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袖沢・御神楽沢
金子 隆雄

山行日 2002年9月14日~16日
メンバー (L)金子、紺野、越前屋、高橋(俊)、金澤、天内、高木(敦)、藤井

 今回のこの例会山行、当初は野口(芳)さんがリーダーで大白沢へ行く予定であったが、北又谷で骨折した肋骨の回復が思わしくなくて、私が代役を務めることとなった。ルートも、紺野さんの希望で御神楽沢へと変更した。御神楽沢へは2度行こうとしたが、いずれも悪天候のため失敗しているので、私も行きたかった沢である。
 13日夜に東川口駅に集合、天内さんが集合場所を間違い、出発が30分遅れる。今回も8人という大パーティーになり雨の中、車2台で出発する。東北道の西那須野ICで降りて、塩原温泉に入る前の道の駅にて寝る。ここは軒下に寝ることができるので天気が悪い時にはとても助かる。

9月14日 雨のち曇り
 翌朝小豆温泉に到着し、車を1台会津駒の登山口へ回しておく。8時過ぎに小雨の中、小豆温泉から黒檜ノ沢沿いの登山道を登り始める。道は沢を離れ山腹を捲くように登っていき、旧道との分岐に至る。ここまでで避難小屋までちょうど半分の距離だ。雨はいつの間にか止んでいる。分岐には前来た時にはなかった立派な案内板があった(実際には板ではなく金属の柱の上面に案内が彫り込んである)。
 更に急坂を一登りして傾斜が落ちてしばらく行くと懐かしい三岩避難小屋が見えてくる。小屋には二人の釣師がいて、彼らは明日ミチギノ沢を下降して釣をしてまたここへ戻ってくるそうだ。小屋の中に以前あったストーブは撤去されてなくなっていた。ここで沢装備に身を固め12時、小屋を後にする。
 窓明山へ向けて登山道を下降し小ピークを一つ越えた湿原のある場所からミチギノ沢に下降する。湿原の端を申し訳なく思いながら突っ切りヤブに突入する。5分もたたないうちにチョロチョロと水が流れ始め、流れを辿って下降して行くと本格的な沢となってくる。二俣までは滝もなくただただ下降を続けるだけだが、長くて飽きてしまう。二俣から下流はゴルジュになり、大きくはないが釜をもった滝がいくつか出てくる。元気の良いシュンスケ青年と元気が良い振りをしているエチゼンヤ元青年は泳ぎ下るが、残りのメンバーは右岸を捲いて行く。捲きはすべて右岸からで、踏み跡もあり要所にはフィックスロープもあるのでそれほど苦労はしないで済む。
 ゴルジュが終わりゴーロを少し行くと待望の御神楽沢に出合った。初めて御神楽沢に行こうとして避難小屋でくじけてしまってから早5年、なかなか機会がなくて行きそびれていた御神楽沢の岸辺にようやく立つことができた。
 袖沢林道が通れた頃は林道経由での入渓が一般的であったが、林道が通れない今はミチギノ沢を下降する人が多いようだ。所要時間はどちらも同じようなものなので、長い林道歩きを考えると沢の下降の方がいいような気がする。まして夏などはアブにたかられないだけでも天国と思えるかも知れない。袖沢林道が通れるようになったとしても今後はミチギノ沢下降が一般化していくのではないかと思える。
ミチギノ沢を泳ぎ下る二人  今日の予定は出合までなので幕場を探す。出合右岸の台地は1張りなら大丈夫だがテント2張りでは狭い。河原にも1張りのスペースがあったが天気が良くなる見込みがないので増水した場合を考えると泊る気にはなれない。他に場所がないので狭いのは我慢して右岸台地にテントを張る。
 焚き火の準備をしている間に私はちょっと釣りに出てみるが、既に薄暗くなってきており毛鉤も良く見えず連続ボウズ記録を更新しただけに終った。
 夕食は王様のカレーを食す。今日は皆疲れ切っているのか酒もあまり進まず、早めに寝る者多数、焚き火の周りに残っていた者も焚き火に向かってしきりにお辞儀をしている。
 寝て間もなく降り出した雨は朝までテントをたたいていた。

