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編集後記

 今回の岩つばめは、編集作業が大幅に遅れてご迷惑をお掛けしました。原稿を〆切り前にくれた人達もいたのに、大変申し訳なく思っています。また、せっかく始めた「三峰人名録」も取材ができずに早くも途切れてしまいました。「俺 食人!」もお休みです。
 編集担当者が三峰を軽んじているのではと誤解されるといけないので、少し言い訳です。正直な話し昨年後半は仕事にほとんどエネルギーを吸い取られました。毎晩遅くまで仕事の日々が続き、家に帰ると時間も気力も残っておらず、ただ酒を飲んで寝るだけという日々でした。過去数年のサラリーマン生活の中でも、最も消耗度の激しい忙しさでした。
 最近私以外にも、消耗し切った顔でルームに辿り着く人達がチラホラ観うけられます。N氏、F嬢、N嬢・・・。みんな大丈夫? これも慢性的不況で荒んだ世相の反映でしょうか。幸い私は新年から少し環境が改善されることになりましたが、まだまだ同じように働かなくてはならないことに変わりがありません。
 「旅はまだ終わらない。みんな頑張ろうぜ!」
 この原稿を書きながら、中島みゆきの「ヘッドライト・テールライト」(プロジェクトXのエンディング)を聴いていたら泣けてきました。
 さて、言い訳と不景気な話しはこのくらいにして、山の話しにしましょう。今回の例会山行も充実していました。丹沢の沢登り講習会で戸沢のベースに戻ってから、生まれて初めての体験に、流の中に座り込んだまま放心状態でしばらく動かなかったF嬢の様子が忘れられません。今回の例会中最も意気込んでいた黒部・上ノ廊下は、仕事の都合でドタキャンせざるを得なくなり、メンバーに迷惑もかけ、自分自身も非常に悔しい思いをしました。記録を読むと感動がガンガン伝わってきて、「また次の夏があるさ!」と一人空しく自分を慰めています。その代わり、御神楽への参加はその無念さを充分帳消しにしてくれるものでした。この沢は3度目の正直で漸く実現した計画でした。当然思い入れもあり、特に中流域の川旅と会津駒へのツメはこれ以上ないと言うほど爽快で、今までに行った沢ベスト3に入るほどの素晴らしいものでした。そして、谷川・芝倉沢出合への集中は、今の三峰の元気が全部集まったような、実に楽しい例会でした。辺りが暗くなり、最後のパーティーが焚火サイトに到着した時の、あの何とも言われぬ高揚した一体感はいったい何なのでしょうねー。縄文人達も、獲物を担いで棲家に戻ってきた仲間に同じ気持ちを抱いたのだろうか。そんなことを思わせる、焚火が弾きがねの、身体の深い所から沸いてくる感情ですね、あれは。
 昨年は11月に起こった同時多発テロで、アメリカ式の一人勝ち社会が、もう立ち行かなくなったことを実感させられた1年でした。以前にもこの欄で使った言葉ですが、これからの社会のコンセプトは確実に『共生』ということになるでしょう。前出の言い訳の話は、図らずも労働社会の『競争』の一面を切り取って示していますが、『競争概念』自体が人間社会存続の為にも見直されるべき時期に来ているような気がします。
 「我々三峰山岳会の山行行為は自然との共生関係を実感する為の『祈り』そのものである!」
ちょっと大袈裟ですね、笑。でも、マジメな話、この社会の中で生かされていることのありがたさに感謝しつつ、今年1年も自然と、仲間と、仲良く遊んでもらいましょうね。

小堀

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