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五月合宿 北ア・双六岳周辺
その4 笠ヶ岳縦走隊
小堀 憲夫

山行日 2001年5月3日~6日
メンバー (L)紺野、小幡、越前屋、小堀

 やはりたまには北アルプスに会いに行かなくてはいけない。近所の森深い山ももちろん良いが、槍穂の勇姿は特別だ。今回、濃いガスに目隠しをされたまま鏡平まで登ったので、翌朝、テントを出ると突然目の前に巨大な槍ヶ岳がいた。朝日を浴び、凍てつき輝くその圧倒的な存在感に、しばし言葉を失った。
 連休に山に入るかどうしようか迷っていたが、紺野さんに誘われて行くことにした。2日の夜、出かける時点で雨が降っていたが、連休中は回復するという予報を信じ、越前屋さんの車で出発。途中現地近くで物凄い豪雨地帯を通過した後、安房峠まで入った。有料道路出口の屋根付きトイレの脇にテントを張り仮眠、のつもりが寝酒の杯を重ねているうちに朝になっていた。久々の北アルプスにおじさん達の血は騒ぎ、鎮めるのに時間がかかったのだ。翌日の計画を再検討し、悪天を押し笠ヶ岳へのダイレクトルートを登るのを取りやめ、逆ルートで双六岳に先に登ることに決定。それでも辛うじて小1時間ほど横になった。
 翌朝どうにか雨も上がり、新穂高温泉めざして車を走らせていると、福間隊から携帯電話に伝言が入った。新穂高温泉下の駐車場で朝食を取るところだという。今回の合宿、この携帯電話がこの後も大活躍することになった。そばまで行くと、道下の河原の駐車場で福間隊らしき集団が出発の準備をしているのが見えた。車を降り、
「モートー!」
 このモートー・コールは本当に便利だ。三峰の仲間を直ぐに確認できる。向こうも直ぐに気がつき合流。つい先日会ったばかりなのに、皆にこにこ歓談。仲間との邂逅は何故いつもこうも嬉しいのか。
 すぐに前後して出発し、2パーティーは、抜きつ抜かれつワサビ平経由で鏡平を目指した。雪山フル装備は流石に重い。やがて隊列が長くのび始め、沢をつめ始めるころには元気の良い越前屋さんと小幡氏の2人ははるか前方に見えなくなった。スキー板が余計に重い福間隊も井上さんが遅れはじめ、分岐点を越えた時には大分離れた。そこからは、いくら登っても登っても着かないといった感じ。ザックの重さが腰にドッシリ来た。最近ボッカをサボっている付けが回ってきた。やがて濃い霧が出始め、前後の連絡にここでも携帯が活躍した。
 鏡平のテン場に到着した時には、皆くたくたに疲れていた。それでも命の水で喉を潤し、腹も満たされると宴会モードに突入。2パーティー合流の宴会は大いに盛り上がった。
 翌朝の朝日を浴びた槍穂の話は最初にしたが、実に感激した。快晴の中、槍穂に励まされながら、弓折岳めざして急登にあえいだ。小堀はサングラスを忘れ、井上さんのゴーグルを借りた。皆、日焼け止めを塗りたくっている。まあ、日焼けの悲惨さは知っているが、おやじどもまでお化粧する姿には少し抵抗があるな~。自分も塗ったけど・・・。汗をぬぐい、回りの山々を見まわす。ここまで来ると流石に別世界の感が強い。ザックに腰をおろしゆっくりふかすたばこがうまい。
「いや~、贅沢な遊びだね~」とプハァ~。
 山スキーの別パーティーが隣を下って行く。途中から、福間隊も板を着け滑り始めた。途中、藤井隊と携帯で連絡を取り合う。もう殆ど無線機状態だ。なんとか無事合流できそうだ。双六のキャンプ場に着くと、黒焦げの野口さんが、例のごとくカラカラカラと笑顔で待っていた。まるでヒマラヤ遠征隊だね。そこでついたあだ名が「シェルパ野口」 やがて藤井さんが華麗なるテレマークターンを決めつつ双六の斜面を下ってきた。これまたマックロケのニヤニヤニヤ。開口一番、
「だれか何か甘くて水っぽいモノない~?」
 おお、先発隊はひもじい思いをしていたのね、可哀想に、と早速ジュースを差し入れた。
 そして暫し歓談、のつもりが大勢集まって嬉しいのと天気が良いのでのんびりしているうちに、腰が座ってしまった。それでもやる気満万の紺野隊長と越前屋さんは福間スキー隊と共に双六ピストンに出かけた。その内箭内さんも別パーティーでやってきた。その夜も前夜にまして賑やかだったことは言うまでもない。
 翌朝、我々つぼ足隊は、笠を目指して少し早めに出発した。皆に見送られて旅立つ気分、なかなか良いもんだ。
 ところが、これがまた長い道程だった。結局今回時間と体力の面で笠の岩稜ルートは諦めて、途中で降りることになった。運良く、抜戸岳で越前屋さんの知り合いに会い、穴毛谷が下降に使えることを教えてもらう。おかげで楽に下山できた。いくつもの雪崩の跡を急ぎ足で下るのはスリルがある。その夜は温泉に入り、刺身などを買出し、新穂高の駐車場でのんびりし、翌朝早くに帰京した。
 しかし、山で仲間に会うのって、なんであんなに楽しいんだろう。普段だって下界でしょっちゅう会っているのにね。今回、感激したこと。
(1) やっぱり北アルプスは凄い!
(2) やっぱり携帯電話は便利だ!
(3) やっぱり山の仲間は良いネ!

〈コースタイム〉
5月3日 新穂高温泉(9:30) → ワサビ平(11:30) → 鏡平(16:30)
5月4日 鏡平(7:30) → 弓折岳(9:25) → 双六小屋(12:30) → 双六岳往復(13:45) → (14:30)
5月5日 双六小屋(6:30) → 弓折岳(7:45) → 大ノマ乗越(8:30) → 秩父平(10:30) → 抜戸岳(12:30) → 笠新道頭から穴毛谷へ下降開始(13:20) → 小池新道(15:50) → 新穂高温泉(17:00)
五月合宿

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