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雨ヶ岳・竜ヶ岳
小堀 憲夫

山行日 2002月16日~17日
メンバー (L)小堀、服部、福間、野口、他1名

 どうしてその気になったのか良く覚えていないのだが、竜ヶ岳は前から登ってみたい山だった。古いメモにその名前が書き留められたまま、長いこと気になっていた。理由を忘れているくらいだから、それほど深い思い入れがあったはずはなく、いつか行ってみよう、くらいの気持ちではあった。たぶん、あの辺りも本栖湖まで入ると人が少なく静かなキャンプができて、竜ヶ岳もシーズンには手ごろなハイキングを提供してくれる、くらいの狙いだったのだろうと思う。
 子供が小さいころよくキャンプに出かけた。もう少し奥の田貫湖畔の公営キャンプ場で、楽しいキャンプをした経験がある。確か芝生の快適なサイトで、天子山への軽いハイキングの道すがら、タラの芽が採れて、天ぷらにして親だけが美味しく食べたのを覚えている(子供にはあの苦味は分からない)。
 土曜日の朝、八王子駅南口で待ち合わせ。パソコンの時刻表ソフトに教えられたまま電車を乗り継いでいくと、予定通りの時間にちゃんと到着した。便利な世の中になったものだ。最近のソフトは、それぞれの駅の時刻表付で乗継ぎを案内してくれる。これじゃ、モノグサオジサンはますますモノグサクなっちまう。オー、臭そう!
 駅前ロータリーに出ると既に3人揃って談笑していた。
「昨日も4時間しか寝てないよ。ケラケラケラ」
「今日は何を食べさせてくれるの? フフフフフ」
「・・・・・・・・」
どれがだれだか分かりますよね?
 少し遅れるという入会希望者を待って、服部号は出発した。服部号はきれいだが、目玉のおやじや、一反木綿、トトロなど、相変わらず妖怪達が飛び回る異空間ではあった。途中談合坂で水を確保し、河口湖インターで中央高速を降り、139号線を本栖湖方面へ進む。本栖湖畔を少し過ぎた辺りが根原で、ガソリンスタンドを過ぎるとすぐに右へ入る細い道がある。細いが舗装された道をA沢貯水池記念碑まで車を入れる。天気は申し分ない。冬用の下着1枚にTシャツを重ねただけで十分な暖かさだ。端足峠までの登りを軽快に進むと、出発して1時間もかからずにあっけなく峠に着いてしまった。竜ヶ岳側にはしっかり踏み跡が付いているが、雨ヶ岳方面は真っ白だ。分岐から少し雨ヶ岳方面へラッセルした当たり、本栖湖の眺めの良い場所にテントを張って荷物をデポ。(もう少し雨ヶ岳寄りに、広いテン場適地があるのが、後で分かった)
「オレ昼寝してようかなぁ? あの山随分高いじゃん」
「うん、オレも・・・」そう言いかける自分を戒め、サブザックを背負っていざ出発。
 でも、峠から眺めると確かに高く見える。峠が1270m、雨ヶ岳頂上が1772mで、502mの標高差。たいしたことは無いのだが、そう見えるのはモノグサオジサンだからか。雪は結構深く、膝上のラッセルが続く。気が付くとさっき昼寝を希望したオジサンが、先頭でガシガシラッセルして行く。
「なんだ、大したことねーな」
「もう、そこが頂上じゃないかぁ」
 ところが、ところがである。やがてラッセルは股までとなり、勾配も急になり、ブッシュに掴まりながらのしんどい登りとなった。と、その時雨ヶ岳が鼻先で笑った、ような気がした。
「フフッ、オメーラ、なめんじゃねーぞ」
 何回かラッセルを交代して、夏道のコースタイムを40分ほどオーバーして漸く頂上に到着した。フッー。それにしても富士は見る山だね~。目の前にドドーンと登場したそれにその思いを深くした。天気は良いし、汗はかいたし、当然ビールターイムである。しばし、のんびり記念写真を撮ったりして、下山。下りはあっと言う間にテン場まで着いてしまった。
雨ヶ岳にて  タキビをやろうと最初は意気込んでいたのだが、どうも疲れてしまった。薪も雪に埋もれていて集めるのが面倒だ、という訳で即中止にして、テントに入りチビチビやり始めた(一番最後から長い枝を引きずってきた服部さんごめんなさい)。やがて夕飯時になり、メニューは白菜の無水鍋。ポン酢を少しグレードアップしたら、より美味しくいただけた。
 翌朝、天気も上々。テントを畳んで峠まで運びデポ。ほとんど手ぶらで竜ヶ岳に向かった。さて、いよいよ念願の山だ。こちらの山は冬でもよく登られているらしく、トレースもバッチリ付いていた。それにしても、昨日の雨ヶ岳といい今日の竜ヶ岳といい、真直ぐな登山道だなぁ、きっと道を作った人の性格だね、こりゃ。などと見上げながら、割石峠辺りまで来ると、
「ありゃりゃ、階段が付いてるぜっ!」の声。
 オー、本当だ、上までしっかり! しかも真直ぐに! ガイドブックによると藪の中のふみ跡のはずなんだけどなぁ。思わず作った人の顔を想像してしまった。オレにはできないな、こういう生き方・・・。
 1時間位で頂上についてしまった。広い頂上で眺めはバツグン。正面には昨日に続きドドドーンと富士山。ここでキャンプしても楽しそうだなぁ、などと考えていると、富士山に笠雲が。風も強くなってきたので、記念撮影を済ませてそそくさと退散した。
 帰りは、服部さんお勧めの「紅富士の湯」で汗を流して、レストラン「ふじやまビール」で喉を潤して帰った。
 と、いう訳で気になっていた山の初登頂はあっけなく終わったのでした。まぁ、こういうのもありか。

〈コースタイム〉
16日 A沢貯水池記念碑前(10:30~10:45) → 端足峠(11:35~12:15) → 雨ヶ岳(14:35~15:00) → 端足峠(15:45)
17日 端足峠(7:30) → 竜ヶ岳(8:30~8:50) → 端足峠(9:20~9:45) → A沢貯水池記念碑前(10:15)

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