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春山合宿 後立山周辺・上高地周辺
その2 親不知パーティー
飯塚 陽子

山行日 2002年4月28日~5月3日
メンバー (L)飯塚、鈴木(章)、小幡

 4月27日(土)23:50急行アルプス乗車。ゴールデンウィークの前半から休暇を取れる人が少ないせいか、この日の急行アルプスに乗車する山屋さんはやはり少なくて、また今回参加予定の頼りにしていたS君が、この晩に起こったアクシデントにより不参加となってしまい、ちょっと寂しい3人でのスタートを切ったのであった。
 28日(日)快晴。白馬大池からバスに乗り、栂池高原へ。そこからゴンドラに乗って栂の森到着。ここから天狗原に向かうのは、ほとんどがスキーヤーかボーダーで、重いザックを背負って登る山屋は我々のみ・・・だったと思う。天狗原のキツイ登りでは、かっこよすぎるテレマーカーの豪快な滑りに目を奪われながら、こちらはヨタヨタと乗鞍岳を目指して登る。乗鞍岳からはガスがかかり、回りの景色も見えなくなってしまったが、白馬大池の南端に降り立った我々は、そこがあまりにも素晴らしい幕場であったので、初日でかなり疲労していたこともあり、幕場の件ではすぐに意見がまとまるパーティーなので、すぐにここを幕場と決めた。初日には、必ずビールを持参するという小幡氏のビールをありがたくいただき、三峰のパーティーの中では一番乗りの我々の春合宿の無事を祈って乾杯。のんびりと午後を過ごし、暗くなって外に出たら、そこは・・・こうこうと輝く満月の月の光と、稜線へと続く真っ白い山のシルエットが作り出す、まるで月の砂漠のような世界が広がっていた・・・。こうして、山からまた大きな感動と、たくさんの疲労をもらった今晩は、早めの就寝となった。
 29日(月)本日も快晴。予報では30日に天気が崩れるとのことで、出来るだけ先に足をのばしたい。ということで、あっこさんトップのハイスピードの登りにつられて、順調に進んでいく。鉢ケ岳では、トラバースルートをとり、雪倉避難小屋に到着。今年は残雪が異常に少ない為、小屋はまったく埋まってなくて、すぐにも使用できる状態。そして急登の雪倉岳を登りきると、頂上には全く雪が無かったのであった。頂上では2パーティーのスキーパーティーと会ったが、この先白鳥小屋で人に会うまでに出会った、最後のパーティーでもあった。雪倉岳にはちょうどお昼に着いたのだが、少しずつ近づいてきた朝日岳を目指して出発。頂上からの下りでは、トレースの跡を忠実に下って行った結果、なんと断崖絶壁に行き着いてしまった。雪倉岳の先2446mからの下りは、尾根を外れて、右に大きく迂回しなければならなかったのだ。午後からの強い日差しの突き刺す中、3人黙々と迂回ルートを取り直す。赤男山付近からは、トレースも不明になり、トラバースしながらルートを探し、朝日岳を目指したが、朝日岳手前の2045m付近で、時間切れとなり、木立に囲まれた台地を見つけて幕を張った。
 30日(火)天気予報が当たり、夜半過ぎからバケツをひっくりかえしたような雨が断続的に降り続き、一日中停滞。
 5月1日(水)明け方まで降っていた雨は小降りとなり、ほとんどやみかけた8:40、様子を見ながら出発した。視界は全くなかったが、軽いラッセルを交代しながら順調に朝日岳に辿りつく。そしてラッキーなことに山頂到着後に青空ものぞき出し、視界が広がり始めてくれたのだった。この先、長栂山、アヤメ平を経て黒岩平に至ったが、素晴らしい雪面の大斜面が続き、ここは山スキーには最高のルートであった。ただ歩くのには、もったいない斜面であった。黒岩平で後半戦の作戦会議を開き、今日は黒岩山山頂に泊まり、明日はあっこさんお勧めの白鳥小屋に泊まり、3日に下山ということにした。播磨さんには、予備日を入れても2日に下山するという計画書を提出しているので、山頂から3日の下山になったことを連絡させていただいた。この黒岩山山頂からの景色も素晴らしく、この日は日本海に沈む夕日と、谷筋にたなびいていく竜のように動き続ける雲に、いつまでも見入ってしまったのだった。