9月15日 雨のち曇り
 昨夜からの雨は朝になっても降り続いていた。皆目を覚ましているのに起きだそうとしないのは「停滞」の一言を待っているのだろうか。だがここで停滞したら御神楽沢の溯行は諦めるしかない、それはなんとしても回避したい。6時半ようやく皆が起きだす。
 雨はそれほど激しいものではなく、増水もしていないので予定通り御神楽沢に入ることにする。出合すぐの2m滝は左の岩を登り低く捲いて越える。沢幅いっぱいに水を落とす5m滝を右壁から越えるとしばらくゴーロとなる。2段15m滝を越えると、例のよく写真が載っている岩畳が現れる。確かに素晴らしい景観ではあるが、私はこのようなのがしばらく続いているものと思い込んでいたのだがほんの10mほどしかなく、ちょっとがっかりした。その先はしばらくナメとナメ滝が続き美しい。水の中に転がっている岩は結構滑るので、景色に見とれて歩いていると思わぬところで痛い目にあいそうで注意が必要だ。2段25m滝の下段は左岸の傾斜の緩いところを登り、上段は残置のシュリンゲに助けられて這い上がる。しばらく行くと周囲が開けてきて、間もなく10mのナメ滝が現れる。スリップに注意しながら慎重に左側を越える。
 大ナメ滝を越えたところで二人の釣師に出遭う。彼らはとんでもないつわ者たちで中門岳から御神楽沢に向けて地図上に一本の線を引き、その線に沿って忠実に尾根だろうが谷だろうが藪だろうが、一切構わず降りてきたそうだ。山屋にはない発想だけに恐れ入ってしまう。
これが例の岩畳だ  かなり疲れてきているメンバーもいるため、時刻はまだ早いが幕場を探しながら行くことにする。しかし、良い幕場が見つからないまま連瀑帯に突入してしまう。連続する滝を捲いたり直登したりして越えて行くと右壁より水を落とす直瀑が見えてくる。沢は右または左に曲がっているようだが近くまで行かないと判らない。手前の細長い淵を微妙なへつりで突破して滝下に行くと、沢は右に大きく曲がっている。どうやらこれがムジナクボ沢手前の10m直瀑のようだ。直登はできず正面のガレたルンゼから泥壁に移ってヤブに入り少し行くと河原に出る。
 捲き終った所に広くて良い幕場があったので今日の行動を終了する。ムジナクボ沢の50m程下流だ。ここは広くて良い場所だが流木が少なくて焚き火をやるには遠くまで薪集めに行かないとならないのが難点だ。
 今日はたっぷり時間があるので偵察がてら上流へ釣に出てみる。ムジナクボ沢を過ぎた辺りからボチボチ当りが出始めるが釣れるのはリリースサイズばかり、どうにか骨酒にできそうなのを一匹だけ確保して左岸から枝沢が入る手前で引き返す。とうとう今年の連続ボウズ記録は途切れてしまった。漁師シュンスケ君は不漁のようだった。
 昨日飲まなかったので今日はたっぷり酒があると安心していたらいつの間にか底をつきかけていた。骨酒用の酒がなくバーボンで骨酒を作ったが、味は・・・であった。
 この夜もまた雨に降られる。

9月16日 雨のち曇り
 今日も朝から雨模様、雲は低く垂れ込めガスも出ている。しかし、ここまで来れば先に進むしかなく、行くか止めるか迷うことがないだけ気分は楽だ。昨日よりちょっぴり早い時間に出発する。
 しばらくは滝もなくムジナクボ沢を過ぎ、左岸より枝沢を合わせるまでは河原歩きが続く。この先は滝の連続となる。最初の小滝は釜が深く、濡れたくないので右側から簡単に捲いて越える。電光形の滝はカンテ状を快適に登り、続く滝をいくつか越えると標高1750m地点で水量比2対1の二俣となる。その先の小滝は残置のシュリンゲを使ってへつる。左岸を簡単に捲くこともできる。
 ここまで来るともう源頭の様相で、この先小滝は出てくるが全て容易に登ることができる。やがて1対1の二俣となり、右沢は中門岳と会津駒の中間辺りにヤブこぎ少なく出るはずだ。しかし、我々は敢えて左沢へと入る。更に先で同水量の二俣となる。右へ行けば会津駒近辺にダイレクトに上がれそうな気がするが、我々はまたも敢えて左へと入る。やがて水が涸れヤブが被さるようになるが沢形はしばらく続いている。
 いよいよ沢が尽きるとハリブキ混じりの痛いヤブに突入する。正しい沢登りはやはり最後はヤブこぎしなきゃダメだよなどと言いながら登って行くと倒木にびっしりと生えるナラタケを見つけ、ありがたく頂戴する。会津駒から三岩岳に続く稜線に出ても、稜線上もやはりヤブで踏み跡すらない。稜線上を15分ほどヤブこぎすると目の前が開けて会津駒の山頂に飛び出す。
 初めて立った会津駒の山頂なのに、生憎今日はガスっていて展望はゼロ、何も見えない。風もあって寒いので靴を履き替えるとさっさと下山にかかる。木道からズルズル滑る泥道を約2時間で登山口に着く。駒の湯(入浴料500円)で汗を流し帰途につく。

会津駒はガスの中で展望ゼロ
〈コースタイム〉
9月14日 小豆温泉(8:10) → 三岩避難小屋(11:15~12:00) → ミチギノ沢二俣(15:05) → ミチギノ沢出合(16:25)
9月15日 出発(7:55) → ムジナクボ沢出合(13:50)
9月16日 出発(7:40) → 会津駒ヶ岳(11:05~11:25) → 登山口(13:40)

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