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浜石岳
服部 寛之

山行日 2001年2月18日
メンバー (L)服部、野口、(藤本、内山、斉藤、高橋)

富士山

 浜石岳は東名高速の静岡県由比PAの4キロほど北にある標高707メートルの山です。南東に由比町を見下ろす位置にあり、町から見上げると頂上の北側に電波塔が立っているので、すぐそれと分かります。以前何かで海を見下ろす広々とした山頂の写真に駿河湾、伊豆半島、富士山の好展望台と記されているのを見て、いつか行ってみたいと思っていました。登路はいくつかあって、由比駅から歩いても2時間少々で登れるようですが、電波塔のところまで舗装した車道が通じているので、最短ではくるまを降りて5分で頂上に立てます。足のリハビリとして考えましたが、いくらなんでもそれでは面白くもなんともないので、東側山腹540メートルほどにある青少年野外センターから歩くことにしました。
 当日の朝7時半に小田急線本厚木駅南口に集まってもらい、私のくるまで行きました。メンバーは私を入れて6名。藤本さんとは2回目ですが、内山さん、高橋さん(以上3名女性)、斉藤さんは初めてで、しかも高橋さんと斉藤さんのお二人は三峰のホームページで山行計画を見てメールで申し込んでこられ、お会いするのも当日が初めてでした。当初大久保氏が付き合ってくれることになっていましたが、仕事の都合で参加できなくなり、急遽野口氏にお付き合いを願いました。
 厚木から東名に乗って富士ICで降り、県道396号線を西へ向かいます。由比の町役場を左に見て500メートル先で右折、細い道を標識に導かれて上ってゆきます。西山寺という集落を過ぎると、道はみかん畑の中を上ります。濃緑の葉っぱと鮮やかなオレンジ色の組み合せがきれいです。ところどころかなりの急坂で、エンジンは実にエライ! 途中ハイカーを何人か追い越しました。みかん畑は標高400メートル位のところまで広がっていたようでした。青少年野外センターの少し手前に50~60台は置けそうな広い駐車スペースがあったので、そこにくるまを停めます。白い乗用車が1台先に停まっていました。ここまで富士ICから1時間弱です。
 仕度をして出発します。野外センターまでは5~6分で、今日は休業でした。センターの敷地に入ると、三本松広場というところがいい展望台です。目の前に駿河湾が青く光っています。と、その向こうに蒼い大きな山並みが霞んで見えます。皆、一瞬どこの山???と分からなくなりますが、考えてみれば伊豆半島でした。日頃見なれない角度から見るとつい戸惑ってしまいます。三本松広場の裏手の炊事場の脇から登山道が始まります。道は直接山頂には向かわず、山頂から派生している尾根を西へトラバースして一旦山頂南西側の肩にでて、それから主稜線を詰めることになります。トラバース道は途中一部雑木林を通りますが、ほとんどが大きなヒノキの植林の中でした。間近に迫った花粉禍の季節が思い遣られます。
 20分ほどで主稜線にでました。分岐点で地図とコンパスを出して見方を説明し、位置確認をします。そうしている間に、後からきた60歳前後20人ほどの集団に追い越されました。わき目も振らずに登って行きます。彼らの後を追って行くと、間もなく植林が切れて視界が開け、眼下に清水港や、それを囲う三保の松原の海岸線が望めました。上から見ると、清水港が天然の良港であることがよく解ります。それから少々松林に沿って稜線を登ると、カヤトが刈られた広々とした山頂に多くのハイカーの姿が見えてきました。一歩一歩近づくにつれ、正面に堂々とした富士山が徐々に立ち上がってきます。山頂から見る富士山は圧倒的な存在感です。山頂には円い石版に展望図が刻まれていました。富士山はこちら側(南西側)から見ると、いつも見ている東や北側よりも一段と高く伸び上がっているように見えます。右側の稜線上の肩には宝永山がプクンと頭をもたげているのが分かります。