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只見川・袖沢・御神楽沢
飯塚 陽子

山行日 2001年9月22日~24日
メンバー (L)野口、箭内、小堀、福間、小林(と)、飯塚

 9月21日(金)PM10:30、JR日暮里駅前に御神楽沢隊全員集合後、野口号・箭内号の車に分乗し出発。途中「道の駅たじま」にて仮眠し、翌日、三岩岳登山口のある小豆温泉前の駐車場に到着。箭内号を会津駒ヶ岳の登山口近くの林道にデポし、身支度を整え出発したのが、AM7:50。私にとって、3度目の正直(過去2回大雨による敗退)の御神楽沢遡行は、9/22の快晴の朝、こうして順調にスタートしたのであった。
 御神楽沢へは、現在袖沢林道が通行禁止の為、この登山口から三岩岳方面へ一度登り、途中でミチギノ沢を下降して、ようやく辿りつくことができるという、山の奥深い原生林の中を流れている沢なのである。
 さてまずは三岩避難小屋を目指して、野口リーダーの快調なペースに、皆元気に(騒がしく?)ついて行く。山はまだ色づいていないが、時折そよぐ風は、すでに冷たい秋風のようである。道中では、今晩のおかず(きのこ)を探しながら、福間先生に手ほどきを受け探し始めるが、まだちょっときのこには早いせいか、弟子達はあまり見つけられなかったが、先生はブナハリ、ヒラタケ、イグチ等のきのこを、しっかりとゲットしてくれたのであった。こうして更に快調にペースを上げ、AM11:00に三岩避難小屋に到着。この小屋は、2階建てのログハウス調の小屋で、中は相変わらず清潔に保たれていた。この小屋で以前、御神楽沢大雨敗退時に、2夜連続のダメ押しの宴会をし、また冬の三岩岳に登りに来た時も、小屋内のマキストーブを使い、年越しの宴会をさせてもらったりと、私にとって、大変お世話になった小屋でもあるのだ。そんな懐かしい小屋ではあるが、今日はお邪魔はせずに、御神楽沢に行ってきます!と小屋に別れを告げ、小屋のすぐ上の分岐を窓明山方面の道を辿り、分岐から歩いて初めのコルに降りる。このコル辺りからミチギノ沢へ降りるのが比較的ヤブが少なくて良いという情報を、同じ御神楽沢(彼らは三岩岳ピークから下降するとのこと)を遡行するパーティーから聞いたが、ここは結構な密ヤブであったので、次のピークを越えたコルに行くことにした。そしてそのコル付近(湿原が窓明山方面に向かって左側に広がっているあたり)から、リーダーが先頭をきってヤブ突入後、ほどなくしてミチギノ沢の支流を発見し、皆の歓声が上がったのである。この支流に出られれば、このミチギノ沢は特に悪場もないので、ガンガン降りられる。すぐに前を行く1パーティーに追いついてしまい、そのパーティーを抜きながら降りていく途中、滑って転んでしまった福間さんの左手の中指が、脱臼してしまうというアクシデント発生。しかし箭内さんが箭内整体術で、きっちりとはめ込んでくれたので事なきを得たが、指の腫れと痛さは相当残っていたようで、その指でのその後の沢登りはかなり辛かったと思う。(アネゴ、強いっ偉いっ!)箭内さんは赤十字の救急講習会で、この技を身に付けたとのことで、改めて救急講習会等の大切さを感じた一件でもありました。
 さて途中河原歩きの様なミチギノ沢の下降もあったりしたが、1130m付近の二俣からは、ゴルジュが始まり、高捲きをしながらの下降になる。高捲き上部では湿地帯があって足がはまりそうになったり、残置ロープを伝って沢床に降り立ったりと、3、4回程は大きな高捲きをしながらの下降をしただろうか。この長~い下降に、いい加減飽きてきた頃、前方に大きな谷あいが見え、その谷を囲む山の斜面が夕日に染まりつつあるのが望まれるようになってきた。メンバー全員、御神楽沢の出合いが近いとソワソワしだし、最後は駈け足で、遂にその憧れの「御神楽沢」と御対面をしたのである。とうとうとした流れの御神楽沢の水を、私はすぐに飲んでみた。その甘くておいしくて澄んだ水に、念願の御神楽沢に来られた事が実感でき、感激で胸が一杯になったのである。
 あたりは日暮れ間近―。ひとまずそれぞれの感激は胸にしまい、御神楽沢との出合いミチギノ沢左岸上に、2張の幕を張り、焚き火を起こし、すばやく宴会態勢を整え始める。そしてすっかり冷えこんだ薄暗い中を、オナゴ達の期待を背負わされた3人のオトコ達は、今晩のおかずを求めて、釣りに出かけてくれたのである。そして、この日の軍配は、最後まで粘って岩魚一尾を釣ってくれた、こぼさんに上がったのだった。この貴重な岩魚とキノコと、とみさん持参の高野豆腐のおみそ汁、そして野口リーダー愛用のブリカンで炊いてくれた混ぜご飯・・・、どれも本当に美味しかった。皆で「沢ではこのメニュー(現地調達)が一番だよねっ!」と、それらに舌鼓を打ちながら、満点の星空の下での「御神楽沢入渓祝の宴」は、初日から盛大に行われたのである。炎に照らされたみんなの笑顔は本当に幸せそうで(もちろん私も)、誰もが100%の満足感に浸っていたと思う。こうして御神楽沢と少しの?お酒に酔いしれながら、焚き火が燃え尽きるまで、宴は続いたのであった・・・。

