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三窪高原 ツツジ・ハイキング
服部 寛之

山行日 2002年6月16日
メンバー (L)服部、藤本、鈴木(章)、広瀬夫妻、西尾、(脇坂)

 三窪高原は、青梅街道が甲府盆地に向かって下り始める柳沢峠の西側にあって、ツツジの名所として知られている。15年以上も前に買ったガイドブックに出ていて、いつか花の咲く時期に行ってみたいと思っていた。募集の結果7人で行くことになったが、広瀬さん夫婦と西尾さんはそれぞれのクルマで行くとのことで、柳沢峠の駐車場で待ち合わせることにした。残り4人は朝7時にJR八王子駅で落ち合って服部車で行く。柳沢峠には8時半~9時頃集合ということにしておいたが、途中大月付近で車中から広瀬さんの携帯にかけてもらうと、もう広瀬車も西尾車も峠に着いているという。ゲッ、ナンデソンナニ早インジャイ!
 勝沼インターで降り柳沢峠に向かうが、塩山の街からは延々と上り坂がつづく。柳沢峠は意外と標高が高く1472mあるのだ。丹波山・小菅と塩山とを結んでいた大菩薩峠の迂回路として1878年(明治11年)に開かれた峠道というから、さほど歴史が古いわけでないのも甲斐の国にしてはちょっと意外。8時40分過ぎに峠に着いたが、広い駐車場はもう満杯に近かった。というか、たっぷり車間を取って駐車している先着車が多く台数が停められないのだ。最近他者を気遣わない人間が増えているが、そういう輩には腹が立つ。一刻もはやく滅んでもらいたい。
 急いで支度して「お待たせしました。出発進行」と言おうとしたら、アレ?クルマのキーがない! みんなに辺りを捜してもらいザックをひっくり返しても出てこない。どうも車内で靴を履き替えたときポケットからこぼれ出てそのまま閉じ込めてしまったようだ。仕方ないので、キーのことはひとまず置いて出発する。幸いここは一般道なので、あとでJAFに来てもらえばなんとかなるだろう。ちょうどバスで来ていた中高年の団体さんも出発するところだったので、これはまずいとやや迅ばしぎみに引き離す。中高年の団体ほど山でやかましいものはない。「中高年」などと突き放したようなものの言い方だが、平気で自分たちのことを棚に上げられるのも中高年の特性なのだ。
 車道からすぐによく整備された登山道に入る。脇の斜面に咲くツツジも移植されたもので、公園風なたたずまいである。ちょうど先週末が塩山市主催のツツジ祭りだったそうで、市でも観光の目玉として整備に力を入れているのだろう。高い木立の間に霧が漂い、野鳥の声が響くなかを登ってゆく。脇のツツジがおいしそう?に咲いているので、アッコさんに食べられるかどうか聞く。先日田代山にバードウォッチングに行った際講師の先生からツツジの味を教わって以来、ツツジも食糧リストに加わったのだ(注:レンゲツツジは有毒)。アッコさんの話では、東北地方ではツツジを天婦羅にするとか。お味の方は田代山のものよりやや酸味が強くいまいちだった。振り返ると、ツツジをつまんで食べる藤本さんを入会希望の脇坂さんが不思議そうな眼で見つめていた。その先を少し行くともう柳沢ノ頭で、ここらまで来ると周囲から人工臭さはなくなる。
 駐車場から40分で鈴庫山への分岐。ツツジの群落はこの辺りからのようで、藪中に赤っぽいツツジがごそごそ。分岐のすぐ脇にはトイレと屋根だけの休憩所が並んでいる。休憩所は地面の四隅に柱を立てて屋根を乗せたもので、幕営にはもってこいだ。4‐5人用2張りはいける。鈴庫山は、三窪高原の南北に延びる稜線から西に張り出した尾根上のピークだが、どんな所なのか行ってみる。道は意外なほど下りが続き、次から次へと角材で土止めした階段が現れる。すれ違うおっさんの息が荒い。帰りにはこれを登るのかと思うと少々気が重い。この支尾根にツツジは少なく、下るにつれてあまり見かけなくなった。最低鞍部らしき所から道は細い踏跡風の急登となり、5分も登ると樹林の中に狭い山頂があった。南側が開けているが、相変わらずの深いガスで展望はなし。中年の夫婦者らしき二人がラーメンをすすっており、うちらが座るほどのスペースもないのですぐ引き返す。三窪高原は景色が良さそうな所なので(因みに、塩山市役所のHPを見たらトップページに三窪高原から見た富士山の写真が掲載されていた)、このガスでは脇坂さんもさぞ残念だろうと思ったが、そうでもないらしい。聞けば、これほど高い所に来るのは初めてで、しかも雲の中を歩くのも初めての経験だと結構うれしそう。そうかそうか、そういえばオレにもそういう新鮮なときがあったよなあ、と感慨に浸る。が次の瞬間、もう思い出すには遠すぎる過去の記憶となっていることに気付き、にわかに心中油汗状態となる。じわっ。
