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甲武信ヶ岳集中
その四 鶏冠谷
小堀 憲夫

山行日 2000年6月4日
メンバー (L)高木(敦)、小堀

 3日、土曜の夕方、卒業してからも何かとお世話になった私塾の同窓会がありました。発足初期のOBから現役の小学生まで、世代を越え、何と約200名が集まる大盛会でした。OBとして自分が教えた後輩達も大勢集まり、楽しい一時を過ごしました。勉強以外にも、夏休みには北アルプスへの登山、小豆島、佐渡ヶ島へのキャンプに、冬は信州などにスキー合宿に行きました。
 佐渡の夏、今自分で採ってきたばかりのサザエのつぼ焼きを、二亀の丘に彼女と座り(半分脚色が入ってます)、沈む夕日を眺めながら、ビール片手に仲良く食べたっけなぁ。BGMは荒井由美の『かげりゆく部屋』・・・。ああっ、あのころに帰りたい! おっといけねぇ、集中の山行記録だった。と言うわけで、集中大好きな私めですが、この会だけははずせなかったのです。
 鶏冠谷には、三峰に入ったころ、山沢さんに連れてきてもらったことがあります。山沢さんのワンボックスを渓谷入り口の公衆トイレの駐車場に停め、美味しい酒をごちそうになりながら、遅くまで加藤登紀子を一緒に歌いました。沢自体はそれほど困難な印象も無く、手軽に行けると思ったのでした。さいわい、高木のあっちゃんが土曜の夜に出発するというので、今回は夜行日帰り参加とさせてもらいました。
 前出の同窓会を早めに切り上げ、東京駅丸の内口に10時集合。順調にドライブのはずだったのが、塩山あたりで道に迷い、山奥の炭焼き小屋に出くわしたりして、西沢渓谷の駐車場に到着したのは午前2時を過ぎていました。酒飲みの二人にしては極めて珍しいことに、テントを張ってすぐ寝たのですが、さすがに朝起きられずに、翌朝の出発は6時50分になってしまいました。夕べの雨が嘘のように晴れ上がった空の下、スピードを上げ、鶏冠谷入り口に7時30分到着。走るように登り続け、奥ノ飯森沢入口に着いたのは8時30分。前日たっぷり昼寝をしたというあっちゃんが、サル跳びサスケのように岩を跳んで行くのに比べ、前日までの疲れが残っている私はグズラのように身体が重い。快晴の青空が恨めしい。「ああっ、普通の山行ならのんびりここでトカゲでも決めるんだがなぁ」休憩もそこそこに登り続け、二又に着いたのが9時5分。こんなに急いで沢を登ったことがありません。二人ともさすがに疲れていて、ここで少し休憩。よくここまで飛ばしたもんだ。ところが、この後がいけなかった。前に来たときは大して印象の無かった小滝に、水量の関係か思わぬシャワークライムを強いられてしまいました。全身ずぶ濡れになってどうにかこなした後も、暫く震えが止まりませんでした。ここでドッと疲れが出てしまったのです。あとは詰めのルンゼまでは平坦な滑が続くだけなのですが、足が重いのなんの。昼を急いで済ませ、ルンゼを詰めようとするのですが、息が切れる、息が切れる。元気なあっちゃんも、さすがに少しいらいらしてきました。ここで、ルンゼの斜度のきつさを考慮して右の藪に入り平行移動。登山道目指して巻いたのですが、行けども行けどもシャクナゲ林。そうこうする内に集合時間は迫ります。焦る気持ちと裏腹にシャクナゲは執拗に行くてを阻みます。
「ああ、もういやだ。こんな気持ちは期日に追われた残業の時だけで沢山だ」
そう切れそうになったときに前方にポッカリと青空が。すぐ下のシャクナゲの根元を見ればジュースの空き缶が。
「ああ、やっと助かった」
シャクナゲ地獄からもがき抜け出したその場所にヘタリこみ、靴を履き替え、今度は頂上目指して最後の力を振り絞ります。途中で集合時間の1時を回り、タイムアウト。それでも、降りてくる仲間に出くわす可能性にかけてまだ登ります。やがて上のほうから賑やかな一団が降りてきました。
「モートー」「コボリー、おせーぞー」
まあ、とりあえずこうして会えたわけです。聞けば皆さん甲武信小屋の前で2時間以上待っていてくれたとのこと。また、私の為にとっておいてくれた骨酒用の素焼きの岩魚、金子さん、美味かったよ~ん。みなさん、感謝、感謝です。やはり、仲間はありがたいもんですねー。それにしても、今回はバテバテで、リーダーのあっちゃんの元気さに頼りっぱなしでした。帰り道、温泉に連れて行ってくれた、やさしいあっちゃんにも感謝です。


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