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正月合宿・常念岳~蝶ヶ岳
その1 総括
委員長・服部 寛之

 正月合宿については、早くも夏頃から新人の高橋(俊)、中沢(佳)両名が参加を表明していたこともあって、8月29日の委員会で「蝶ヶ岳~常念岳」で検討することに決めた。このエリアを選んだのは、雪山初心者がいること、初心者を補佐できるベテランの参加人数が不確定であること、多人数の参加は見込まれないこと、等の条件に現在の会の力量を加味して考慮した結果である。その後、合宿のリーダー役を買って出てくれていた小幡氏が、10月27日~29日の日程で三ツ又~前常念岳~常念岳~蝶ヶ岳~横尾のコースを偵察に行き、ルート状況を確認した結果、「全体として難しいところは無く、合宿は充分いける」旨報告してくれた。一方その間、会員の間からは、縦走ではなく定着なら正月に入山したいという声が上がってきていた。そこで、11月14日の委員会で(1)縦走隊のリーダーを小幡氏とし、ルートを須砂渡~前常念~常念~蝶~長塀山~徳沢(又は、蝶~横尾)とするとともに、(2)ベース隊を徳沢に入れ、蝶又は徳本峠へピストンののち縦走隊と合流し下山、という2パーティーの編成を決めた。その後、年末まで3回のルームで募集し、12月19日のルームでは縦走隊10名、ベース隊4名となったが、最終的には次のような編成内容となって出発した。

●縦走隊
メンバー: (CL)小幡、(SL)紺野、藤井、野口、荻原、高橋(俊)、天内、山口、小山、中沢(佳)、土肥 [計11名]
ルート: 須砂渡~前常念岳~常念岳~蝶ヶ岳~蝶ヶ岳ヒュッテ~長塀山~徳沢[エスケープルート:蝶ヶ岳~横尾/蝶ヶ岳ヒュッテ~三ツ又~須砂渡]
日程: 12/29発、12/30~1/1行動、1/2・3予備日
●ベース隊
メンバー: (L)服部、斉藤(誠) [計2名]
ルート: 沢渡P~釜トンネル~上高地~徳沢(往復)
日程: 12/30発~徳沢、12/31蝶ヶ岳へピストン、1/1縦走隊と合流・下山、1/2・3予備日

 縦走隊は30日、31日と順調に幕を進めたが、元日稜線上で猛烈な風に見舞われて横尾にエスケープし、2日に上高地から下山した。一方ベース隊は、30日は降雪のため明神池分岐までしか行き着けず、31日は胸ラッセルの尾根をあきらめて横尾までの逍遥に切り替え、稜線の強風状態と天候悪化の予報に縦走隊は常念ピストンで下山したと判断し、元日に下山・帰京した。結果として、ベース隊は蝶へ上がらず、2隊の合流も成らなかったが、しかし縦走隊は烈風に悩まされながらも常念~蝶の縦走を果たしたのであった。
 縦走隊の健闘は大いに称えたいと思う。だが、下山後報告を受けた印象では、メンバー個々人の準備状況や隊としての行動内容には、今後の反省材料とすべき点が多々あったように見受けられた。今年は昨年のようにひどい凍傷を負う者を出さずに済んだのは幸いであった。しかし、自然の中に分け入って自然を楽しむ者の常として、自然を前にした己の謙虚さを忘れない努力は大切ではないかと思う。痛いしっぺ返しを受けないためにも。
 皆で力を合わせれば大きな突破力を生むことができる。それは今回の縦走でも実証されたし、山行でパーティーを組む大きな意味はそこにある。だが、備えは他人はやってくれない。それを肝に銘ずるべきではないか。各自が今回の経験を前向きに捉えて今後の山行に生かして行くことができれば、この正月合宿の成果もより大きくなるに違いない。


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