 先ほどの分岐脇の休憩所に戻って一本。ここでアッコさんが珍しいココナッツをご馳走してくれる。ストローのささった初体験の実をすすってみると、ミルクっぽい天然の甘汁が口に広がった。実の内側の白い果肉もおいしいのだと、藤本さんが必死になって裂いてくれる。なるほど、薄いゼリー状のそれはミルクプリンみたいだ。
 分岐から今度は稜線を北上する。分岐から急坂の階段を上ったところがハンゼノ頭で、弁当をひろげた中高年グループらで賑わっていた。ここは開けていて展望が良さそうだが、残念ながらガスで真っ白。しかしツツジが結構咲いていてそれなりに綺麗。種類が分からず報告できないのは申し訳ないが、ツツジは赤と橙色の中間のような色合いのものが多かった。僅かに黄色いのもある。
 三窪高原の核心部はその少し先だった。やや開けた地形を囲むように満開のツツジの大木が彩っている。中央に東屋がひとつ。確かに特異な風景ではあるが、しかしハイライトはさまざまな色のツツジで埋まった稜線の道だろうと想像していたので、ちょっとはぐらかされた感じがしないでもない。勝手に想像する方が悪いのだが、しかし考えてみれば庭園や公園のツツジは手入れして美事に咲かせるものであって、ここに咲く天然のツツジはまた別物なのだろう。しばらくそこで景色を楽しむ。
 道はその先で一旦林道にでる。左にゆくとすぐ大きな無線中継所があり、その前で先ほど駐車場を出るとき一緒だった団体さんが、がやがや弁当をつかっていた。その左脇から先へ続く山道に入る。この先まで足をのばすパーティーはあまりいないようで、急に静かになる。その先の展望地らしき場所(ガスで見えない)にまた東屋があった。屋根が一部壊れてかなり痛んでいる。ここまでは全体に人の手がかなり入り、山というより公園風なかんじだったが、この先からは道も狭まり自然度がアップした。道は小さなアップダウンを繰り返しながらブッシュとツツジの群落とを交互にぬけて行く。途中ジュウイチの声を聞いた。やがて防火帯にでて、大きく盛り上がったところ(たぶん、藤谷ノ頭)で一本にする。ここまで無線中継所からちょうど1時間である。気がつくといつの間にかガスが晴れていた。防火帯沿いの道はその先で大きく高度を下げ、やがて斉木林道に合流した。そしてそこからなんだかんだ話しながらぷらぷらと林道を駐車場まで戻った。途中、電線で歌うオオルリを西尾さんが発見。皆でヨロコぶ。歌は電線音頭だった(ウソ)。ぐるっと一周、4時間余りのハイキングでした。
 駐車場に戻ったところで服部車は開かない。西尾さんの携帯をお借りしてJAFを呼び、到着までの約1時間、クルマの脇に銀マットを広げ、モチを焼いたりコーヒーを淹れたりの宴会タイムとなる。皆には先に風呂に行って一杯やっててもらっても良かったのだが、寛大にもつきあってくれた次第である。感謝! やがて頼もしいJAFのお兄さんが到着し、開けてもらって無事キーを回収し、一件落着。
 さて、風呂であるが、柳沢峠の塩山側、裂石の下にある『大菩薩の湯』に行ってみることにしたが、西尾さんは家が反対方向ということでここでお別れとなる。『大菩薩の湯』は駐車場もいっぱいでかなり混み合っており、女湯は入場制限状態だったので、やめて塩山駅北側のいつもの公衆浴場に行く。何年かぶりだったがまだ300円だった。こちらはガラ空きなうえ料金も半分で大正解。
 その後服部車は急遽『ワークマン塩山店』を物色することになり広瀬車と別れた。それからさらに『ワイングラス館』なるところをゆっくりと見物し、見事渋滞にはまりつつ八王子に戻った。
 お疲れさんでした。

ハンゼノ頭のツツジ的世界にて

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