 2日(木)快晴。黒岩山から先は、昨日の緩やかな斜面とは異なり、やせ尾根となり、雪庇、小さなクレバス等を迂回しながらの歩きとなる。そんなやせ尾根ではあるが、サワガニ山を過ぎたあたりから、カタクリの花の大群落が現れ、その優しくて可憐な花々に、心が癒されるのだった。犬ケ岳では、さらに近づいた濃紺色の日本海が、穏やかな表情を見せてくれて、改めて地形図3枚分を歩いて、ここまで来たんだなーと実感。黄蓮山から先は、真夏並みの暑さにあえぎながら、急登の道を登る。あっこさんのザックに付けていた温度計はとっくに30℃を超えている。私はこのまま雪の中に埋まってしまいたい位、暑かった。あまりの暑さに頭がボーッとしてきた頃、ようやく白鳥小屋に到着。小屋までハイキングにきていた地元のおじさんに会ったのだが、我々のあまりにも○○○○姿を見て(ご想像におまかせします)、まるで逃げる様に、そそくさと山を降りていってしまった。なんで??? あっこさん持参のコンデンスミルク入り雪のカキ氷を、たらふく食べて体の中から冷やし、ようやく落ち着くことが出来た。白鳥小屋は、地元のサワガニ山岳会の方が建てられた、大変立派で綺麗な小屋で、きちんと管理がされている。本当に素敵なこの小屋で、残り少なくなったウィスキーでささやかな宴会を催した。小屋の2階からは、港町の夜景の輝きに目を奪われ、明日は下界へ下りてしまうのが、非常にもったいなくまた終ってしまうのも、寂しく感じた夜でもあった。
 3日(金)晴。この朝、ビールが早く飲みたくなってしまったのか、この後上高地隊に合流予定の小幡氏は、先に出発することとなった。お疲れ様でした。私とあっこさんは、下山後のお風呂とおいしいお魚を食べる、ということだけを目指して、途中赤テープに惑わされながらも、下山を続けた。幾つもの低山を越え、いつのまにか回りの雪景色が、新芽のやわらかい色の新緑に包まれる頃、日本海が目の前にドーンと現れたのである。尻高山、入道山を越えていくうちに、心もはやり、歩みもだんだんと駆け足モードになってくる。最後、親不知観光ホテルの白い壁が見えて、まるでゴールの様な看板をくぐりぬけ、下界へと下り立った。すぐにホテルの横の階段を下り、この6日間思い描いていた日本海に、感激のご対面を果たしたのだった。長かったけれど、自然にどっぷりとつかり続けることのできた栂海新道は、とてもよいルートで、かなりの満足感を味わうことができた。またいつか季節を変えて、歩いてみたいと思う。
その後、親不知観光ホテルでお風呂に入らせてもらったが、支配人の方が山屋さんで、私達山屋にも親切に声をかけてくれて、とてもいい方だった。またホテルから親不知駅への無料バスに乗車した際、バスの運チャンより、道の駅親不知においしいお魚定食あり!という情報を仕入れた私達は、途中下車し、道の駅に向かった。道の駅親不知内にある、お食事処漁火で、漁火定食(奮発して2500円!)のおいしい魚のフルコースメニューを思いっきり食べて・・・、こうして、全てに大満足して合宿を終えることができたのであった。
 あっこさん、小幡さん、6日間本当にお疲れ様でした。

〈コースタイム〉
4月28日(日) 栂の森(8:40) → 栂池山荘(9:45) → 天狗原(11:40) → 白馬大池南端(14:00)
4月29日(月) 発(6:20) → 小蓮華山(8:20) → 雪倉岳(12:00) → 朝日岳手前2045m(15:15)
4月30日(火) 停滞日
5月1日(水) 発(8:40) → 朝日岳(10:40) → 黒岩山(14:30)
5月2日(木) 発(6:40) → サワガニ山(7:45) → 犬ヶ岳(9:30) → 菊石山(12:10) → 白鳥小屋(14:35)
5月3日(金) 発(5:10) → 坂田峠発(7:35) → 尻高山(8:15) → 二本松峠(9:00) → 入道山(9:25) → ホテル親不知(10:10) → 日本海!(10:20)

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