴルジュは懸垂で降り、無事取水口に到着。相変わらず降り続く雨の中、トボトボと十字峡まで歩く。
 こうして今回の溯行は終った。不完全燃焼で物足りなかったメンバーもいたのではないかと思うが。

〈コースタイム〉
17日 十字峡(7:00) → 取水口(8:20) → 丹後沢出合(9:50) → 大滝下(12:50) → 幕場(15:30)


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