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奥秩父大洞川和名倉沢
小幡 信義

山行日 2000年9月30日~10月1日
メンバー (L)飯塚、鈴木(章)、福間、小幡

 7月から8月にかけて休みの都合で殆ど例会に参加出来ず、暑い休日を一人アパートで無意味な時間を過ごしてしまった。三峰の夏は特に沢登りに集中する。焚火を囲みながらの酒盛り、思い出しただけでうきうきする。岩魚釣りも楽しみの一つであるようだ。私はまだ釣り竿を持参したことがないのでもっぱら見学に回る。何匹かでも収穫のあった時は宴会が一層盛り上がる。
 山々も色づく9月の終わりに、飯塚さんリーダーとし、4名で奥秩父和名倉沢に参加させていただきました。最初は車を出してくれるメンバーを探していたようですが、今回はだれも居なく中止になってしまうのかな?と電話すると、池袋駅22時17分の急行に乗ってくれとのこと。池袋駅から電車に乗って山に行くのは何十年ぶりか。迷うといけないと思い早めにアパートを出る。池袋から横瀬まで約1時間半。本日の幕場確保の為途中下車となる。最終電車の為か駅員が早々に構内の戸締りをしている。こんな夜中に何処へ行くのか興味を持ったようで一声話かけてきたが、適当に答え夜中の暗い道を武甲キャンプ場に向い歩き出す。明かりが少ないせいか空の星がやけにキラキラ輝いている。明日の天気の心配はいらないようだ。キャンプ場に24時30分着、盛夏であったらさぞかし賑やかな所なのだろう。早速テントを張り一段落したところで車内が混雑でゆっくり飲めなかったビールを出し喉を潤す。
 朝5時起床、横瀬、お花畑、三峰口、秩父湖と電車とバスで乗り継ぎ、バス停8時に出発する。二瀬ダムから大洞林道を歩く。飯塚リーダーは出合いの降り口を捜しながらひたすら先頭を歩く。約45分位で降り口の立札がある。いよいよここから遡行開始だ。オーダーは、飯塚、福間、鈴木(章)、小幡で行く。実は私は遡行図を持ってこなかった為(本屋に捜しに行ったが売ってなかったんです)最後をついて行くことにしました。三峰女性の中では最強の3人の為安心感があり、ついつい甘えてしまいました。
 和名倉沢はグレード2級上の1泊2日のコースと紹介されている。3メートルから4・5メートルのナメ滝次々と現れ、遡行には飽きない沢である。水量も多く、「通らず」と呼ばれるゴルジュや、40メートルの大滝など見せ場も多い。夏の暑い時期にはゴルジュを強引に泳いで渡るのも楽しいかもしれない。今回は腰下までの漬かりが限界。しかし福間さんは行水を試みていた。「おお! 寒そう・・・」3人はただ笑っているばかり。
 沢の分岐では必ず遡行図を出しルートをチェック。リーダーの的確な判断と、足並み揃ったメンバーの為スピーディーに進む。沢登りには時期外れなのか、他パーティーとも出会うこともなく静かな沢登りを楽しむ。
 遡行開始から3時間。大滝40メートルを右のルンゼで高捲き、ナメの美しいシダの群生した平坦地に到着。ビバークには向いている。しかしまだ昼過ぎ、明日の行程を考えると先に進んでいたほうが良いとのリーダーの考えで、重い腰を上げる。天気も下がり気味。ポツポツと雨も降り出して来る。どんよりとした空模様と同様気持ちも湿りがちとなるが、とにかく先に進むのみ。1600メートル地点でようやく幕営に適した所に着く。時間は16時になっていた。
 ホッとした気持ちと、予定地に到着した安堵感で早くも宴会準備に切り替え、「さあ焚火だ」急に元気が出てくる。お花畑駅で買っておいた新聞紙が役に立ち、あっと言う間に小枝に火が着く。たかが焚火だがこれにもこつがあり、以前行った小室川の時は、小雨も降っていたが結局火が着かず苦い経験がある。パチパチと燃える炎を見つめているとついつい周りに集まりたがるものだ。適当な腰掛けのできる岩を用意し、宴会の準備も整う。まずはビールだ。本日の行程約8時間、ここまでよく頑張った。リーダーに感謝しつつビールを注ぐ。皆満足気な顔である。私が一番うきうきしていたかもしれない。酒のつまみが次々と出てくる。鈴木(章)さん「晩飯が食べられなくなるからほどほどにして」との事。一人テントの中で晩飯の準備に余念がない。火を囲みながら歌を口ずさむ。肩を組み大声で歌いたい雰囲気であったが女性3人とのメンバーの為、今回は控え目に・・・。晩飯も出来上がり幸福な時間を過ごす。メニューは八宝菜にスープにクラゲときゅうりの和え物。「つまみをあまり食べないで」と言った事が頷ける料理でありました。食後花火等で楽しみ、今までにない一時を過ごすことができました。
