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ビーコンの訓練+雪訓@富士山
服部 寛之

山行日 2001年4月22日
メンバー (L)服部、小幡、福間、越前屋、紺野、斉藤(誠)、(内山)

 五月合宿をにらんだ定例の雪訓だが、合宿の参加予定者はベテランばかりのうえに、ルームでの雪訓募集でも雪山初心者はいなかったので、雪崩ビーコンの操作練習を主体に雪山の勘を取り戻すための軽い雪訓を組み合せて、富士山にて日帰りで行なうことにした。ところがそこに、合宿には入らないが雪上技術を学びたいという初心者が2名加わったので、ベテランのビーコン練習と平行して彼らにも基本的な雪訓を行なうことにした。
 9時にゲートを開けるスバルラインに合わせ、7時半にJR八王子駅に集合し、服部のくるまで出発。途中大月ジャンクションの先の谷村PAでプリントを見ながらビーコンの仕組と練習の手順を簡単に説明する。
 スバルラインで五合目に上がると、まだ時間が早いのか、観光客はちらほら。仕度をしていつもの雪訓場所に向かう。雪訓パーティーは数パーティー来ていたようだ。今年のスバルライン沿いには五合目に至る手前からかなりの残雪が見られ、みやげ物屋前の登山道入口にも1mほどの積雪があったので、五合目でも充分雪訓ができると思ったのだが、いつもの斜面(泉ヶ滝の二俣を六合目に向かい樹林帯を抜けた最初の斜面)に行ってみると、意外にも黒い地面が出ていて傾斜の急な部分に薄く雪が残っている程度であった。そこで次の樹林帯を抜けたところの隣の斜面まで行ってみたが、果たして情況は同じであった。期待を裏切られ、こんなこともあるのかと驚く。しかし、樹林帯の中はまだ雪が大量に詰まっているので、木がじゃまくさいがそこでビーコンの捜索練習を行なうことにする。まず登山道でビーコンの発信・受信チェックをしたあと樹林帯に入り、福間、紺野、越前屋の組と、服部、小幡、斉藤、内山の組の二手に分かれ、12時までしばらくの間捜索の練習を行なう。樹林帯の奥でやっていた福間組の方からはときどき悲鳴とも歓声ともつかない叫び声が聞こえてきたが、休憩時に福間さんに聞くと「実際に人を埋めてやってみました」とケロッとした顔で言う。実戦的なのか、九州女の大胆さなのか。
 昼の休憩後、福間組の3人には複数のビーコンを埋めた捜索練習をやってもらい、残りは小幡氏に手伝ってもらって100メートルほど上の急斜面で斉藤・内山両氏相手に滑落停止など雪訓を行なうことにする。ビーコンに飽きたのか、或いは大胆なリーダーにあとの二人が悲鳴を上げたのか、福間組の練習はなぜか短時間で終了しこちらに合流してきたので、その理由は不問に伏したまましばらく一緒に滑落停止を練習する。午後の軟雪状態のためピックを刺してもなかなか止まらないが、二人とも一応型通りできるようになったところで、ザイルを張ってプルージック登攀の練習、続いて懸垂下降の要領でザイルに身体を預ける感覚をおぼえてもらう。その間、紺野氏は足慣らしのためか周囲の斜面を歩きまわったり、越前屋氏は折をみて小幡氏と肩がらみで流す練習などを自主的にやっていた。
 という具合で雪訓を切り上げ、登山道に置いた荷物のところへ戻ってみると、汚らしく物が散乱していた。雪訓中コンビニの袋が風に舞っているのを誰かが捨てたゴミかと思っていたが、カラスに荒された自分らの荷物だったのだ。荷物を置いて離れるときは鳥や動物に荒されないよう注意すべきだったのを忘れ、うかつであった。行動食を漁られ高級ラーメンを食い逃げされた者は地団太踏んで悔しがっていた。お気持ち、お察しいたします。彼の前でカラスの話は当分ご法度である。(後日鳥キチの人から聞いたところによると、小屋の中に10人入って数人が出てくるとあと何人小屋に残っているのか解るほどカラスは賢いという話であった。)また高価なビーコンをザックに仕舞わずそのまま道端に置きっぱなしにしたのもうかつであった。何も持ち去られなかったのは幸いであったというほかない。
 ビーコン初体験の越前屋さんは、ルームでの報告で、見つけるのに苦労し埋まったら大変だと思ったと語っていたが、万一実際に使うはめになっても有効に使用できるよう練習を重ねていってもらいたいと思います。また、雪山初心者の斉藤・内山両氏も雪上技術の練習に積極的に取り組んでくれて、こちらとしてもやった甲斐がありました。
 雪訓場所について帰路気づいたことがある。スバルラインの五合目終点に至る少し手前谷側に広い駐車スペースと「御庭入口」というバス停があるが(余談だが、そこを入った奥庭荘の庭先には野鳥の水浴び場がつくられており、富士山五合目の格好のバードウォッチングポイントになっている)、その付近の山側にビーコンの練習に丁度良さそうな雪の斜面が見えた。斜面には道路から簡単に取りつける。次回来たときには偵察してみる価値はありそうだ。そこでできるなら、登山道の往復が省ける。
 撤収してくるまに乗ると当然風呂→ビールという方針に傾くが、今回は「紅富士の湯」に行った。富士吉田からR138を東進し山中湖に出る直前右側にある。男女とも種々の浴槽がある大きな風呂場から書割でない本物の富士山が正面に眺められ、露天もあり、生ビールからちょとしたものまで食せる大きな休憩室がある。みんな満足して、入浴料700円は充実の割安感であった。その近くには造りたての地ビールを飲ませる施設もあるようで(看板を見た)、要チェックの人間も多いのではないか。


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