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谷川・第三スラブ
高橋 俊介

山行日 2002年9月21日~22日
メンバー (L)小幡、高橋(俊)

 去年、初の本チャン「中央カンテ」の四畳半テラスでビバークした際、対面にちらちら見えるヘッドライトの明かりに小幡さんが、
「来年は屏風岩と3スラだぁ~」と意気込んではいたものの取り付いたらホールドが無い・・・。
 そうなのである。来ちゃったのである。本チャン2回目で3スラとは、高尾山の次はマッターホルンだぁ、というようなものである。天気は文句なしの快晴。南稜テラスを目指してテールリッジを登る。何組かの先行パーティーは中央稜に取り付き、南稜は1組しか取り付いていない。珍しいこともあるなぁと思い、3スラ目指して本谷を下降する。取り付きは、水流の左側に沿っているので簡単に見つかる。
〈下部ダイレクトルート〉
 1ピッチ目は、やさしいフェイスだった為ノーザイルで登る。ルート図によると2ピッチ目が核心と書いてあり、どっちがリードで行くかもめるが小幡氏が最初っから行きたくない!というので僕が先行で出発する。ピトン&ボルトの連打との事だったのだが、これが非常に悪い。腐ったハーケン多数、しかもそれでA1しないとどうにも越えられない。水流のそばの為、ハーケンが腐りやすいと思われる。だましだまし少しずつ登るが、一箇所ハーケンまで遠い個所有り。腐ったハーケンでA1しつつ気合でフィフィをボルトに通す。小ハングを越えるとビレイポイント。支点も濡れて腐ったボルト多数。バックアップを取れるだけとる。セカンドの小幡氏もやはり苦戦している。「張って張って」と連呼し結局ゴボウでくる。3ピッチ目はハング上に右上。やはり腐ったハーケンが目立ち、A0で越える。4ピッチ目、3級のスラブでY字ヶ原へ直上。全体的に支点はわかりやすいがあまりよくない。
〈第3スラブ〉
 ここまで2時間近くを要してしまったが、ここからは33級くらいのスラブなので高速道路じゃぁ~!!と意気込んで出発。3ピッチ目までくらいは快適に飛ばす。よし!このペースでドームまでいっちまいますか?!と話していたのだが、4ピッチ目から緊張の連続。支点が乏しくその支点のボルトに3ミリのシュリンゲを通してあるものでのA1という具合。しかもところどころ濡れている。これで落ちたら「3スラ大滑り台」となることがどうしても頭をよぎり一歩の勇気を必要とする個所が連続する。予想以上に時間を食い、リッジの這松帯に出たところでタイムアウト。もう少し上までいけるかと思っていたが這松に座りながらのビバークとなる。後続パーティーも我々より1ピッチ下でのビバークとなったようだ。小幡氏がわずかに持ってきたウイスキーをちろっと飲み早々に寝ることとする。こんな状況にもかかわらず、会話は「今度どこ行く?」「来年はチンネ行きたいねぇ」って・・・・
 翌日も緊張の連続。ドームまで草付帯が続くのだが、傾斜が急で支点が乏しく失敗は許されない。これが延々と続いている。ここはフラットソールより軽登山靴の方がいいようだ。草付き帯をバケツで登りきるとようやくドーム下に出る。
〈ドーム横須賀ルート〉
 ドームのほぼ真ん中を登るルートで取り付きは右の凹角にシュリンゲが多数あるのですぐわかる。4ピッチしかないが高度感満点でのクライミングである。今にも切れそうなシュリンゲでのA1でハングを越え左上のクラックへ。ここの支点はまあまあよい。4ピッチで草付きに出てようやく2日間付け続けたザイルを畳む。ここから15分で国境稜線に出られ、きょうはビールがたらふく飲める♪と意気揚々と草付きを登り始めると、5分もしないうちにまた壁があるではないか!そっか。ドームの頭を忘れていた・・・という事で再びザイル装着し、いい加減いやんなっちゃた気分で取り付き、もう厳しいとこリードしたくない!という小幡氏の命令でリードさせられる。くう。このリッジを越えると草付きを登ること15分でようやく国境稜線到着。思わず2人でおたけびをあげる。ついにこの高度差1000m以上の3スラ完登を果たしたのである。
〈下山〉
 ところが、ここからがある意味本当の核心であった。稜線にでたと同時に雨が降り出し、また最終的にどこに出るのかまで全く考えていなかった。すでに18:30を回っており、取りあえず肩の小屋まで行ってみようということで落ち着いたのだが、さて、どっちへいけばいいの?(笑)なんとなく匂いがしたので、右ルートを取るとこれが見事に大はずれ。幸い携帯が通じたので、服部氏・野口氏に確認してもらってようやく肩の小屋到着。ところがあれ?発電機?ショベルカー?改装中である。工事関係者が泊まっていたので頼み込んで一晩お世話になる。翌日、2日間とも14時間行動だったから、贅沢してロープウェイで下山し無事帰路についた。さぁ次はチンネだ。


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