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甲武信ヶ岳集中
その二 入川真ノ沢
金子 隆雄

山行日 2000年6月3日~4日
メンバー (L)金子(隆)、小幡、野口、山本(信)、細川、小林(と)

 今回の甲武信岳集中山行で我々が辿る真ノ沢は埼玉県側から入るのだが、下山で楽しようという魂胆から下山口に車を1台置いて、別の車で入山口の川又まで行くことにした。
 金曜夜に八王子駅に集合し車2台で西沢渓谷へと向かう。集合時間に遅れた者がいたり、中央道の工事による渋滞などがあって村営の駐車場に着いたのは2時をまわっていた。我々が到着してからすぐに釜ノ沢パーティーも駐車場に到着した。時間も遅いので今日はこの駐車場で泊り、明朝早くに川又へ向かうことにした。

6月3日 曇り後雨
 5時に駐車場を後にする。雁坂トンネル(有料 700円)を通り川又から入川沿いの道へ入り夕暮キャンプ場を過ぎ、そのすぐ先の観光釣り場まで入る。この先はゲートがあり車は入れない。観光釣り場の駐車場に車を置くと後で面倒なことになりそうなので少し戻った路肩に駐車する。
 観光釣り場からしばらく林道を行き、やがて林道と分かれて山道へと入る。なだらかな山道を辿って行くとやがて赤沢谷出合に着く。途中何のためのものだったかは判らないが軌道跡が続いていた。赤沢谷の橋を渡ると道は急登となってくる。しばらく登ると分岐に指導標があり、左は十文字峠、右は山道となっている。柳小屋へ行くには左の十文字峠の方へ行くのだが、なぜがゲンさんは一人右の方へ行ってしまった。そのうち合流するだろうから放っておこうということで我々は先に進む。途中会った釣り人に先ほどの道のことを聞いたら、あの道は行き止まりになっているということが判った。
 山道がだいぶ低くなり入川の流れが見えてくると間もなく柳小屋に着く。柳小屋は建て替えられたばかりらしく、ログハウス風のきれいな避難小屋だった。ここで溯行の準備をしてゲンさんの到着を待つ。1時間程遅れてゲンさんが到着する。走ってきたらしく汗だくで息を切らしている。
 柳小屋の前から溯行を開始する。入川の本流を辿るとすぐに真ノ沢の出合いとなる。吊橋をくぐり真ノ沢に入りしばらく平凡な流れを辿ると最初のゴルジュが現れる。このゴルジュは「通らず」と呼ばれている所で、水流通しの通過は無理で左岸の踏跡を使って捲くことになる。またしばらくゴーロが続き、やがて2番目のゴルジュとなる。右岸のルンゼを少し登ってトラバースして、続く8mの滝も一緒に捲いて沢床に戻る。ここで二人の釣り人に追いつき、先に行かせてもらうことにする。
 午前中良かった天気も崩れだしてきてとうとう雨が降り出してきた。そのうち雷も鳴り出し、釣り人も雷にやられちゃたまらんと言って引き上げていった。右岸に開けた場所があったので我々も行動を一旦中止して様子をみようと思っていたが、ゲンさんはもう焚火を始めてすっかりお泊りモードになっている。溯行を開始してから2時間も経っておらず、明日の集合時間を考えるともう少し先へ進んでおきたかったが、もう皆その気がないようなので諦める。
 岩が張り出し雨が当らない場所で盛大な焚火で持っていった酒を飲み尽くす。明け方かなり強く雨が降ったようだ

