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鷹ノ巣山集中山行
その5 榧ノ木尾根
内山 弥生

山行日 2001年6月2日~3日
メンバー (L)服部、藤本、天内、内山

 鷹ノ巣山集中山行、榧ノ木尾根パーティーのリーダー、服部委員長は、山頂につくまできっと不安だったのだ(と、思う)。そして実際、とっても大変だったのだ(と、思う)。(ご本人はそんなこと、言いませんでしたけど)
 なにしろリーダー以外のメンバーは、全員今年の4月以降に入会した新人ばかりで、テント山行なんて、やったことがないに等しい。大きなザックも持っていなかったし、テントを背負って登ったこともないし、ガソリンストーブの火もつけられない。(自分たちのことながら)困ったモンですよね。(ほんとうはもうひとり、ベテランの方が参加予定。でもお仕事の都合で不参加でした)
 山行前のリーダーからの連絡メールには、「荷物はなるべく軽くしましょう」「リーダーとして、パーティー全体の荷揚げ力がいまいち読めないので」送られてきた持ち物リストには、「なくてもいいもの」の三角印がいっぱい。
 そうでしょう、そうでしょう。その心配、よーくわかります。荷揚げ能力に関しては、私自身が、一番、不安だったので。

 1日目。快晴。倉戸山から榧ノ木(かやのき)尾根の道は、広々として明るく、木々の緑は日に映え、吹き抜ける風は心地よく、ヒグラシの声が幾重にも降りそそぎ、鳥は歌い・・・。でも、70リットル(本体60リットル)のザックが重い。軽量化の結果、中身はホントはガラガラだったのですけれど。
 当日は八王子駅に集合し、リーダーの車で倉戸山登山口(女ノ湯・鶴ノ湯源泉)へ。ここで共同装備を皆で分担して、登る。今回のコースは鷹ノ巣山(1,737メートル)までの標高差1200メートル、登りのコースタイム4時間半。そのうち途中の倉戸山(1,169メートル)まで、時間にして3分の1の1時間半で、高度差半分の600メートルを登ってしまう、前半勝負、後半楽勝型。
 それでも、登り出す前に、「ゆっくりいきましょうね!」なんて、つい、言ってしまう。「集中の4時までに着けば、いいんですよね」。リーダーはあきれ顔半分、あきらめ顔半分で、「今回は4時すぎても、別においていかれるわけじゃないですから」。このとき、まだ、10時前だったのですが。
 登り出すなり、急登。すぐに汗が流れ落ちるが、ひんやりした風がなんとも心地よい。はじめは左右に奥多摩湖の水が見えた。登るにつれて林の中の尾根は広々としてくる。明るい尾根。ふかふかの落ち葉。以前、紅葉の季節に倉戸山から水根山まで登った山の先輩が、「とても好もしい山でした」と、メールをくれた。ほんとうに気持ちのいい道だ。カナカナカナ、とセミの声が降りそそぐ。6月なのに、ヒグラシ? でも、そうとしか思えない。なつかしく、遠い声。
 「右と左で山の色が全然ちがいますね」、と藤本さんは余裕の鋭い観察。いわれてみると確かに、日差しの中の左側は若葉が明るいみどり。暗い右側は、落ち葉の色が暖かい、赤みがかった茶褐色の、奥行き深い林。私は足元ばかりみていたので、全然気がつかなかった。(気がついたのは、なんとアリさんが多い山道だこと、ということぐらい)2番目を歩く天内さんは、年代ものの一本締めザックを背に、運動靴で軽ーく登っていく。ふたりとも、新人といっても、違うなあ。私は、最初の休憩が、とってもうれしい。おにぎり、食べよ。
 倉戸山山頂は通過。もう15分ほど先まで歩いてから、2度目の休憩。この後も50分歩いて10分休み、と、規則正しくコースタイムをきざむ。ひとりで歩いているときは、湖が見えた、といっては立ち止まり、山頂だったら絶対に休憩し、峠に着いても休憩し、セミを見つけたらさわってみるし、と、遊びながら歩くところだけれど。と、いっても、1回の休む時間はとても短く、あとはひたすら足元をみつめて登る。山頂でのお昼寝を、楽しみに。いろいろな歩き方が、ありますよね。
 ゆるやかな登りがまた少し急になって、榧ノ木山通過。水根分岐のあたりは笹が多い。ようやく石尾根の、見覚えのある道にでた。ここまでくればひと安心。このあたりから、道のわきの笹の中をザザザッと、猿が走る。奥多摩で猿にあったのは初めて。雲取山荘の常連さんが、鷹ノ巣あたりには、とても大きなサルがいて、石尾根を歩いている時に、あれ、あんなところにヒトが座っている、と思って近づいてみたら、サルだった、と言っていたけれど。ついでですが、その常連さんによると、鴨沢から雲取山(や七ツ石)へ登る途中、堂所の水場手前のベンチの下の崖には熊棚があるそうで。知らないときは平気だったのだけれど、今はそのベンチには絶対近づかない。(ベンチの下の方に熊棚ってことは、熊さんがベンチで食事した、ってことだったりして)鷹ノ巣ではシカにもあった。東京にもこういうところがある、と、いうのはうれしい。サルは怖いけど。
