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ガラン谷
別所 進三郎

山行日 2002年9月7日~8日
メンバー (L)佐藤(明)、箭内、鈴木(章)、別所、天城(7日)

 6日夜、高田馬場駅前通りに集合。あきら車にて、雨の関越を抜けて、草津の天狗山スキー場に、1時半着。レストハウスの廊下に銀マットを敷き、チャブ台を立てて、おでんを卓上コンロで煮始める。小宴会の開始である。
 夜行列車に乗っての、ステーションビバーク(SB)と違って、車でのSBは、持ち込み量と種が豊富になり、恩恵が大である。
 お酒と、話が進むにつれ、心は都会のサラリーマンから離れ、山屋のモードにスイッチして行った。
 7日、六合(クニ)村の白根開善学校先の林道ゲートが施錠されていなかったので、帰りまでにされないことを祈って、奥まで車を進める。立派な道標のある馬止メの先から歩き始める。7時45分発。
 舞茸獲得を期待しつつ、ガラン谷へ山道を下る。猟師とその愛犬を祭った、葱吉地蔵で小休止後、ちょっとで峨乱(ガラン)谷に出合った。
 いきなりの徒渉で始まった遡行は、イオウ臭が漂う、岩ゴロゴロの沢であった。ピーコック碑というガレ岩塔を見て湯ノ沢に入る。空模様が怪しげなので、鳩首協議となる。リーダーの決断で続行が決まる。(私も、あと1時間位で目的地に行けるので、果たせればと願っていた。)観世音ノ滝、上下段にはステンレスのクサリが下がっていたので、利用させて頂く。
 鯛ノ沢出合で右俣に入り5分も行くと、左ガレ10m上にポリバスを見つける。秘境の温泉である。11時15分着。よくぞ風呂桶を担ぎ上げてくれたものだと、先人に感謝しつつ、うす緑色、41℃の温泉に入る。緑葉繁る山中でのやわらかな湯は、とても心地よかった。章子さんが水着で入った後、雨が本降りになって来た。増水、鉄砲水、びしょ濡れの停滞が脳裏を横切る。
 濁流に急がされての沢下りとなり、水底の見えない、水速の増した流れの徒渉は、集団で互いのザックの肩ベルトを持って行った。しかし沢全体が小さいので水深は上がっても、腰まで届かず、流される可能性は少ないと思った。
 途中、ブナハリダケをスーパーのビニール袋いっぱい収穫し、無事ガラン沢下降を終えた。登山道に入ってからは、舞茸を発見し喜びの踊りを舞うべく、小ナラの根元を訪ね探し歩く。総出で求めたが、そう容易には当たらないことを実感する。今日の温泉入りは往復で8時間15分かかった。又帰りの林道ゲートは錠が掛かってなかったので事なきを得た。
 仕上げに尻焼温泉に立ち寄る。人気の温泉らしく、老若男女があっちの川床、こっちの東屋にと雨中の温泉を楽しんでいた。我々も雨と沢水で冷えた体を温めるべく、ビールを飲んだりしながら長湯をした。
 SB地に戻り、早々に宴を開始する。天城さん料理、ブナシメジのツナ和えに始まり、ブナシメジたっぷり水たき、ブナ入りうどんを楽しんだ。当レストハウスは、オートキャンプの人々がトイレに出入りしている場所でもある。中には、声をかけると銀マットに上がり込み、草津温泉の昔話をしてくれる人もいた。私は今日の運動とビール、ワイン、日本酒、あわもりのミックスで夢とSB地を彷徨い、シュラフの人となった。
 8日朝、ブナシメジ入りラーメンで英気を養い、今日の毒水沢行きに備える。明リーダーが天城さんをバスターミナルへ送った後出発。谷沢川の橋の袂に駐車し香草(カクサ)林道を行く。小一時間歩いて沢に下りる。ペーハー紙を出して酸度を観る。色が変わって酸性と判る。なめるとうけつけない酸っぱみである。
 沢は名前の印象とうって変わって、明るく、岩床の続く美渓である。奥には数段の滝も見えて、楽しくなってくる。滝を登り切った所で、黒い蛇が脱皮しているところに出会う。その皮を箭内さんが収集する。今度の朝の訓話に使うとのこと。
 さて、酸度数と思われる数字が7、8、と岩肌に画かれた場所に出る。周囲が低い岩壁になっていて、あちこちからお湯が流れ出ていて、9番の表示も見つける。香草温泉である。
 岩壁から上の斜面には樹木が少なく草原状になっているので、鬱蒼さが無く開放的である。皆、それぞれ窪地を選んで湯に浸かる。強酸性なので皮膚のあっちこっちが染みた。湯床を渡り入っている内にポツリと来た。今日も降られる覚悟だったが、案の定雨がきた。いそいで下り、約30分で出合に着く。
 この山行は沢が綺麗で短く、温泉に入るという面白い目標もあって、子供づれに良いと思った。滝のぼりと下降があるので、おたすけ紐一本持てば楽しめると思う。往復で約5時間。
 車のデポ地に戻る途中、常布ノ滝に立ち寄り、滝の下流の温泉に入る。雨水が多く交った為か、温度が低く、服を脱がず腰まで浸しただけで切り上げた。大岩に囲まれた湯船は見つけにくく、野趣に富んでいる。となりの溜まりには鹿の死骸が流水に打たれていた。
 今回の温泉山行のラストは草津温泉の地蔵の湯で飾った。熱い湯に芯まで暖まった。
 山屋だから行ける秘湯、ガラン温泉、香草温泉と、二日間で5ヶ所の温泉めぐり。良い企画だった今回の山行は、リーダーの事前調査があって充実したものになったと思います。
 協力してくれた、江村しろしさん、ありがとう。


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