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編集後記
小堀 憲夫

 ここのところ猛暑が続いている。暑さのせいでまったく考えがまとまらない。従って編集後記はいつにも増して支離滅裂だ。

 こういう暑い時の山は、何と言っても沢登りだ! で、沢のお話。先日奥秩父のある沢で尺岩魚が掛かった。50センチ近くはあったろう。よく太ったかなりの大物だった。証人もいるホントの話だ。ただ、めったに無いことなので、装備も心も準備不足だった。掛かった瞬間に気合で負けていた。
「これは無理だ、上がらん」
案の定、取りこむ瞬間糸を食いちぎって逃げられた。
「刺身にしたら何人前取れただろう」
「あれは50センチなんてもんじゃなかったぞ。鮭か小ぶりの鰹くらいはあったな」
「いやっ、鮪か、海豚のようだった。今度はワイヤーと銛がいるな」
この手の話はだんだん大きくなる。
でも、不思議に冷静だった。逃げられてかえってホッとしたような、妙な気持ちだった。
「また、釣ってやるからな。他のヤツに色目を使うなよ。」
『なんだ、命の尊さに目覚めたのかと思ったら、自分のものであるうちだけ相手にやさしい、ってことなのね』(心のつぶやき)

 暑い時に食べたい食べ物を三つ上げよと言われたら、何を上げるだろう。 私は、ビール、ゴーヤチャンプル、カレーライスと決まっている。従って、日曜日である今日はヨメさんがプールに行っている間に、思いっきり辛い特製夏野菜カレーをまず仕込み、あまった野菜で即席ピリ辛浅漬けを作り、最後にコチジャンをたっぷり効かせたゴーヤチャンプルをさっと仕上げ、冷蔵庫からギンギンに冷やしたビールを引き抜き、『笑点』をつけて、
「ガハハッ、ガハハッ、菊蔵のばっか」
とかほざきながら、グビグビッ、プッハー、とやる。暑気払、至福のひとときだ。

 暑くて一番困るのが通勤時の服装だ。しがないサラリーマン故、周りと違う服装は御法度だ。ただ、営業ではないので、上着は勘弁してもらっている。それでもまだ不満がある。首に巻いている訳の判らない布きれだ。何十年か経って今日の映像を見る時、まるで江戸時代の写真を見てちょんまげを笑うように、「なんだあありゃ。おじいさん達は、変なモン首に巻いてたんだね~」と笑えるような健全な感覚を持った時代が来ること祈る。それにしても、短パンとTシャツだったらどれだけ能率が上がることか・・・。

 寝る時も困る。皆、どうやり過ごしているのだろう。私の快眠法はもっぱら寝る前のシャワーとアルコール(飲みすぎは逆効果)。暑さに耐えられない時は、クーラーを付け、扇風機を回し、Tシャツとトランクスでゴロンと寝る。たいていこれで大丈夫だけど、時にはこれでも朝になるとドッと疲れている時がある。今朝もほとんどゾンビ状態だった。もう何回死んで生きかえっただろう。

 昨日、土曜の朝8時半、猛暑の中、渋谷の消防署に救命救助の講習会を受けに行ってきた(詳細な記録は次回の岩つばめで)。正直、非常に有益な会だった。突然人が倒れた場合、先ず何をしなければならないか? ちゃんと順番があって、これを知らないと目の前の人は死んでしまうのだ。こうした猛暑続きだと、熱中症で倒れる人も多いだろう。以下はイメージトレーニング。
人ごみの中で突然バタンと人が倒れる音。
「どうしました?!」
人ごみをかき分けて素早く走りよる影(当然倒れた人は可憐な若い女性で走りよった影は私)。
「周囲の状況ヨーシ、大出血ナーシ、嘔吐物ナーシ」テキパキと救助活動は開始される。倒れた乙女の横に正座した私は左肘をつき、サッと慣れた手つきで彼女の額に左の手のひらを当てる。
「ムムムッ、これは高温だ。汗もかいていない。熱射病か?」
流れるような動作で、次に彼女の右肩を自分の右手で叩きながら彼女の耳元で呼びかける。意識の確認だ。
「もしもーし、もしもーし、もしもーし」除々に声を大きくする。反応がない。
「意識なし」と声出し確認。続いて、
「だれか救急車を呼んでください。それからポリスエットを買ってきてくれませんか」と回りに救助を求める。次は気道確保だ。右手の2本指で彼女のかわいいあごをグイと押し上げ、左手で額を押し下げる。と、目の前にかわいいクチビルが・・・。
イメージトレーニングのはずが、他のものになってきそうなので、このへんで止めておく。
まあ、冗談めかして書いたが、すごく実践的な講習会だった。講師の方も慣れておられ、お話のほうもプロと拝見した。身につくまで何回も訓練すべきだ。少なくとも年に一回は必修。今度は上級編に挑戦だ。

 それにしても、速く終わらんかなぁこの猛暑。でも沢は暑いほうがいいしなぁ~。

 編集を服部さんから引き継いで、バタバタと1年経ってしまった。この303号で4号目。最初の300号の時もこんな暑い季節で、我が家で汗だくになりながら服部さん、福間さんと校正をやったのを思い出す。最近は少しは要領が掴めてきたので、前ほどバタバタしなくなった。ただ怠けの虫は変わりようがないので、締め切り間際になってのバタバタは相変わらずだ。企画ものもそろそろ入れてみようと思っている。企画のアイデア、表紙絵、挿絵、写真、批判、お叱り、前向きなものであればなんでも大歓迎。もちろん原稿もね。皆さんご協力のほどを。

 月並みだけれど、暑さきびしきおり、皆様ご自愛のほどを。

編集 小堀

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