トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ307号目次

日光白根山
服部 寛之

山行日 2001年9月30日(日)
メンバー (L)服部、大久保、藤本、内山、斉藤(誠)

 日光白根にはむかしむかし行った憶えがあるが、断片的にしか思い出せない。 ほとんど忘れているので、また行ってみる気になった。
 前夜土曜の夜、西武池袋線の練馬高野台駅に集って服部のクルマで行く。この駅は関越道練馬の入口まで2キロの近距離にあるが、地味な駅で、北口のロータリーはたいていすいていて楽にクルマを停めることができるうえ、ロータリーを取り巻いてマックとスーパーと酒売りのセブンイレブンとミスタードーナツがあって便利だ。
 関越道を沼田で降りて夜の120号線を金精峠方面へと突っ走る。沼田IC周辺はファミレスやらコンビニやらパチンコやらカラオケやらのケバケバしい電飾が闇中の台地に怪しげにかつ忽然と光っていて驚いた。ここはいつからこんな便利でいやらしい街になったのだろうか。
 11時頃菅沼の登山口に着いて幕を張り、例のごとく睡眠時間削減の前夜祭となる。今回久々の登場となった大久保氏が張り切ってうれしそうに仕切る。今年入会した藤本、内山、斉藤の各氏からもツマミと酒がすんなり出てきて、臨宴動作にも無理がない。こうしてこの楽しき悪しき伝統は確実に継承されてゆくのだ。
 12時過ぎに寝たときは我々の他に先着1パーティーのみだったが、翌朝5時過ぎに起きると、数パーティーに増えていた。標高1700メートルを越えるここではもうさすがに朝は少々肌寒い。
 撤収して、6時35分出発。残念ながら青空は見えず高曇り。笹原から樹林帯の上りにはいりてれてれ登って行く。道はいい。今回先導役はまだ一度もしたことがないという斉藤氏に先頭を任せたが、長足でズンズン行く彼に引っ張られていいペースで登って行く。速すぎず遅すぎずメンバーの顔を見ながらバテないようパーティーのスピードを保つのは重要だが、これをうまくこなすには場数が必要だ。1時間して一本。みんなエンジンの調子は良さそうだ。
 8時20分、弥陀ヶ池に出た。正面に白根山本峰が立っている。池の水は透明に澄んできれいだが、灰色の空を反映してか、周囲の森の色ともども精彩に欠ける。たまたま道の脇にいた写真家の人が話しかけてきた。
「例年ならこの時期、本峰の中腹は点々と赤く色づいていい感じになるんだけど、今年はダメだね」
 そう言われれば、赤っぽくなっている樹木も紅葉しているというよりは茶色に近く変色しているといった感じだ。この夏の渇水で葉がダメになってしまったのだろうか。
 沼の南側の縁で一本取り、いよいよ本峰の上りにかかる。もっこりとそそり立っているこのドーム(コニーデ式火山)の下部の疎林帯を抜けると、展望が開け、メロンソーダのミルク割りのような色合いになった弥陀ヶ池の向こうに、湯泉ヶ岳や根名草山が見えてきた。その上のガレ場の急登で一息ついているパーティーをかわして上へ抜け出ると、景色が一変して高山の稜線の雰囲気となる。
 9時25分、白根山頂着。登山口からの標高差841メートルを2時間50分とはコースタイムを上回るいいペースだ。岩が積重なった山頂は風が吹いて寒いので、手早く登頂写真を撮って直下の窪地に逃げ込む。バーナーを出して斉藤氏が淹れてくれた珈琲が美味い。
 各自行動食を腹におさめ9時55分、腰を上げて奥白根神社のお社にご挨拶し、五色沼に向かう。本峰の東肩のところまで来るとすばらしいパノラマが広がった。中禅寺湖の北岸に大きく丸い男体山。その左手には大真名子、小真名子、女峰、太郎山が連なっている。中禅寺湖南岸の峰の上にはガスが乗っていて、夏前に藤本さんや内山さんが歩いてきた半月山から社山にかけての稜線は、残念ながら眺められなかった。左手の谷を覗くと、碧色の水をたたえた五色沼が静かに横たわっていた。
 吹きさらしの斜面を下り、懐かしい避難小屋を覗いてから五色沼に出る。この周辺は草花がドライフラワー状に立ち枯れていて変わった趣があった。五色沼から見上げた本峰には既にガスが下りてきていて、いい時間に登ったなと思う。寒ざむとした沼の景色を眺めながら一本取り、低い尾根を越えて再び弥陀ヶ池に出て往路を下った。先頭でとばす斉藤・大久保両氏に自称鈍足の内山さんが食い下がっていったのには驚いた。私は後ろからひいこらひいこら追いかけて、クルマ帰着12時55分。
 帰路は白根温泉に寄った。白根温泉は、大久保氏と私にとっては学生時代の思い出深い因縁の場所である。我々が温泉入門の洗礼を受けた混浴の湯殿はまだ健在であった。20数年経った今でもその日のことはありありと眼に浮かぶ。湯殿の前には鄙びた板壁の宿がぽつねんと建っていたのだが、その建物も新しくなり、今日ではその隣に大きな日帰り温泉ができていて、かつての静かな山間の温泉宿の趣きは失せていた。思い出は静かに取っておくことにして、その新しい日帰りの風呂で汗を流し、帰途に就いた。
 練馬高野台駅に戻って解散。お疲れさまでした。

日光白根山

〈コースタイム〉
菅沼登山口(6:35) → 弥陀ヶ池(8:20~33) → 白根山頂(9:25~55) → 五色沼(10:55~11:05) → 菅沼登山口(12:55)

付記
 菅沼登山口には土産物屋があり、広いアスファルトの駐車場があるが、夜はロープを張ってクルマの出入りを規制していた。翌日見ると、駐車場での幕営は何万円だか申し受ける旨掲示されていたので注意した方がいい。尚、そこの水洗トイレは夜間でも使用できた。


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ307号目次