御神楽沢の夜はふける

小林 とみ

 ―「み・か・ぐ・ら」、何と美しい響きでしょう。そう思いませんか? 響きだけでなく本当に美しい沢なのです。―
 昨日、御神楽沢出合にテンパルことが出来たので、今朝はのんびりムード。朝食はじゃんけんから始まる。何のじゃんけんかというと、さけ、たらこ、おかかお茶漬けの具を賭けての勝負です。何事にも真剣になり楽しむことができる今回のメンバー。小豆温泉より一緒だった5人パーティーが先行するがなぜか暗~い。明るく元気なMOTOパーティーも8時25分出発する。空はどこまでも青く、風も気持ちよい。両岸にはススキが揺れている。空も風も秋。腰まで入りヘツルとさすがに寒い。仲間は膝上までしか濡れていないのに、このさみしい現実はずっと続くのでした。斜瀑2段を右岸から高まき下降すると飯塚さん「臭う」と言う。何!何!岩魚が一匹、近づいても動かない。野口さん手掴みで一旦はゲットしたが逃げられてしまった。10m近い逆くの字の美しい滝、そしてナメ滝と進むと楽しみにしていた岩畳地帯に10時着。自然は長い年月をかけて芸術品を創り出す。中心に勢いよく水が流れ入道雲のようになって落ち、つるつるに磨かれた流木がひっかかりがんばっている。色づいた葉が1枚、枝の先に張りついていていいアクセントだ。
 ゴルジュ、8mの滝を通過すると本コース最大難関地点10m大滝に11時着。4年前野口さんが遡行した時は途中で左側に飛び越えたとのこと。今回は水量が多く渡れそうにない。ザイルを出し野口さんのリードでスラブ状の水際を進み、ヌメル手前で一段登り右側へ回りこむように緑の中へ消えていった。ここから上部は見えず枝だけがゆれている。ドキドキワクワクいい感じの中、福間さんの後に続く。ブルージックは流れが悪いと思ったが濡れないだろうと、そのまま登り出す。しっかり効いたハーケンがあり、落口まではスムーズに来たが、私が寸足らずなのか、ザイルが張られ過ぎなのか宙吊り状態。つま先で立っているのがやっとでシュリンゲの動きが悪い。後続に「ザイルを緩めて」と伝えるが聞こえず。まったく動かなくなり、右手は潅木につかまりシュリンゲを繋ぐ事にする。ビナのかけ口にひっかかり左手での作業はスムーズにいかず、腕はパンパンになってきた。やっとの思いで繋ぐことができ、流れがよくなった。グレード対象外のドロ壁と意地悪なスタンスに苦労し使える物は何でも使いやっと乗越す。リードの野口さん、テーピングをしての福間さん、やはり技術と経験の差でしょうね。「ザイルを出すと沢らしくなるね」と余裕のお言葉でラストの校長先生が登り切り6人衆が揃うのに約1時間かかりこの上で暫し休憩。すぐ食べる人(誰だかおわかりですね?)釣り竿を出す人。ザックに寄りかかり澄んだ青空を見ていると私も青く染まっていく様だ。各自自分の時間を楽しんでいると上流から一人とび職のスタイルで釣師が下降してきた。釣り竿一本背中にしょってという感じ。きまっています。駒ヶ岳より下降し30分位上部に昨夜はテントを張ったとの事。この下が10mの大滝ですよ、と教えてあげ出発する。コバルトブルーの淵と小滝ゆるやかなナメ滝そして沢床が平らでガラスの様。太陽の光も手伝って何とも美しい。もたついてはいるがココはもう私の世界。釣師がもう戻ってきて先行する。黄色の網にはいます、います。岩魚は大きい。前回、野口さんがあきる程釣り上げたという所でまた釣り上げる。「私、一匹下さいって言ってみる。くれるわよね。」と同意を求め、張りきっていったが真剣に釣り竿と向かい合っている姿を見ると言えず終い。今回、軽量を考え食料は米と味噌だけ。後は現地調達の計画です。校長先生が釣り上げてくれた一匹ではさみしいよー!釣師を横目でみながら右岸をまき男性陣は釣り竿を出す。女性陣は巨岩の上で見物。野口さんすぐ釣り上げ「やった、やったネ」喜びの声をあげる。岩魚にカラビナを掛けている。大の字になり雲一つない青空を眺めながら思いっきり体を伸ばしていると「岩魚持っていった?」との声。逃げてしまったようだ。「よく捜したの?」息子に言う母親の厳しい口調に変わった。それに比べ「岩魚ビナ付けたままでかわいそう。」福間さん、飯塚さんのやさしいこと。―私も真剣だったのです。― 小堀さん見つけ出し一件落着。
 4~5mの滝をいくつか過ぎると広い河原状になり、左岸に釣師の小さなザックとシートがあり砂がきれいだ。記念の砂とみずを採ったのはこの辺だろうか?もっと手前だったかもしれない。懸垂で河原に降りたようにも思う。神楽沢は流程が長く記憶も断片的でルートにつながらない個所がある。3時頃よりテンバを捜しながら遡行する。疲れた。お腹の虫だけはグーグーと元気。早く幕場がないかその事だけ考え足もモタついてきた。ムジナクボ沢には先行パーティーがテンパっているであろう。3時30分ザックを置き幕場を探す。小堀さん上部まで偵察に行って下さったがいい場所はなく1440mにテンパることにする。草を敷きつめテントを張り、焚き火宴会の準備が手際よく整う。野口さん「ちょっと行ってくる」と出かけ次々と釣り上げ立派な岩魚が5~6匹並んだ。誰かさんが言った。「シェルパ野口」なんてもう言えない。そうです、これからは「フィッシュマン野口氏」です。みずの料理法を福間さんより教えていただき茎はゴマ和えに、実(?)と先は岩魚汁に、岩魚の玉子は醤油漬け、塩焼きの岩魚、骨酒も楽しみです。私は今日も先輩方の行動を見てしっかり勉強しました。まだまだ炎は燃え上がっています。