 鷹ノ巣山東登り口でザックをおいてひと休み。ここでザックの重さくらべ。リーダーのザックは、ずしん、と、重くて持ち上がらなかった。私のザックの評価は、「軽い」。実は、軽量化を心がけた結果、分担の朝食分の食糧を入れても、手持ちの40リットルでじゅうぶん。でも、当日受け取る共同装備がかさばるものだったらアウトだな、と、心配になり、前日仕事の帰りに山の店によって、70リットルを購入。当日は大きなコッヘルを分担したので、大きなザックでよかった。でもザックだけで重さ2キロ以上というのは、ちょっと痛い。それにしても、結局、足の状態が万全ではないリーダーに、テント本体など、一番重い荷物を負担させてしまって、申しわけなかったです。(しかもメンバーの新人三人、だれも車の運転ができず、これもまたリーダーの「お荷物」に。)
 そこから30分ほどでやっと、山頂。2時20分。登山口からコースタイムどおりの4時間半。ツツジが満開。ゆっくり、遊ぶ。水根あたりで、他のパーティと会うかな、と思っていたが、三峰のひとはだれもいない。鷹ノ巣谷から登ってきたらしい二人連れ(ひとりは外国の方)が、「コングラッチュレーションズ!」と握手をしていた。
 そのうち雲行きがあやしくなり、雨。避難小屋へ向かう。途中で雷。小屋にはもう、雲取山コースの野田さんと小林(勝)さんが着いていらした。それからぞくぞくと、沢の人たちが登場。疲れた、キツかったと口々にいいながらも、元気。沢をとっても楽しんでいらしたのが、よくわかる。小林とみさんは、大きな鹿の角、金子会長さんは川魚を1匹、ゲット。
 それから皆で、薪を集め、テントを張り、水を汲む。榧ノ木尾根組は、全員で水場にでかけたが、紺野さんはなんと20リットルのポリタンク(避難小屋にそなえつけてあるもの)をザックに入れて、皆のために水運び。拍手!
 小屋の前のテーブルで各グループが夕食のしたくを始めて、びっくり。なんで?なんで?なんで?お肉はでてくるし、野菜も丸のまま、ごろごろ。にんじん、たまねぎ、ゴーヤ、キャベツにパプリカ、お漬物、おとうふ。あとでじゃがいも、やまいも、長ねぎ、ヤキソバ。野菜いために、おなべに、うどんに、鉄板焼き、チンジャオロースーと卵スープ(これはうちです)。ご飯はしっかりお米から炊く。ワインに日本酒、ウイスキー。コーヒー。
 テント背負って、シュラフやマットを背負って、尾根ならまだしも、沢のひとたちがこんなに荷揚げしてきていることに、あぜん。ここは、聞きしにまさる、グルメ山岳会だったのですね・・・。
 こちらは、荷物が重くて他のメンバーに遅れて迷惑をかけるといけない、と、朝食のラーメンの野菜はチンジャオロース―のピーマン(藤本さんが個背負って来た)を横流ししてもらうことにして、キャベツはあきらめ、かわりに、乾燥ワカメと乾燥ネギ。缶詰のコーンは重いから、ちいさなビニールパック入りに。しいたけは4人分で2個。ゆで卵だって、4人で1個。ケチだからじゃ、ないのよ。軽量化です。(シュラフカバーもなし。雨は降らないと決めて着替えもなし。メモ帳さえ置いてきた)それなのにこの、山中のリッチな食材の競演を見ると、あの、軽量化努力は、なんだったのだろう???と思ってしまった。
 食後も皆さん元気。そのエネルギーに圧倒され続けた。
 朝も元気で食事つくりとテントの撤収、あとかたづけ。でも、昨日一番大声で元気だった人が、起きられずに沈没していた。不死身じゃなかったのね。
下りは浅間尾根から奥集落へ。大元気で走り回る、菅原さんちのモトくんが先導してくれたので、1時間少々で着いてしまった。
 榧ノ木尾根組リーダーの服部さんとメンバーの皆様に感謝します。「次は沢から!」と言えないのはちょっと悲しいけれど(なにしろ高い所がコワイし、バランスが悪いので)、まずは荷揚げ力強化につとめますね。

集中山行榧ノ木尾根隊 リーダーはどこ?

〈コースタイム〉
女ノ湯(鶴ノ湯源泉)(9:50) → 1本(10:40~50) → 倉戸山通過(11:30) → 1本(11:43~55) → 1本(12:46~55) → 鷹ノ巣山東側登り口(13:45~55) → 鷹ノ巣山(14:20~55) → 鷹ノ巣避難小屋(15:10)


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