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幕岩(2000年ザイル始め)
小堀 憲夫

山行日 2000年1月15日~16日
メンバー (L)小堀、野口、小林(と)、細川、田口

 本来は岩トレの例会などを組める力はないのだが、昨年の暮れに、ルームの後の飲んだ勢いで、「正月明けの幕岩で、岩トレやって天ぷらを食おう!」ということになってしまった。岩トレの基本的な目的は山をより安全に楽しむことにあるが、それさえ忘れなければ人によって好みは色々あってよく、岩登り自体が面白い人、夏の沢用にザイルワークを練習したい人、ひたすら難度を求めて突き進むフリークライマー等々と、人様々あっていいと思う。こちとらデシマルレベルに挑戦する気はあまりないし、ザイルワークだけでも十分練習の意義があると思うくち。それに下手は下手なりにちゃんと遊ぶ方法がある。それに自分でも意外だが、こんなオジサン体型のくせして、岩登り自体が好きなようなのだ「なら、ちゃんとダイエット&筋トレせーよ!」これは自分の中のしっかりした方の人格の声だが、もう一人だらしのないのが、お腹の辺りに住んでいるのですね~、これが・・・。
 話は代わって、その後のほうの人格の話。野外料理は色々あれど、天ぷらはやっぱり一番うまい。何を揚げても絶品だ。揚げたてをアチアチと食って冷たいビールでほてった口中を冷ます快感は何にも代えがたい。それに野外だと油のはね汚れを気にしないで済む。最高は沢での天ぷらだ。冷たい沢水で食材は最高の状態に準備できるし、残った油は焚き火に勢いをつける。でも、今回は炭火だったので、ちゃ~んと油の始末用ににカタメルテンプルを持って行ったもんね。エヘン。
 話は最初の人格ほうに戻る。冬の岩トレは幕岩に限る。暖かいし、テン場も快適だ、と思っていた。が、である。天気はまあまあだったが、寒気の影響で意外に寒い土日だった。それに、幕山ではちょうど梅見の準備が始まったところで、いつもはテントを張らせてくれる芝生広場の奥には、観光客目当ての仮設店舗が建てられつつあった。しかたがないので奥の昔のテン場に幕営していたら、後で注意された。なんでもすぐ下に取水口があるらしい。そんな大事なことならキチンと注意書きの立て札でも立てておいてくれてもいいものなのに・・・。基本的に幕山ではもうキャンプできないと考えたほうが良いようだ。昔のように梅ノ木が雑然と植わっていて、公園なんかになっていなくて、山女が釣れて、蛍が飛んで、自由にどこでもキャンプできるほうが良かったなぁ。寂しい・・・。
 メンバーは昨年新しく入った方が揃い、本ちゃんルートの経験豊富な野口さん、赤谷本谷でドウドウセンを見てしまった小林さん、とてもその年齢に見えないほど元気で几帳面な細川さん、最近一番山行回数の多いイダテン田口さん。
 幕岩は難しいルートが多く、私などが練習できるルートは限られる。今回はテントウムシと桃源郷に数本ある5.10以下のルートを使った。まずテントウムシで身体慣らし。ルートは結構混んでいて、予定していた順番には練習できなかったが、皆さん自分なりに練習を楽しんだようだ。昼前に桃源郷に移り、回りの様子を見ながらランチを済ませ、テントウムシよりもう少し簡単なルートを練習した。ルート名は「蟻さんルート」、「いんちきするな」、「Washing」などだが、ここは山靴でも登れる。
 やがて皆腕が張ってきたので、初日の練習は終了。朝、全員総出で1時間かけ、苦労して張ったオートキャンプ用の家型テントに戻った。さーて、天ぷら宴会のはじまりだ。まずは、ビールで乾杯だ。持ちよりつまみでグビグビやっていると、今回のキャンプ用品一式のオーナーの野口さんが、バーベキューコンロに炭をおこし始めた。残りのメンバーは天ぷら準備。えびや野菜の皮むき、粉を軽くとく。揚げた具を載せるお皿に油きりの紙を引いて、味付け用の塩と醤油を用意する。これだけ。そこで小林さんがザックから颯爽と取りい出したるものは菜ばし。
「どう、いいでしょ。この日の為に買ってきたのよ」
「ムムッ、オヌシやるな」
一瞬、専売特許を取られたかに見えた小堀だったが、同じくザックからおもむろに抜きい出したるのが、見よ、刃渡り50cmはあろうかと思われる大刀だ!
「ええい、控えおろう。この大菜ばしが目に入らぬか」
この大刀、じゃなかった大菜ばし、実は天ぷら屋の板さんに「ねぇ、どうしてそんなにブットイので揚げてるの?」「うん、それは太いほうが、材料が掴み易くて握力が要らないからだよー、ぼく」と教わったことを真に受けて100円ショップで見つけてきたものだ。やはり100円ショップで買ってきたという小林さん、目の前の大刀を見て、
「ハハー、お見逸れいたしやしたー」
が、後で分かったことだが、この大菜ばし、確かに天ぷらには良いが、メシを食らう時には非常に疲れる。握力が要らないどころか腕力がいるし、箸の頭で隣の人をつつきそうで危ない。大は小を兼ねない。
 やがて油が良い温度になったころを見計らって、まずはえび。ジュワッと揚げて、塩で食らう。
「ウッメー!」の合唱。
「天ぷらは揚げたてに限るね」から始まり、イカ、シシトウ、ナスと続く。途中野口さんが湯河原の駅前で買ってきたというキンメ鯛の干物を炭火で焼いてくれた。これがまたうまかった。こうして、「グビグビ、グビグビ、モシャモシャ、モシャモシャ、幸せ、幸せ」と幕岩の夜は更けて行くのであった。途中日帰りの細川さんと田口さんが帰り、小堀が寝床を用意すると言ったまま帰らぬ人となり、その後炭火を前に野口さんと小林さんの談笑は夜更けまで少し(?)続いたそうです。
 翌朝、取りあえずラーメンをすすり(ここで小林お母さんのコメント「天ぷらの後は絶対うどんにすべきよ。残った揚げ玉を入れたら最高じゃない」「フムフム、それもそうだ」)、テントを片付け、テントウムシに出かけ身体を慣らし、次にその少し右に遊歩道のすぐ脇にある岩にチャンレンジ。ここも下部にやさしいルートがあり、なかなかよろしい。野口、小林さんはリードの練習。特に小林さんは元気だ。日ごろバタフライで鍛えた体力がものを言う。
 昼近くなり、上部のハングで腕が張ってきたので終了。湯河原駅前のファミレスでお昼を食べて解散した。
難しいなぁ


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