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春山合宿 後立山周辺・上高地周辺
その5 後立山・小日向敗退
紺野 康則

山行日 2002年5月3日~5日
メンバー (L)紺野、天内、小林(と)、土肥、天城、小山

 2日の23時、新宿駅ホームに集合。急行アルプス83号で白馬駅へ。混んだ車内は、登山者でごった返している。酒など飲みながらしばらく雑談後、座席の上で仮眠するも蒸し暑くなかなか眠れない。そうこうしているうちに、すっかり朝になり白馬駅に着いた。

5月3日 晴れ
 白馬駅で登山届けを提出し、バスで猿倉へ向かう。天気は、すこぶる良く太陽が眩しいくらいである。小山さんが、ゴーグルを忘れて持ってこなかったので、メガネに黒いテープを張り、薄目の様な状態にしてあげると、「なかなか具合がいいですよ」と気に入った感じである。猿倉の台地を越えて左手の急な雪面を登る。ザックが重くてなかなかピッチが上がらない。途中小休止しながら登るとすぐに小日向のコルに着いた。皆でテントを張り、今日は偵察がてら双子尾根を登りに行くことにした。紺野を除いて皆すたすた歩いている。ハァハァ言いながら登っていくと、樺平に着いた。そこから尾根の上を見上げれば、双子尾根のジャンクションピーク・杓子の頂上は、だいぶ上のほうで時間がかかりそうと判断。今日はこの辺で止めて、明日の鑓ヶ岳北稜の取り付き点など検討する。北稜には解けかけた不安定な雪がついていて、さらにその上の軍艦ピークが少し悪そうにみえる。まあなんとか登れるだろうと思いながらテントに戻り、冷やしておいたビールを皆で飲んだ。夜は、とみさん特製のすいとん汁でおおいに満ち足りた夕飯となった。

明日は白馬鑓北稜を目指すはずであったが・・・

5月4日 雨
 未明に目を覚ますと、テントが風でバタバタいって雨の降る音がする。あぁ今日はダメかなぁと思いながらゆっくり起きて皆で朝飯をとり、携帯電話で今日の天気を聞くと、一日中雨とのこと。それから猿倉のスキー隊とも連絡がついたし、またゆっくり寝ることにした。昼前、外にでてみると白馬鑓ヶ岳から降りてきた5人パーティーから、上の様子を聞くことができた。彼らは、3日に白馬主稜を経て稜線で1泊した後、天候が回復しないと判断、不帰行きを断念し雨の中を下りてきたとのこと。主稜は、雪の状態が悪く、雪がはがれそうなところを、何度も飛び越えて通過したとのこと。この雨でさらに雪の状態が悪くなっているのが予想される。それにしても金子さんたちは大丈夫かな?などと思いながら携帯電話で何度もコールするが応答なし。我々は明日どうしよう・・・。非常に残念であるが、この雪の状態では、北稜はあきらめざるをえない。明日状態が良ければ、再度、双子尾根にしようと皆さんに話した。

5月5日 雨のち晴れ
 朝4時起床。しかし雨はいっこうに止まず。強風でテントがかなりゆがんでいる。朝食の間もかなりの強風が吹いている。縦走隊は、こっちに向かっているのだろうか? 何度か携帯でコールするが、応答なし。でも金子さんたちは、ここに着かないまでも力があるのだから大丈夫だろう。「リーダー、今日はどうします?」との問いかけに、うーん、どうしよう。テントから顔を出して山を見るが、依然としてガスがかかっている。もう一日ここにいるのは、非常につらいし悩んだ末に、撤退という結論に達した。強風の中、飛ばされそうなテントをおさえて、パッキングを終えると、昨日飛ばされたナベのフタを探しながら雪面をゆっくり下る。途中スキー隊と会うと、「今晩また宴会しようよ」と言ってくれたが、何故かその気になれない。「ごめんね、また今度にしようよ」と心の中でつぶやいた。猿倉まで戻り山をふりかえるとだいぶ晴れてきている。登れなかった悔しさと、事故なく戻れた安堵感と実に複雑な気持ちの中、白馬駅から歩いて10分ぐらいの温泉へ行き、きれいさっぱり汗を流して帰路に就いた。

 今回の山行の失敗は、私が立てた山行計画のずさんさに原因があったように思える。ここのところ、場あたり的に山を登ってきたし、またそれで登ってこられたので、行けば何とかなると甘い考えを抱いてしまった。しかし、ひとたび自然の厳しさに触れると、事故ったらどうしようと、二の足をふんでしまったのである。今おおいに反省し、もっと山を深く愛して、接してゆきたいと思っています。一緒に行ってくれた皆さん、ごめんなさい。


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