― 見上げてごらん 御神楽の星を
   小さな星の 小さな光を ―

 風が強くビブラートがきき歌声は一段と美しく響き渡っています。最後になってしまいましたが「ありがとう」を山盛りにしてリーダーに、仲間に、そして御神楽沢に贈ります。

憧れの岩畳地帯

福間 孝子

9月24日 1440m地点
 4時半に気合の入った早起きのトミさんに起こされる。今朝も朝食のお茶漬けの素の争奪戦に熱くなる。そそくさと準備をして出発。朝の沢は骨身にしみる。
 10mの滝は手前10mぐらいから落ち口あたりまでゴルジュになっているので、ゴルジュ手前から右岸を高捲こうと思い途中まで上がるが、大高捲きになってしまうので引き返す。覚悟をきめて胸まで漬かってゴルジュ突破。滝の真下すぐ左側の泥のルンゼを上がり、そのまま向こう側へ下った。朝から全身濡れてしまうのはちょっときついので思わず躊躇してしまったが、いったん濡れてしまうとどうということもなく、断然こちらのほうが早い。
 ムジナクボ沢出合迄約2時間、水量は1対1のわかりやすい出合だ。テン場は出合少し手前の右岸に2張りくらいのスペース有り。途中も何箇所か狭いけれど張れそうなところがあった。
 ムジナクボ沢を過ぎるとさすがに渓相はおとなしくなるが、小滝の連続であきさせない。適度に緊張が続く。つめが近づいてくるまで左、左へとルートをとる。最後水線がとぎれるところで右へ入っていく。入り口のところに赤いひもがついている。
 ここから涸れ沢をつめていくがとても歩きやすい。梅の実ほどもある大きな木苺の群落をくぐり、笹が覆い被さってきたなと思うまもなく、何の苦労もなく木道の登山道にとびだした。それも駒ヶ岳山頂すぐ下の木のベンチのあるところへだ。これぞドンピシャ。天気は快晴。すばらしい眺めと充実感に皆大感激だ。時間もめちゃくちゃ早い。
 しばしの放心状態のような休憩の後、登山者であふれる登山道を一目散で桧枝岐へと下る。途中でまいたけ探しをしたが素人に採れるわけがない。最後は桧枝岐で温泉と大盛そばでしめくくり、すべてがハナマルの楽しい山行だった。

いやーいい沢だった
〈コースタイム〉
9月22日(土) 小豆温泉駐車場(7:50) → 三岩小屋(11:00) → ミチギノ沢二股(14:00) → 御神楽沢出合(16:00)
9月23日(日) 幕場発(8:20) → 岩畳(10:00) → 大滝(11:00~11:40) → 幕場【1440m付近】(15:20)
9月24日(月) 幕場発(6:50) → ムジナクボ沢出合(8:20) → 5m二条の滝(8:50) → 稜線(10:50) → 車の止まっていた所(13:30)

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