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「三つ峠」RCT
太田 秀幸

山行日 1999年10月2日~3日
メンバー (L)小幡、太田(秀)、荻原

 入会以来三度目のゲレンデは「三つ峠」、パートナーはリーダーの小幡さんと荻原さんである。最初の「つづら岩」は雨のため現地で中止になり、二度目もやはり雨のため岩に触った程度で終わった。今回が事実上、私の三峰でのゲレンデデビューだ。「三つ峠」は5年ぶり、三つ峠駅には「達磨石」のレプリカが出来、駅の近くに在った「馬場酒店」も無くなり、「達磨石」までの道も様変わりしていた。そんな5年の歳月を噛み締めながら歩き、約3時間で供養塔前に到着。テントを張りメットを被りガチャを着けPM1:00いざゲレンデへ。ここだけはまったく変わりが無く、何か時間が5年分戻った様な気持ちになり「東面フェース」の「草溝ルート」をリードさせてもらう。実に5年ぶり9mmダブルでのリードである。このルートは、まず直上してから右にトラバースして、又直上するというクランクしたラインなので、短いながらザイルの引けが悪くなりやすい。そこでラインの曲がる所では、流れを考え少し長めのシュリンゲを使ったり、ザイルがクロスしたりしないよう注意しながら登った。又、ここはあくまでも本チャンや登攀的要素の強い沢のための練習として捉え、ヌンチャクをなるべく使わずシュリンゲをタイオフしたり、ナッツを逆さまに使うなど、自分なりに考えながら登った。久し振りのリードはやはり緊張したけれど実に爽快だった。ただ一つ心残りなのは、最後のクラックの奥にまだ新しいフレンズが回収出来ずに残置されていたのを頂戴できなかった事である。フォローだったら絶対頂きだったのに残念無念。ちなみに、小生の好きな言葉は「貰う、拾う、只」嫌いな言葉は「転ぶ、滑る、落ちる」である。そこからは小幡さんのリードで「第一クラック」と「権兵衛チムニー」を登り、物凄い強風のなか懸垂下降するが、降りてからどうしてもザイルが引けない。そこで小幡さんがプルージックで半分程登り返し、ザイルを煽って結び目を下ろし再び懸垂で降りてもらうといった事もあり、時間を食った。でもそこからは50mザイルの威力で登山道まで一気に下降。この日の登攀はこれにて終了し、薄暗くなる頃テントに戻ると気分は一気に宴会モード。メンバーに女性がいたら絶対に出来ない話や山談義が続き、テントの外にビールの空き缶の山が出来る頃「三峰名物」小幡さんの歌が出て長い宴会もお開きとなった。
 翌日は夕方から夜半にかけて吹きまくった強風も止み、絶好のクライミング日和。AM7:00前日の打ち合わせどおり「ツルベ」で登れる「中央カンテ」と「亀ルート」に向かった。まずは「中央カンテ」。小幡さんのリードで登山道から第一バンドに、続いて小生が「中央カンテ」の1ピッチ目、小幡さんが2ピッチ目、小生がラストの3ピッチ目を快適に登った。「ツルベ」で3人登るのは色々と手間がかかり面倒なこともあるが、良い練習になったと思う。懸垂で下まで降り少し休んだ後、予定どおり「亀ルート」に向かう。このあたりから富士山に雲が掛かりはじめ天気は下り坂である。この「亀ルート」の2ピッチ目は取り付きがいつも濡れていていやらしいので小生は一度も登ったことが無い。そこでここは小幡さんにリードしてもらい、楽をさせてもらうことにした。ところがフォローで登るにしてもやっぱり難しく、不本意ながらの「大Aゼロ大会」で「八寸バンド」核心部直前の懸垂下降点に到着。聞けば小幡さんも荻原さんも小生と同様「ナンデモアリ」で登ったそうな。それにしても噂に聞いた「八寸バンド」、本当にいやらしい。ちょっと行く気になれないので小幡さんの顔色を伺うと「天気も崩れて来たし、いつ雨が降りだすかわからないから降りましょう」との嬉しいお言葉。そういうことなら長居は無用と登山道まで一気に下降、テントに戻ってPM1:00頃には下山開始。ビールを買って電車に乗り込むと、タイミング良く雨が降り出した。ゲレンデの帰りはいつもそうだが、緊張の糸がプツンと切れアルコールの回りがいつもより早い。と、いう訳で一端のクライマーを気取ったオヤジだが、ただの酔っ払いになるのにそんなに時間はかからなかった。

<技術的な面からの感想と反省>
 今回は50m9mmのザイルを2本ダブルで使い3人で登った訳だが、制動器は小幡氏と荻原氏が「エイト環」、太田がDMMのベッタグレーキ通称「ブタッパナ」を使用した。2人で登る場合は「エイト環」でも扱いにくいということは無いが、3人となると相当に厄介になる。事実小幡氏も苦労した様だ。制動器と下降器を両方持っていかなくてはならない煩わしさを差し引いても、専用の制動器のメリットは大きいように小生は思う。(労山の出している本「岩登りの確保技術」ではダブルザイルをエイト環で確保する場合、特にトップの墜落を止めた時、止まっているザイルと流れるザイルが溶着するので、シングルはともかくダブルの場合は危険であるとの報告がされている)
 次に久しぶりのゲレンデで目に付いた事を書いてみたい。それは「ヌンチャク」でポンポン「ランニングビレイ」を取る人が増えたという事である。確かに楽だし確実なやり方だ。それに比べて、残置のハーケンやボルトにシュリンゲを「タイオフ」するのは面倒だし危険かも知れない(事実タイオフすると強度は落ちる)。でも本チャンや沢では、引越し荷物みたいな大量のカラビナを持って行く訳にはいかない。そこで必要になるのは「遣り繰り」や「騙し騙し」の技術だと思う。ゲレンデだからこそ、それを想定して練習できるしするべきだと思うのだが、小生の考え方は古すぎるのだろうか?もっとも本チャンや沢には行かないと言うのであればそれはそれで良い。
 最後に今回の反省点と今後の抱負を書いてみたい。この2日間の練習の中でも初歩的なトラブルが色々あった。全員懸垂下降で降りた後ザイルが引けず登り返したり、懸垂下降の際のザイルの結び目を上にセットしてしまったり、セルフビレイ用のシュリンゲがカラビナのゲートに半分引っ掛かっていたり、同じ人が続けてリードする時ザイルの裏返しに手間取ったり、強風のためザイルを投げず手に持って降りたのに、あまり上手くさばけなかった事などあげたらきりが無い。しかしゲレンデでのトラブルは大きいものでなければ「勉強」として捉え、未熟な点があれば又ゲレンデに通って補う努力をすれば良いと思う。小生も一応、本チャンと沢登りを目標にしているので、(もうチカラ一杯ジジイなんだからそんなもん目指さなくてもよろしい!と言う声も聞こえてきそうだが)ザイルワークや基本的な登攀具の使い方、トラブルの対処法等の練習は、しっかりとやっておかねばと思っている。と、まあそーゆー事なんで、もし小生が「ゲレンデ行こうよ!ネ、行こう?」と誘ったら、できるだけ付き合ってネ そこんとこひとつ「よろしくおねがいしゃっすよ」

(ゆうだけ番長 太田)

カラビナは外れることがある


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