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縦走 熊倉山-酉谷山-天祖山
越前屋 晃一

山行日 2002年4月13日~14日
メンバー (L)福間、紺野、太田(秀)、山口、越前屋

 早朝、6時30分西武池袋線・池袋集合。山口氏と越前屋は秋津で同じ電車に乗り込んだ。
 折からの好天で西武秩父駅の精算機にはハイカーの長蛇の列ができあがり、連絡の電車には間に合いそうにもなかった。あわてることもないだろうとノタノタ改札を出ていってみると、池袋集合組が気合の入った顔で「遅い!」と叫んで走り出した。
 「そうか、やっぱりトロかったか」と考えながら、とりあえず一緒に走ってみたが、お花畑駅の踏切りであえなく遮断されてしまった。すこしばかり勘違いのような気もするが、ふりかえってみると一等賞だったのでこれで勘弁してもらうことにしておいた。
 秩父鉄道に乗り換えて武州日野駅から歩いて1時間弱、ようやく林道終点。道路工事の脇をすりぬけて登山道に取り付く。
 沢沿いの静かな山道をたらたら歩くと、ほっとする気配につつまれる。ひと月ほど山を休んでいたので5月合宿のトレーニングにと来てみたが、そんなことをぬきにしてもやはり山はいい。
 そういえば途中のお社でリーダーの福間姉が手を合わせていたのを思い出して聞いてみると、「むくつけき男どもからおまもりください」とお祈りしておいたのだそうだ。なるほど気がつけば当の本人をのぞくと、残りのメンバーは全員怪しげなおっさんだ。納得するところが情けないが、一緒に祈っておいたほうが良かったのかなと考えてしまった。
 そんなことはともかく、最後の水場で今夜の水を確保して熊倉山をめざすことにする。それにしても、久しぶりの山は身体が重い。日頃のぐうたらな生活を反省するが、反省が何かのかたちで実を結んだ記憶はほとんどないのが常日頃なのだから仕方がない。
 熊倉の山頂は刈り払われてちいさな展望が得られるものの何か印象の薄いものだった。みんなドテッと休息をとるが、不思議なことにこの「あー、なんもないねー」という感じが実にいい。
 熊倉山から酉谷山はすこし藪がうるさいが、踏み跡はしっかりとついていてルートを誤る心配もない。1452Pからの鞍部で深読みをしてこのあたりが大血川峠だろうと騒いでみたが、ものの10分もいったところから出ている尾根に立派な指導標が立っていた。深読みは失敗の元だ。気をつけよう。
 1650Pのキツイ登りを終えるとまもなく酉谷山山頂。「登山地図」でこのルートが破線になっているのはこの根っこだよりのグズグズの登りがあるからなのかもしれない。
 やっと到着した避難小屋には2組3人の先客が静かに行儀良くかつ礼義正しく鎮座していて、「私たちはテントを持ってきていますので・・・」と言うと、少しほっとした顔になって「すみませんね」と答えた。一目見ただけで、こいつら何か騒がしそうだなと感じたようだ。見かけによらず鋭い。
 心配していた水はドボドボ流れていた。

 翌朝。緊張感なくテントを撤収。申し訳程度にストレッチをして出発。動き始めてまもなく少しハーハー言って軽いめまいがする。1700mの高さで高度障害と言う話も聞かないので、どうも昨日の夜は盛り上がり過ぎたようだ。
 天祖山までは整備されたゆるやかな上り下りを坦々と行く。山頂には立派な造りの天祖神社があり、すこし下に行ったところに会所が建っていた。なんとか講とか、ときによっては農民一揆の秘密の会合が似合いそうな雰囲気であった。いまどき農民一揆などあるはずもないが、奥多摩の山はなんかこう「里」の気配を感じさせる所がいい。山・里・町が渾然としている。丹沢はこうはいかない。町ドカンと山なのだ。だからいけないということでもないが、そういう具合に思わせられる。
 ここから、うんざりするような長い下りと林道歩きをして、東日原のバス停に着く。缶ビールを飲みながら1時間ほどのバスの出発時間を待って、2日間の行動を締めくくる。
 立ち寄り湯にでも入っていこうかと言っていたが、それもめんどうになり、たくあん入りの弁当でも持った気分で電車に乗ってしまった。

〈コースタイム〉
13日 お花畑駅発(8:49) → 武州日野駅発(9:10) → 林道終点(9:58~10:05) → 官舎跡(10:45~10:55) → 山頂(12:25~12:45) → 1451m地点(12:25) → 大血川峠(14:35) → 酉谷山山頂(15:45) → 小屋(16:10)
14日 起床(5:45) → 発(6:50) → 天祖山(9:30) → 大日天神(10:40) → 林道(11:20) → 東日原バス停(12:20) → バス(13:30)発 → 奥多摩駅

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