その右裾では愛鷹山が富士に負けじとがんばっていました。しかし相手が富士では分が悪い。いくらアピールしたところで小さく見えてしまいます。愛鷹山もこちら側から見ると二つのピークが間隔を置いて離れ、反対側から見るよりずいぶん男性的な印象を受けます。あの山もまだ半分残っているので、いずれ行かねばなりません。愛鷹山の右肩には遠く箱根の山が見えています。白い頂はきっと駒ヶ岳や神山でしょう。箱根の右側から始まっている伊豆半島は、手前の駿河湾の水蒸気のせいでしょうか、茫洋とした蒼いシルエットになっていますが、しかしそのかたまりの何と大きなこと!
 山頂から見えるのはそれだけではありませんでした。海の反対側には南アの峰々も頭を並べていました。目をこらすと、いちばん奥まったところに南アの最北、甲斐駒ケ岳のピラミッドが小さく見えます。いったいここから何キロ離れているのでしょうか。その右側は鳳凰山です。その右手にはなだらかな櫛形山も見えます。甲斐駒ケ岳の左側には真っ白な大きなピラミッドの北岳、そして間ノ岳、農鳥岳が白い軒を連ねています。さらに左側中景に七面山、端正な篠井山、その左遠景に笊ヶ岳のピコピコ、さらにその奥に荒川岳、赤石岳の白い大きな頭、その左中景に十枚山がのっそりと大きく構え、その左肩奥には上河内岳の白い頭が覗いています。双眼鏡の向こうから、それぞれにまつわる山行の想い出がいっぺんに甦ってきます。ワォ! デジカメにそれらを収め、帰宅後パソコンで絵をつなげてみたら綺麗にパノラマが再現できました。山屋というのはそんなもんで嬉しがるのですから、我ながら結構単純なものです。
 人々で賑わう石版の展望図から少し離れたところにマットを広げ、春間近な海を眺めながらコーヒーなど淹れてのんびりします。一足早い春を満喫するひとときです。
 1時間ほどのんびりして腰を上げ、山頂から北側へ下るとすぐ車道の終点でした。電波塔へはゲートがあって近づけません。アマチュア無線のアンテナを立てた大型の四駆の横で発電機がまわっています。車内でCQCQやっているのかと思いきや、熱心にお弁当を食べていました。それからてれてれ40分ほど車道を歩いてくるまに戻りました。北斜面だからでしょう、ところどころ木陰にはまだ雪が残っていました。桜の蕾はまだ小さく固まったままです。駐車場は小型バスも加わって10台ほどに増えていました。
 次に、みかん畑の中の道を引き返し、麓の由比町の「東海道広重美術館」に向かいます。由比はかつての宿場町で、美術館は本陣跡に建てられています。そこでは安藤(歌川)広重をはじめとする浮世絵版画が見られます。この時代の版画の精緻な技巧には舌を巻きますが、宿場時代の由比本陣を説明する模型の中で3Dの小さな人間が歩きながら解説をするディスプレイには驚きました。スターウォーズでR2-D2というロボットが目の前の空間に3Dの伝言映像を投影して見せる場面がありましたが、ちょうどそのようなかんじで侍の格好をした人物が映し出されるのです。飛石づたいにちゃんと歩きます。21世紀を感じてしまいました。美術館の後は、隣の本陣の建築様式を再現したという「御幸亭」で皆でかしこまってお抹茶をいただきました。亭内を見学してからぶらぶらと旧東海道の宿場をあちこち覗きながら少し離れた駐車場まで戻り、最後に由比の特産桜えびを扱う「ゆい桜えび館」という加工場兼お土産屋さんに寄ってから帰路につきました。東名は秦野中井IC付近から先が事故渋滞だったので大井松田で降り、小田急線の新松田駅前にて解散にしました。
 皆さん、お疲れさまでした。ちょっと、と言うか、ぜんぜん歩き足りませんでしたが、のんびり春気分を味わってもらえたようなので許してちょうだいませ。

浜石岳でのんびり

〈コースタイム〉
青少年野外センター300m手前大P(10:05) → 浜石岳山頂(11:05~12:05) → P(12:50)


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