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甲斐駒ヶ岳集中
その2 確かに遡行した釜の沢
鈴木 章子

山行日 2000年9月15日
メンバー (L)植村、福間、鈴木(章)

 9月14日 新宿スバルビル前 22時集合。植村号に3名、少し寂しい集合。予定時間より少し早めに出発。一路釜無川を目指すが、天気予報は悪化の一路。
「毎年この連休は、悪天候なのに・・・・・」
「集まる人数も少なくなったのだし、集中は年1回にすればいいのに・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
車の速度にあわせて会話も進む。後ろ座席の私は、時々顔を出す月を見ながら3日間の天気を祈るばかりだった。しかし、明日からの天気は期待薄。それでも集中だし、山頂9月17日午前10時集合、これもなんだか変な時間。「ボー」とした気分の中、2時頃目的地手前ゲートに着く。
 [登山大系 9 南アルプス]によると、白髪神社まで車可とのこと。当初、私たちの予定では、白髪神社~中ノ川本谷~七つ釜の沢~三ッ頭~甲斐駒山頂~鋸尾根~編笠山手前荒沢下降~白髪神社。しかし、時代は私達を待ってはくれなかった。これからお話することを皆さん必ず心にとめておいてください。これは、事実なのです。
 翌朝6時半、身支度をしてゲートをくぐる。白髪神社に行くために1時間30分歩く。この間工事の車はひっきりなしに通るし、蛇に2回、クマン蜂の巣に1回出会い、回り道を余儀なくさせられる。
 「白髪神社」はもう過去の存在だった。川岸の高台、わずかな平地に廃材が散らばっていた。そこを入谷点と確認するが、私の古い地図と二人の新しい地図とに少し誤差をみつける。納得いかないまま遡行を始める。水は冷たい。水量はきっと多いのだろう。青々とした水の色、出合いから小滝、ゴルジュが続く。が、いたるところにロープがあり沢にはゴミが目立つ。2、3の小滝を超えると40メートルの垂直の滝が現れる。ドウドウと一直線に落ちる水、サファイヤブルーの深くて大きな釜、人を寄せ付けない神秘さを持っている。水量が豊富で見事なものだ。右岸を高捲くが、大高捲きになり緊張が続く。高捲きが終わり「ほっ」とするまもなく次は50メートルの大滝。釜はないがこれも見事な滝だ。左岸を高捲くが40メートルの滝よりも易しかった。滝の落ち口は左に大きくカーブしていて岩がかなり削られている。その為下部では水しぶきがひどく釜が出来難いのだろう。滝の落ち口からダブルの堰堤が見える。これは右から高捲く。その後また本来の沢登りに戻り、ゴルジュ帯が続く。小滝は直登するが至る所に黒々とした瀞があり、これを捲くのに苦戦。私一人お助けロープのお世話になる。ようやく沢登りの気分になった頃、またもや堰堤。私の地図には記されていない。(H2年版には記されている)納得いかないまま左側から取り付くが足場は悪い。やっとの思いで上部に立つと・・・・・・・。
 なんと、なんと、なんと、草原地帯は岩肌が剥き出し、沢は堰き止められ、工事の車が埃を撒き散らしているではないか。ここは奥深い山中だったはず。今宵はここで一泊お世話になるつもりだったのに、天気も良くなって来ているのに、ブツブツ・・・・・。目の前は工事現場?? 緊張感が緩む。前方を歩いている二人もなんとなく小さく見える。工事の人はこれ以上先に行かないでくれという。さらに現場の人の話では堰堤は6箇所作る予定で現在3箇所目を作っている。七つ釜の20メートル手前まで道路は出来ている。しかも我々の下山予定の荒沢の堰堤はすでに出来ているとのこと。工事は7年前から始まっていたという。この沢は全面的に人工化されつつあり沢登りなんてもってのほか。
 結局、我々は工事の人たちが帰る16時半まで待って車に乗せてもらう。全長、歩けば5時間はかかっただろう道程もお陰で30分ですんだ。車を乗り換え何時もの帰省ルート、風呂に入りゆっくりと東京に向かう。天気は時間の経過とともに悪化。雷も鳴り出した。他のパーティのことが気になる。やはり天気予報は当たっていた。
 我々はといえば、6時間弱の遡行だったが、妙に充実感のある沢だった。(9月15日一日のみの沢だった)

〈コースタイム〉
ゲート(8:00) → 白髪神社(9:00) → 入谷(10:20) → 40m滝上部(11:00) → 工事現場(14:00)


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