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甲武信ヶ岳集中
その三 釜の沢・東俣隊
鈴木 章子

山行日 2000年6月3日~4日
メンバー (L)鈴木(章)、飯塚、藤井、吉岡、田代

 前夜、西国分寺、23時出発。高速道路が渋滞のため、午前2時30分やっと西沢渓谷に着く。真ノ沢隊も着ていたが、挨拶もそこそこに眠りにつく。
 今回のメンバーは、この沢4回目の吉岡さん、2度目の田代さん、飯塚さん、鶏冠谷の経験者、藤井さん、この沢に関してまったく無知の私。お互いを、助けながらの2日間でした。

 翌朝5時起床、「ムワー」として、景色は霞んでいた。今日は、暑くなりそうだ。天気も何とかもってくれるのではと身支度を済ませ東沢に向かう。途中数人のハイカーに出会うが、彼らはみな同じように、私達をジロジロみる。何が一体変わってるというの、失礼な。少し不快な気持ちになりながら東沢分岐へ向かう。
 東沢分岐後もしばらくは、登山道を行くが、これが息切れもの、なかなか足取りがそろわない。本当にこれでいけるのか不安になる。「山の神」で沢たびに履き替えるが、やはり皆、なんだか疲れている様子。今年初めての沢に対する喜び?不安? 活力に欠けた不思議なパーティー。本当にたどり着くのかねー・・・・・・。
 沢の水はまだまだ冷たい。全員ぬれない努力が窺える。ただ一人、チビのアキチャンの奮闘に、心から拍手を送りたい。それでも彼女の心の中は、己の沢登りの美しさに恐らく酔いしれていたのではなかろうか。途中、釣り師に二人出会う以外は、魚影すら見えない静かな沢だ。人気度四ッ星なんて信じられない。
 魚止めの滝を大きく高捲くと、待望の千畳のナメ、しかし、天気のせいなのか、今ひとつ、期待に添わない。美しいことは美しいのだが、沢が荒れているようだ。天気も今ひとつ。きっと、真夏の好天気の中、滑り台をしながら行けば楽しい沢だろう。皆も元気が出てきたのか足取りも軽やかになっていた。
 今日中に、甲武信小屋まで行こうかと提案したところ
「焚き火を、しない沢登りなんてー」
「せっかく花火を、買ったのにー」
 嵐のような言葉の攻撃。なんと恐ろしいことか、さらに、この言葉が終わらないうちに夕立に遭遇。「両門の滝」まで後わずか。(メンバーの意見は、大切にしましょう。何が起こるかわかりません)雨宿りをしている場所は、幕場に最適。心が揺らぐ。皆は、
「リーダー次第」
と私を責める、困った、困った。内心「両門の滝」だけは、今日中に越えたい。まだ12時ではないか・・・・・・。
 雨宿りも、1時間を過ぎると、小降りになってくれた。
「出発!」
 滝を、吉岡さんと藤井さんは、フリクションをうまく使って登ってしまった。ここでも、ちびのアキちゃん、「ザイルをください」と、大騒ぎ、まったくこいつには手を焼くぜ。
 滝を登りきったころから、雨も上がり始めた。滝さえ上ってしまえば皆さんの意見に沿いましょう。さあ、さあ、幕場探し、探し。まだ、2時だというのに、これ以上行こうなんて意思は、まったく感じられない。滝からわずか100メートル、最後尾の藤井さん、
「幕場発見!」と、
前方を行く私達を呼び戻す。
 長年のカンか、臭いを感じたのか、確かに最良の幕場。早速、テントは樹林帯の中、焚き火は沢のそばと、次々と指示が飛ぶ。しかも手際のよさ、そこは、「あっ」という間に、私たちの庭と化した。木々にザイルが張られ、ぬれたものが次々と干される。焚き火も、「あっ」という間に、炎は天を焦がすまでになる。後は、宴会が通常だが、ざんねん、今宵、愛酒家は田代さん一人、さえない顔して飲んでいる。他の4名といえば、燃やすものが充分ある焚き火を囲みうたた寝するのみだった。
 夕食後、暗くなるのを待って、線香花火大会をした。それぞれ心は童心にかえっていた。花火が終わると、無言のまま眠りについた。
 夜半、大粒の雨がテントにあたる。意識の遠のく中、明日の天気が気にかかる。
 翌朝4時半、鳥の声で目覚める。外は明るいし、することもないからと言って起き出す。
 ゆったりとした気分で朝食をとる。鳥たちが、
「今日は、本当によい天気だ。」
と、騒いでいる。
 6時半、テント撤収、7時出発。さわやかな空気の中いざ沢へ、が???
 昨日より水が冷たい。濡れないように歩くのも技術がいる。あの手、この手、奥の手と、出し尽くしたころ、大きな倒木のダムに出会う。この頃から、沢の傾斜もきつくなり、沢の荒れが気になる。
 7時50分、水師沢出合いで一本。ここで、今回はじめての交信。
「モトモト、こちら釜ノ沢隊・・・・・・」
聞き慣れた服部さんの声、
「ご苦労様」
「後、1時間くらいで着きます。」
交信が終わったとたん、
「集合は、午後1時だったよね。まだ、5時間もあるよ。」
などと好き勝手なことを言い出す。歩調も鈍くなる。木賊沢に出合うあたりからは、雪渓も出てくるし、水は汲まなければ、しかもうまいやつ・・・・・・。わがままは、永遠に続きそう。
 甲武信小屋、9時50分到着。服部隊と合流後、1時間後、金子隊も合流。時刻は、まだ、11時。これから1時まで続く宴会、少しうんざり。
 周りを見わたせば中高年パーティーの会話も姦しい。この山では、三峰の会話は静かなほうかもしれない。
 1時になっても小掘隊は着かず。別ルートで下山の服部隊と別れ出発。途中、戸渡尾根を三分の一ほど下山したところで、坂道を一生懸命登ってくる男女二人連れ????
 小堀隊と出会えたといっては酒、休憩すればまた酒、ここでもまたうんざり。帰宅時間も気になるし、愛想を尽かした飯塚さんと先に駐車場に向かう。4時半、ようやく駐車場につく。
 帰路、ラジオが「明日から雨」とのこと。これで、暫くは山行は無理。
 1年ぶりの沢。その後1週間、筋肉痛と疲れで戦ったのは、私一人ではないでしょう。

〈コースタイム〉
6月3日 西沢渓谷駐車場(7:00) → 山ノ神(9:15) → 乙女の滝(10:00) → 西のナメ沢(10:30) → 金山沢(11:20) → 両門の滝上部(14:00) → 幕場(14:30)
6月4日 幕場(6:50) → 水師沢(7:50) → 甲武信岳小屋(9:50)

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