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甲斐駒ヶ岳集中
その3 少しだけ 尾白川本谷
小堀 憲夫

山行日 2000年9月15日~16日
メンバー (L)小堀、野口、井上(博)、紺野、小林(と)

 本当は黄蓮谷右俣に行きたかった。以前の集中山行で、悪天候の為一度敗退していたからだ。ところが今回も天候が期待できなかった。メンバーと相談して多少簡単なほうのルートを選択した。
 9月15日6時45分、新宿駅集合。特急で韮崎駅に向った。タクシーに無理やり5人乗り込み、尾白川林道へ。そう頼んだはずなのに、運チャンは駒岳神社へ。まあ、こちらのルートを行く人は少ないだろうから致し方ない。日向山のほうだよと、説明して漸く分かって貰えた。尾白川林道を、車は日向山の手前のほうの登山口まで入ることができる。
 9時45分、日向山登山道入り口出発、林道をさらに奥へと進んだ。事前にネットで調べた情報よりは林道は荒れていなかった。二つ目のトンネル通過が10時45分通過。野口さんがスタスタと快調なペースで飛ばす。林道の終点に11時に到着してお昼休み、弁当を食べて沢支度を済ませた。我々が支度をしていると、沢から中年のカップルが上がってきた。沢沿いの遊歩道は壊れているはずなので、歩けるところまで来てみたのだろう。我々の様子が興味深かったのか女性のほうが、通り過ぎてからも何回も振りかえる。手を振るとニコニコと手を振り返した。知り合いだったのかなぁ?。
 11時30分、沢への下降開始。ロープも張ってある急な踏跡を下ると広い河原に出た。大きな岩がゴロゴロしている。水量は多い。水は青く綺麗に透き通っている。どこに遊歩道があったのだろうと思うほど歩きにくい河原をひたすら進んで行った。
「アイテテテッ、足つったー!」先頭を歩いていた野口さんが叫んだ。苦痛に歪む表情。ハードワークが続いていた彼、疲れが溜まっていたのだろう。様子を見ながらだましだまし行くことにした。ところがトラバースの核心部でまた、
「アイテテテッ!」
黄蓮谷との二俣辺りに行けば幕場もあるし、エスケープもある。ともかくそこまで行こうと頑張ることにした。しかしなんと雄大で見事な渓相だろう。小林さんは、そのあまりの美しさに、
「私は水の妖精よっ!」と踊り出してしまった。オイオイ・・・。
「いやー、これを見れただけでもいいですなー」と井上さん。
紺野さんもはりきって偵察に行く。足がつった野口さんには悪いが、後の4人は明らかに楽しんでいた。
私は水の妖精よっ!  2時40分。二俣には未だ出合わなかったが、まあその辺りだろうという右岸に最初の幕場が現れた。迷わず幕営。二張り張り終り、命の水を沢に浸し、皆薪拾いに散って行った。 やがて夕暮れ時。大焚火を囲んで過激に盛り上がった夜だった。痛風が引いたばかりだから控えておくと言っていた井上さんまでが、
「ちょっと一杯いいですか?」とコップを出したくらいだから後は推して知るべし。
 翌朝16日7時10分、小雨の降る中、幕場出発。7時28分には二俣に到着。雨は弱まる様子は無い。岩は滑る。さあーてどうするか。エスケープするならここしかない。二俣の真中で皆頭を寄せ合い相談相談。最後はリーダー一任ということで、
「この雨の中を、これから核心部の続く沢を行くのは明らかに危ない。ここで打ちきりましょう」となった。
 ならば急ぐことは無いということで、黄蓮谷側左岸の木陰で、雨が弱まるのを待ちながらティータイム。しかし相変わらずやらずの雨だ。仕方がないので歩き始め千丈ノ滝下に到着。本当は千丈ノ滝の中段から岩小屋経由で五合目小屋までに踏跡があったのだが、記憶が定かでなかった為、手前の斜面を苦労して藪漕ぎし、登山道に出て五合目小屋に到着。小屋前で一度携帯が通じ、ほんの一瞬金子会長と話ができたのだが、すぐに圏外になったしまった。その後何回か試みたのだが圏外続き。仕方がないので小屋に避難。残りの食料で昼を済ませ、後は雨の中をひたすら黒戸尾根を下った。甲斐駒神社の前で下山したことを本部に連絡し、タクシーを待つ間グショグショになった衣服を着替えた。駅前の食堂で乾杯して帰路についた。
 しかし、ほんとうにこりゃタタリかね? どうして黄蓮谷は振られるの? こうなったらまたやってやるもんね! 今度は上手く行くでしょう。3度目の正直だもんね


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