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雨ヶ立山
‐道なき奥利根の静かなる逸品‐
金子 隆雄

山行日 2001年3月24日~25日
メンバー (L)金子、小林(と)、越前屋、山口

 残雪期の奥利根シリーズ第2弾として雨ヶ立山へ行ってきた。昨年も同じ時期に同じコースで計画したが、時ならぬ大雪のため須田貝ダムまではどうにか辿り着いたがそこでおしまいだった。失敗すると気にかかってどうしても登りたいので再度計画したのだった。
 前夜に車で出発し0時30分頃に須田貝ダムに到着。ゲート前のアスファルト上にテントを設営し寝酒を少しやってから就寝。

3月24日 晴れ
 快晴の天気に気を良くし張り切って6時40分に出発。橋を渡り矢木沢ダムへと続く道を5分程辿り、適当な所で左の植林された杉林に分け入る。林道を横断し更に奥に進み、目指す南東尾根の1115mピークから派生する枝尾根に取り付く。登るにつれ傾斜が強くなるこの枝尾根を登るのに2時間半を要して、ようやく南東尾根の1115mピークに立つ。
 南東尾根に乗ってしまえば後はそれ程大きなアップダウンがないので快適な稜線歩きとなる。雪は思ったほど多くなく、1~2m程度だろう。念のためワカンも用意してきたが使用には至らない。1182mピークの少し先には送電線用の鉄塔があるので、現在地確認の格好の目印となる。
 1319mピークを過ぎると周囲が開け、尾根も広くなりとても気持ちの良い稜線漫歩が満喫できる。樹林越しに目指す雨ヶ立山の山容も望めるようになってくる。ふっくらと丸みを帯びた山容は女性的な感じがする山だ。やがて尾根は二重山稜となり1430mくらいのブナ林の中で今日の行動を終了する。平らなので整地にも時間がかからずテント設営はすぐに終ってしまう。
 まだ陽は高く時間もたっぷりあるので、外へマットを出して水を作りながら酒盛りを始める。風もなく暖かくて、ゆったりとした時間が流れていく。気がつけば既に夕方近く、少し寒くなってきたので場所をテントの中へ移す。夕食は食当の小林さんが用意してきてくれた、野菜たっぷりのキムチ鍋だった。飲み始めた時は、こんなに早くから飲んだら酒が足りなくなるなどと言い合っていたが、そんな心配は無用で、結構早く寝たので足りなくなるということはなかった。

3月25日 曇り
 今日は雨ヶ立山までピストンするため6時にテントを出発する。生憎の曇り空で展望は期待できないかもしれない。右側が切れた斜面をトラバース気味にしばらく登り、急な雪壁状の斜面を登り切ると雨ヶ立山の肩に出る。更に50mほど緩い雪稜を登ると山頂に着く。幕場から40分の登りだった。
 山頂に着いたときはガスっていて何も見えなかったが、しばらくすると時々ガスが切れて展望が利くようになる。周りにはここより更に高い山々が連なっており、白い城壁にぐるりと取り囲まれているようだ。布引山方面から山スキーのパーティーが登ってきた。彼らは山頂から宝川方面へ滑り降りるとのことだ。
 30分程山頂にいて、来たルートを引き返す。テントを撤収していると下からもう一組の山スキーパーティーが登ってきた。山頂で会ったパーティーの仲間だとのことだ。更に歩いて登ってきた二人のパーティーが通り過ぎていく。今回の山行で会ったのはこの3パーティーだけであった。
 撤収を終り8時20分に下山を始める。そんなに急いだわけでもないがやはり下りは速い。1115mピークからは登ってきた枝尾根を忠実に下るのは大変なので途中から右の沢の中を下った。樹林帯のような沢なので雪崩の心配はないが雪はかなり深くて膝上程度まで潜る。だが下りなので勢いに任せて突っ走る。雪渓が切れたところで右の小尾根を乗越すと見覚えのある林道に出て、それを突っ切ると車道に出る。昼前には車まで戻ることができた。

 この雨ヶ立山は残雪期であれば難しいところもなく、雪山入門コースとして初心者でも安心して登れるだろう。また上半部の広い尾根やブナの林はとても気持ちの良い場所なので、春の週末をのんびり過ごすのには格好の場所ではないだろうか。山スキーが好きな人にはスキーコースとしてもお勧めできる。お気に入りの一つに加えたいと思う。

〈コースタイム〉
24日 須田貝ダム発(6:40) → 1115mピーク(9:05) → 1182mピーク(10:30) → 幕場(1430m)着(13:30)
25日 幕場発(6:00) → 雨ヶ立山(6:40~7:10) → 幕場(7:30~8:20) → 1115mピーク(10:20) → 須田貝ダム着(11:20)
雨ヶ立山ルート略図

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