6月4日 快晴
 予定よりかなり下流で泊ったので今日は早目の出発とする。天気は快晴で絶好の沢日和となった。
 平凡な流れの中、小滝をいくつか越えると左岸より武信白岩沢が出合ってくる。武信白岩沢は本流と間違えそうなくらい沢幅が広いが水量は本流の方が多い。本流には出合いに3mのトイ状の滝があり、この滝には石滝という名前が付けられている。石滝を越えて行くとすぐに真ノ沢最大の千丈ノ滝が行手を塞ぐ。2段になった高さ30m程の見ごたえのある豪快な滝だ。この滝の直登は不可能で、武信白岩沢の出合いまで戻り右岸の踏跡を辿る。ケルンや赤テープなどがあるので踏跡はすぐに見つけられる。よく踏まれた捲き道を5分程辿ると真ノ沢林道に出るので、そのまま林道を進むとすぐに千丈ノ滝の上に出られる。
 千丈ノ滝を過ぎると水量も減り、木賊沢出合い辺りまでは面白みのない河原が続くので左岸の林の中の踏跡を辿り時間を稼ぐ。木賊沢出合いを過ぎると井戸の底のようなゴルジュがあるが水量が少ないので何の問題もなく通過できる。沢の中は次第に倒木が多くなり、昨日の幕場に予定していた台地を過ぎるとナメが続くようになる。滑りやすいナメを慎重に通過して行くと不動ノ滝が現れる。逆層のスラブ滝でなかなか美しい。左から簡単に捲いて越える。しばらくナメが続くが倒木は更に多くなってくる。倒木はかなり古いものらしく全体に苔むしていて如何にも奥秩父の沢だなと感じさせてくれる。
 10時の無線交信で釜ノ沢のパーティーが既に甲武信小屋に到着していることを知る。我々はあと1時間はかかるかなと思っていたが、奥の二俣はすぐだった。二俣手前の沢の中には僅かだが雪渓が残っていた。この時季に奥秩父で雪渓にお目にかかるとは思ってもみなかった。溯行はこの奥の二俣で終了し、ここからは甲武信小屋へ通じる道を登り10時45分に甲武信小屋に着いた。昨日は行動時間が短かったので、もっと時間がかかるだろうと予想していたが意外と早く着くことができた。ザイルを使うような所が全くなかったからだろうと思われる。
 鶏冠谷の二人を除いて3パーティーが小屋に集合した形となった。集合は甲武信岳となっていたので甲武信岳に登ってみることにする。最近山へ行っても頂上を踏むことは滅多にないのでたまにはいいかなと思い、何人かと連れ立って往復する。この日は天気も良く山頂からの展望は素晴らしいものであった。
 小屋に戻っても鶏冠谷パーティーは来ていなかった。無線も携帯電話も通じない。そうこうしているうちにタイムリミットの午後1時になったので下山を開始することになった。真ノ沢のパーティーと釜ノ沢のパーティーは戸渡尾根を下降するので途中で鶏冠谷パーティーと行き会うはずだ。服部のパーティーは往路と同じルートで甲武信を越えて千曲林道へ降りるので小屋の前で別れてそれぞれ下山を始めた。
 木賊山を捲いて少し登り返して戸渡尾根を下降し始めて間もなく、登ってくる、鶏冠谷を溯行してきた小堀、高木の両名と出会った。集合時刻はとっくに過ぎているのに律儀にも甲武信を目指していたのだ。一緒に下山をすることにした。途中小休止、我々のパーティーは車を回収しに行かなくてはならないので、小幡、細川の両名が先に降りて回収しに行ってくれることになった。
 小屋での待ち時間が長かったので飲みすぎて足元が覚束ない者もいたが、登山道から転がり落ちることもなく全員無事に駐車場に着いた。小幡、細川の両名は既に車の回収を終わり駐車場に戻っていた、なんと素早い、感謝、感謝です。
 帰りは道路の渋滞が予想されたので、何処にも寄らずに帰ることにした。中央道は予想通りの大渋滞であったが、午後8時には八王子に着き解散となった。

〈コースタイム〉
6月3日 観光釣り場(6:05) → 赤沢谷出合(7:20~7:35) → 柳小屋(9:35~10:45) → 幕場(12:30)
6月4日 幕場(6:00) → 木賊沢出合(7:30) → 奥の二俣(10:15) → 甲武信小屋(10:45~13:00) → 駐車場(16:30)

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