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谷川岳・東尾根
金子 隆雄

山行日 2002年3月16日~17日
メンバー (L)金子、越前屋、紺野、小林(と)、高橋(俊)

 東尾根はマチガ沢と一ノ倉沢とを分ける明瞭な尾根で、登りつめると谷川岳のオキノ耳に至る。谷川岳の雪稜ルートの入門コースとされ、この時季の人気ルートとなっている。
 金曜夜にいつものように東所沢駅に集合し、越前屋さんの車で谷川岳を目指す。

3月16日 雨のち曇り
 水上に着くと雨が降っている。ロープウェイ駅の立体駐車場に車を入れ、少し寝ることにする。当初は寝ないでそのまま出発するつもりでいたのだが、雨が降っているので出発は見合わせたのだった。寝る場所を探していると6階が暖かくて快適だと教えてもらったので行ってみる。なるほどそこは売店などがある場所で床暖房が効いていて大勢の人が寝ている。シュラフもいらなく、床暖房の効いたカーペットの上にゴロリと横になる。
 3時に起きて様子をみるが雨はまだ降り続いている。それどころかミゾレっぽくなってきている。ほとんど諦めモードで寝なおすために土合駅に向かう。土合駅は足の踏み場もないくらいに人で埋め尽くされている。魚市場に並ぶマグロのようだ。改札を入った通路に寝場所を確保し、シュラフを出して本格的に寝ることにする。朝方なにやら騒がしかったが気にせず寝続けて、起きた時はもう9時だった。さすがにもう駅には誰も居なかった。既に雨は止んでいたが、今から登りに行ったんじゃ遅すぎるし、朝方までの雨で雪の状態も悪いだろうから今日は止めておくことにする。
 とりあえず指導センターまで行って荷物を置いて温泉に行く。さすがに土曜の早い時間だけあって湯テルメは空いていた。空いているのをいいことに随分長居してしまった。湯檜曽で遅い昼食後に指導センターに戻る。この日は酒もほどほどに明日に備えて早めに寝る。

3月17日 快晴
 予定通り2時にアラームの音で目が覚める。だが我がパーティーの誰もアラームなどセットしていなかった。それは隣に寝ていた二人組のパーティーが鳴らしたものだった。彼らは我々より10分ほど早く指導センターを出て行った。我々も急いで朝飯を済ませ、3時15分にまだ真っ暗な中をヘッドランプを点けて出発する。
 一ノ倉沢出合いまでの旧道はほとんど雪が消え所々にしか残っていない。出合いにはビルほども高さのあるデブリが見られる。一ノ倉尾根にほとんど雪がついてないのでこのデブリは一ノ倉尾根から落ちたものかも知れない。出合いでアイゼンを付け、準備をしていると後から後から人がやって来る。今日の東尾根は大変な混雑になりそうな予感。沢の中はデブリのため歩きづらい。点々と灯りが続いて見える。
 一ノ沢出合いで一息入れる。この先シンセンのコルまで一気に休まずに登り切りたいので長めに休む。一ノ沢は雪崩れた跡もなく、雪も締まっていてアイゼンがよく効き、順調に高度を稼ぐ。途中で二俣となり、どちらへ行くかちょっと迷う。右は浅く開けて尾根に消え、左は深く切れ込みよく見えない。ここは他力本願で皆が行く左へと進む。シンセンのコルへ上がる前に明るくなってくる、今日は素晴らしい晴天のようだ。傾斜が増して雪壁状になってくるとじきにシンセンのコルに出る。
 やれやれということで一本とったが、これが失敗だった。後からぞろぞろと登ってくるパーティーに先に行かれてしまい、岩峰での順番待ちは必至となってしまった。一ノ沢側を廻り込むように進むとすぐに第二岩峰の下に着く。やはり思ったとおりの大渋滞だ。ここで田原さんの知り合いだという群馬の方に会った。私のヘルメットに書いてあった『三峰山岳会』というのを見て声をかけてきたようだ。かなり高齢のように見えたので、「そんな年でこんなとこ来るの?」と思ったが、後で田原さんに聞いたら年齢は私とさほど変わらないとのこと、失礼しました。
 金子、越前屋と紺野、小林、高橋の二組に分かれてザイルを結び、金子、越前屋が先に岩場の下まで行く。混んでいて後続の三人は岩場の下までも来ることができない。順番待ちしていると客を連れたガイドが割り込んできて先に行こうとする。かなりムッとしたが、ここでトラブル起こして楽しいクライミングを台無しにしてもつまらないと思いグッと我慢する。
 第二岩峰は庇のように張り出した外傾した岩を2mほどトラバースすれば難しい箇所は終わり、後は易しい斜面を直上すればいい。第一岩峰まではマチガ沢側に雪庇が張り出した雪稜を一ノ倉沢側を辿る。今はしっかりと踏まれていて問題ないが、シーズン始めのあまり人が入っていない時期はかなり緊張するような所ではないだろうか。
 第一岩峰もまた順番待ちとなる。待ち切れずに右側のルンゼに下降して捲いて行くパーティーもあるが、天気も良いし我々はじっと待つことにする。前のパーティーが登るのを見ていたら突然登っていた女性が墜落する。残置シュリンゲにぶら下がっていたのだがハーケンが折れたらしい。セカンドだったので何事もなかったかのようにそのまま登って行ってしまった。我々の番が回ってきたが核心部に打たれていた唯一といっていいハーケンがなくなってしまったので、私はトップで行くのを辞退し越前屋さんに任せることにする。越前屋さんは岩角を利用してランニングビレイをとり、どうにか越えて行った。短いがちょっと厳しいピッチだった。
 その先はちょっとしたギャップになっていてザイルが欲しいような所だが支点がないので仕方なく3~4mの雪壁をクライムダウンする。降りた所で後続の三人を待つ。
 ここまで来ればあと少し、見えている稜線目指して雪の斜面を登る。稜線へは右端の雪庇を乗越して上がる。易しい登りだが、滑ったら一ノ倉沢へまっしぐらなので念のためザイルを使う。11時オキノ耳にでて登攀終了、少し風があり寒い。シュンスケ君が持ってたビールを回し飲み、う~旨い。皆に褒められてシュンスケ君ご満悦。
 下山は西黒尾根にとる。かなり気温が上がってきているのでアイゼンが団子になって2、3歩歩くごとに雪を落とさないとならない。かといって樹林帯に入るまではアイゼンを外すわけにもいかない。
 樹林帯に入ればアイゼンもいらないので外して一気に駆け下りる。湯檜曽で風呂に入って帰途につく。やっぱり風呂は登った後の方が充実感があっていいなと皆さん意見が一致して今回の山行を終えた。

第二~第一岩峰間の雪稜
〈コースタイム〉
17日 指導センター(3:15) → 一ノ倉沢出合(4:10) → 一ノ沢出合発(4:50) → シンセンのコル(6:20) → 国境稜線(11:00) → 指導センター(13:00)

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