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救助・渡渉訓練
委員長・服部 寛之

救助訓練月間の計画と経過

 今年度の年間計画では、当初7月に救急法の講習会を、翌8月に救助訓練と徒渉訓練を行なう予定であったが、途中で変更し、これらを7月に集中的に行なうことにした。先にやるべきことをやってしまいあとは気兼ねなく沢のシーズンを遊ぼうという魂胆であった。
 そこで、7月を「救助訓練月間」とし、次のように計画した。

7月8日(土)渡渉訓練 場所=多摩川本流・海沢出合の河原
講師=金子(隆)
7月9日(日)救助訓練 場所=海沢・三ツ釜ノ滝
監督/講師=山本(信)
7月19日(水)三角巾講習 ルーム豆講座
担当=小堀
7月29日(土)救急法講習 渋谷消防署

(徒渉訓練・救助訓練の場所は、6月11日に企画の菅原氏と服部が秩父~奥多摩方面を下見して決めた。渋谷消防署での救急法講習会の折衝は小堀氏が担当した。)

 徒渉訓練を救助訓練と組み合せたのは、沢登りが人気の昨今、安全な徒渉方法とトップが流された場合の救出方法を確認しておくことが必要と思えたからである。また救急法(応急処置)の講習は、救助訓練と組み合せておこなう例年の方式とは違った試みとして、消防署の救急のプロに指導をお願いし、また救助訓練と切り離して会場を都内に設定することで救助訓練に参加しない人でも受講しやすくなるとの考えで準備した。
 ところが、いざ救助・徒渉訓練の週末をむかえてみると、8日の徒渉訓練は生憎台風の通過にぶつかり流れてしまった。翌9日に予定した救助訓練は、台風一過のピーカンの朝青梅駅前に集合した時点でメンツと人数をみて徒渉訓練に切り換え、多摩川・海沢出合の河原へ行っておこなった。
 実施できなかった救助訓練を予定があいている日に急遽おこなうことにして再度参加を呼びかけたが、人数が集まらず、結局これは中止となった。19日の三角巾講習と29日の渋谷消防署での救急法講習会は予定通り実施した。(救急法講習については別掲報告を参照のこと)
 というわけで、残念ながら今年はまだ救助訓練を実施できずにいる。委員会としては、例年救助訓練の参加者が固定される傾向にあることが悩みの種だ。しかし、定期的に必要な技術を確認しチームとして動けるようにしておかねば会員の事故に効果的に対処することができないことは、山屋ならずとも自明であろう。山岳会に入って活動する以上、会員諸氏にはその点をよく考えていただきたい。救助技術には基本的な応急処置のほかに通常装備を工夫したものからザイルを張り渡すものまで様々なレベルがあるので、少なくとも自分の活動の範囲で役に立つ技術くらいは会の訓練に参加して身につけていただきたいと思う。パーティーの誰かが事故に遭ったら助けねばならないのは、まず第一に、現場にいる貴方自身なのだから。

渡渉訓練

  実施日 2000年7月9日
  場 所 奥多摩 多摩川本流・海沢出合
  講 師 山本(信)
  参加者 小幡、野口、小堀、佐藤(明)、藤井、四方田、服部、(紺野)

 前述のように、当初は海沢・三ツ釜ノ滝で救助訓練をする予定であった。ザイルを張って滝の右岸の岩場を負傷者を担ぎ下ろし搬出するという設定である。ところが、朝9時に青梅駅前に集合した段階で、人数が少ないうえに集まったメンツに徒渉訓練経験者も少なかったことから、急遽徒渉訓練に切り替え、多摩川本流と海沢(うなさわ)の出合に向かった。ここは広い平らな河原に面して瀬が淵に流れ込み、その先ですぐ浅く緩やかな流れになっているところで、しかも河原の前には有料だが広い駐車場もある(終日1台500円)。台風一過のピーカンにくるまの屋根をあぶられつつ、きのうの雨の影響を心配しながら出合の橋に着くと、多摩川は水量が偵察時の2倍強、川幅は30m位に膨れ上がっており、しかも水は生コン色に濁っていた。しかし流れは秒速1m位だったので、まあ大丈夫ではないかと徒渉訓練をやることにする。しかしこれが甘かったと後で思い知ることになる。
 河原に下りて沢の仕度をし、最初は水深のある淵に流れ込むあたりで徒渉途中で流されたと想定して引き寄せる練習である。全員が流され役と引き寄せ役を交替で行なう(服部は見学)。最初濁った流れに身を沈めるのは皆いやそうな様子だったが、ヘソまで浸かってしまえば覚悟はつくようだった。ザイルを引かれるとき一瞬頭が水にもぐる。
渡渉訓練の様子  次に、水深の浅い個所(腰まで)でザイル確保で対岸に渡る練習を行なう。簡単に渡れると思いきや、流れに負けて皆つぎつぎに押し流され急いで岸に引き寄せられるハメになる。緩そうに見える流れでも流心部分では非常に大きな水圧になり動けなくなってしまうのだ。ザイルが思うように引き寄せられず、結構水を飲んだ者もいた。全員やっても誰も渡れない。しかも1回トライするとかなり体力を消耗し、グリコーゲンバッテリーの回復にも時間がかかる。
 どうしたものかと思案していると、思わぬ天の啓示があった。近くで遊んでいた一羽の鴨が、水流を読んで?ひょいと岸辺の岩から飛び込むと、流れに乗って流されながらいとも簡単に対岸に渡ってしまったのだ。これを見た小堀氏、すぐさまオツムビカビカ点滅状態となり(わかりますね)、衆人注視のなかザイルの支点を付け替え、鴨さんルートに沿って再度流れに挑戦すると、見事徒渉に成功したのであった! 大拍手。
 本人曰く、
「対岸に渡ったカモがカモン!って言ったのだハアハアハア」
 これでザイルを張り渡すことができ、つぎつぎに数人が対岸に徒渉。そしてザイルの支点をつけ直して逆徒河して戻り、終了とした。時間はまだ2時頃だったが、もう皆ぐったり。水との格闘は非常に疲れる! 異口同音の実感であった。
 今回は、流れにも岩同様に弱点があると鴨に教えられた徒渉訓練でした。


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