山行日 2000年7月1日~2日
メンバー (L)藤井、福間、飯塚
これは、夢だったのかもしれない。
ここのところ週末になると天気が崩れている。今週末も曇り時々雨の予報である。出発予定の2日前に20代と30代の女性から本山行に参加したいとの電話があり、どうしようかと迷っていた40過ぎは、一ヶ月ぶりの山行を決意した。
土曜日の早朝に車で出発し、途中で共同食及び行動食を仕入れて野反湖畔の駐車場に到着したのが10時である。朝から晴れていたがこの頃は快晴状況になっていて、湖畔に群生している山ツツジが絵ハガキの様に緑色の中に朱点を落としている。10時半に登り始めて程なくハンノ木沢の木橋を渡る。その少し先で白砂山との分岐点になったと思い違いをした私は、サッサと左の道へ進んでしまい『この先関係者以外立入禁止』の立札に遭遇し、へんだなと思いつつも、見たこともないコンクリート製の階段を降りると北沢に跨る水門が出現して道が終わっていた。狐につままれた様であったが、全て不注意と思い込みの結果であった。
一汗かいて分岐点まで登り返し、右の道を辿ると、すぐに立派な標識が建っている分岐点に出た(後で知ったのだが地蔵峠と言うらしい)。ここから北沢に向って緩やかに下ってゆくと、右側の笹薮の中から突然に、何らかの物体が走り去って行った。誰として姿を見たものはいないのだが、キジにしては音が大きすぎる・・・。鹿であれば、首から上が見えたはずである・・・。そんな消去法による結論は、小熊ということになり、以後我等三人は定期的に笛を吹いて進むことになった。とにかく我等は招かれざる客であるから、慎ましく行動しなければならないのだが・・・。
北沢に着いて、岩から岩へと飛び渡った対岸で小休止。
「今日は、我々も夏山開きだね」
「沢登りには、最高の天気だョ」
「暑すぎる」
「一ヶ月分の汗をかいた」
とか何とか喋って、沢の冷たい流れで顔や首筋を浸す。
ここから大倉山に向って少し登り、1800mくらいで山肌を巻く様になる。小さな流れを3本過ぎた付近から野反湖の眺望と別れて次の沢への下り道となる。この辺から真紅の花をつけたドウダンツツジが我々の目を楽しませてくれる。小さな沢を過ぎ、100m程登り返すと、大倉山から北面に延びる尾根にでる。これより魚野川まで700mの下降である。足元には、舞鶴草が咲いている。少し下ったところで倒木にヒラタケが付いているのを発見。
「ココヨ! 早く採りに来て」
「我々を待っていたんだな!」
と変な会話を耳にしながら、食べごろを選んで袋に入れると、すぐ一杯になってしまった。袋の中を覗き込むと良い香りで嬉しくなる。
さらに下るとブナの大木が目だってくる。すばらしく明るい自然林である。時々銀竜草が道端に隠れる様に咲いている。
長い下りであったが、最後はヒザの痛みを感じながら、ヤットコサ河原に到着し、懐かしい魚野川の流れに飛び込んだのである。幕場も前と同じであった。4時になっていたので、すぐ三人でチョット上流にある枝沢へ飲み水確保に出かける。水を汲んでから私はイワナ釣りとなる。少し上流の深みに糸を垂らすと、三投目にヒット! それから続けて二匹をゲット。三人分のイワナ(大型1、中型2)が揃ったところで納竿し、タキビの準備となる。今日の好天気で乾燥したと思われる手頃な大きさの流木が集められていて、何の苦労もなく燃え上がる。
今晩の食卓は、途中で採った根曲がり竹の湯がいたものと焼いたもの、ヒラタケの味噌汁、水菜を湯がいたもの、イワナの塩焼きと味噌焼き、という山の幸で占められたのである。
7時を回って暗くなり始めた時、遠くに雷鳴が聞かれた。雲が出てきたらしく、空に星は見られない。8時過ぎに雨が振り出したのでテントに入り9時には寝たようだ。
翌朝6時前に目が覚めると今日も青空である。食べきれなかった味噌汁とご飯で雑炊を作る。大変美味しい。全ての片づけを完了して8時半に出発する。尾根を登りきったのが10時50分、駐車場に戻ったのが1時10分であった。
好天に恵まれ、良い仲間に恵まれ、山の幸にも恵まれた今回の山行であった。野反湖からの分かれ際に、咲き始めたニッコウキスゲが、「又、来てね」と云ったとか。
次に夢を見るのは君ですぞ!