 就寝は20時頃だったのか、ほろ酔い気分でシュラフに潜り込む。夜半雨の音に何回か目が覚めたが、そのうち気になることもなく深い眠りに入る。
 10月1日、5時10分に起床。雨は上がっている。焚火は昨晩の雨で消えているようだ。起きだし掘り起こしてみると少々おき火がある。ゴミの焼却を考えて火を起こす。テントの中では朝飯の準備に取りかかっているようだ。
 幕営地を7時出発。ザックの荷が軽くなり、スタートしてすぐリーダー、滝の直登を目指す。ホールドが沢の流れで見つからず、少してこずっているようだ。それにややシャワークライミングときている。下から見ていて一寸心配となったが難なく乗っ越す。鈴木(章)さんは右岸が無難と見たのか、一人すいすい登っていく。福間さんはリーダーの後を登って行ったがやはり手強そうだ。大丈夫か・・・。落下したら捻挫くらいでは済まないと思うと緊張が走る。飯塚さんに「シュリンゲ出ない!」とついつい大声を出してしまった。苦戦しながらも登りきった。次は自分の番だ。なる程、安定したホールドがなく、いつまでも固まっていると飛まつを浴びることになる。ここで落下したら大変だ! 慎重に登る。その後は特に難しい個所もなく、水量も少なくなり、そろそろ源頭が近づいているようだ。枝沢が多くなりルートファインディングが要求されるが、沢に精通した3人。難なく二瀬尾根の登山道に8時30分到着。ヤブもほとんどなく幕営地から1時間半の行程だ。
 この周辺一帯は苔むしていて幻想的だ。ザックに腰を下ろし沢装備を取り外す。折角来たのだからと、和名倉山まで足を伸ばすことにする。この辺りは登山道も整備されていて歩き易い。やたらとワイヤーロープが置き去りにされているが、昔は伐採の山であったのか。どんな経緯があったのか私には分からないが、「片付けて行けよ」と言いたくなる。
 和名倉山頂9時着。山頂と言っても展望もなく、ただの登山道の通過点のようだ。「二度と来ることもないのでは」と4人の気持ちは一致し山頂を早々に引き上げ、ザックを置いた所まで帰る。山頂を踏んだことだし、後は下降するのみ。しかし、地図に二瀬尾根コースは通行不能の状態と記入されているが大丈夫なのか・・・。不安にかられるも、リーダーの出発の合図でどんどん進んで行く為、ただついて行くのみ。案の定背丈以上の笹原が待っていた。笹のトンネルである。行けども行けども延々と続く。左手で顔をガードしながらの歩行である。「ああー」いつ終わってくれるのか、溜息の連続である。
 1時間半も笹の中を歩いたのか、一寸開けた所に小屋跡らしきもの発見。これが地図でいう造林小屋跡のようだ。ここから山道が不明となり、4人で手分けして山道らしき所を探し廻る。10分くらいしてモートコール、赤布が見つかったようだ。ここからは笹も少なくなりホッとするが、今度は行けども行けどもトラバースの道、なかなか下に降ろしてくれない。同じ所をぐるぐる廻っているような錯覚にとらわれてしまう。ここでも又、溜息・・・。
「いつになったら秩父湖が見えてくるのオ!」
トラバースを1時間も歩いたのか、これまた開けた大きな反射板の下に出る。
「おお!湖が見えた。もう近いぞ!」
ついつい心の中で喜んでいた。しかし又道が不明となり、おのおの散らばり赤布を捜すがなかなか見つからず。ヤブの中四方に踏跡らしきものがあるが、どうも自信が持てない。ヤブをかき分けているとリーダーより
「あったよー、こっちだよー」と透き通った声が聞こえる。確かに赤布はあるが、ヤブが山道に被さりなかなか見つけにくい所だ。
 しばらく行くと一直線の急斜面となる。今までの笹薮と違い、樹木の中の山道の為歩き易い。年齢はそこそこ行っているが体力には自信のあるメンバー、斜面を一気に駆け下りる。
 秩父湖バス停14時15分着。まずはビールで乾杯。私自身そうだが、誰もが満足感溢れる顔になっていたように見えた。
 飯塚リーダー、和名倉沢計画して下さりありがとうございました。今までにない山行ができ感謝しております。また、鈴木(章)さん、福間さん、良きメンバーに恵まれ、楽しい二日間を過ごすことができありがとうございました。


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